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◆ベール料理店

 ドメルの街は昔ながらの高い城壁で頑強に守られていたが

「変わっちゃたな、昔はゴシック調の荘厳な雰囲気でいかにも要塞都市って感じだったのに何の変哲もない街に」

 晴明はコンクリートで建造された街並みにがっかりとしていた。観光業に携わる家の子ならではの視点から街の観光資源の価値を無意識に図っていた。

 三人はJの案内でヘイ・オン・ワイのアジトにいた。

「晴明さま、こちらでも通信が不能のようです、機器の故障では無く通信障害が起こっているみたいなんです」

「よくある事なのですか、そんなに」

「こちらの技術者の見解では何者かによって、通信波を乗っ取られているんじゃないかって」

「まさか教団!?」

「たまたまこんな謎のメッセージが録音されていますが」

「聞かせてください」

 Jは手持ちのタブレットのような物を操作して音声を流した。


『リリ、だめだよ、そこ触っちゃ』

『リリ何にもしてなよてんてん』

 この後はノイズだけとなった。


 晴明は申し訳なさそうに

「ごめんなさい、どうやら僕の友達の仕業みたいです」

「原因がわかってよかったわ、報告しておくけどでも困ったもんですね」

「ねえバスはいつ出るの」

「一日二便の運航で今日のバスはもう出てしまいました。一日はここで過ごすしかありません」

「それなら晴明、街を散歩しようよ」

「いいよ僕も見て見たいし」

 二人は街を手をつなぎ、もちろんサマラからだが、繁華街をぶらつき始めた。

 街は人間族以外もいて、ハルトの街とは異なる雰囲気であった。ドラゴノイドの女兵士が街を巡回しているようだ。

「すごい!あの人、顔色、真っ青、あっちの人は狐さんみたい、色んな人がいるのね外の世界は」

 サマラはきょろきょろと行き行く人を見てそのたびに晴明に報告してくる。

「そうだよ。この世界にはいろんな人がいるんだ。僕も最初は驚いたけど何も変わらないと思うよ。見た目がその人のすべてじゃないよ。偏見はなるべくなくそうね」

「でも、わかんない、あの人たちとお友達になれるのか」

 閉鎖的なドラゴノイドの社会で過ごしたサマラ、人間からは龍族は自分たちを警護してくれる頼もしい存在でなくてはならない種族としてあがめられているのであった。

「きっとサマラならだれとでも友達になれるさ、僕はそう思うよ」

 彼女の純真で明るい性格を晴明も快く思っていた。

「おや、この匂いは」

 晴明はサマラの手を引きながらその香りのする方向へ進んでいった。

「どうしたの晴明」

「サマラ、お腹空いたでしょ、この匂い間違いない」

 一軒の店を嗅覚で探し当てた。

「なーんだ。ベール料理のお店じゃない。どうしてこのお店?」

「えっ、ベール料理店!、カレー屋さんだよ」

「そうよ。昔からカツカレーって言って伝統料理よ」

 そういえば父がこの異世界にもたらした料理なんて聞いたことがあった。

 それでも晴明はその店に入ることに決めていた。

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