◆駐在所
「ちょっと雨宿りしましょうか」
Jが言い、駅の待合室へ三人は避難した。
「メラクの橋が壊れてしまった今は次の機関車は来ないわ、馬車でも手配しましょうか、たどり着くのに半日はかかるかもしれないけど」
「ベールからの貨物船に乗せてもらうことはできないかしら、知っている機関手がいればお願いできるかも」
「ちょっと次の貨物の時間聞いてくるよ」
晴明は駅員を探して貨物の来る時間を聞いてみた。
「だめだよ夜まで次の貨物は来ないってさ、馬車で行くしかないけどこの雨は厄介だね。天気を占ってみるよ」
卦のウインドウを開く晴明、天気図を見ている。
「そんなのでお天気わかるの、また、いろいろできるのね」サマラは感心している。
「どうやらこのまま明日まで雨みたいでかなり降るみたいだ。貨物に乗るしかないかな」
「そうと決まればこんなところじゃなくてヘイ・オン・ワイの駐在員の家にでも行きましょう」
Jによると各街には秘密の駐在所があるそうなのである。
雨に濡れながら道をゆく三人、Jが路地裏にある料理店に駆けこんだ。晴明とサマラもそれに続いた。
「まだそんなにおなか減ってないんだけど」サマラが言っていると
「ただいま!」
Jが大きな声で店の奥に叫んだ。
「ジョセフィーヌ、お帰り、無事任務はこなせたかい」
老女がJを抱きしめてキスしている。
「ジョセフィーヌ!?」晴明が言うと
「私のおばあちゃん、サマラ姫と晴明さまよ」
「こんにちは、晴明です」
「サマラでーす」
「ジョセフィーヌ、任務はどうしたのお二人をドメルにお連れするんでしょ」
「それがちょっとトラブルがあって列車に乗り遅れちゃったのここで時間つぶしさせてもらえる」
「あらまあ、ごめんなさいね頼りない孫で」
「いや、Jは悪くないんです。僕がしくじったんです」
「かばわなくていいのよ。まだ新米エージェントだから、食べてばっかりでほんと」
確かによく食べているのは本当である。
「料理屋さんをなさっているんですね。どんな料理なんですか」
とやはり晴明も食いしん坊の部類である。
「そうね田舎料理よ。このあたりのジビエを煮込んだものだけよ」
「おばあちゃんの料理は最高よ。今晩はゆっくり召し上がってください」
「喜んでぜひ」
晴明は喜んでいた。
夜が来て出かけていたジョセフィーヌが戻ってきた。貨物列車の手配の為、駅に戻っていたのだったが
「貨物もメラク橋梁の修理で駆り出されて運行していないんです」
「困ったな、やっぱり馬車ですか」
「その手配も済ませてきたから、ただし雨が止まないとだめなんですけど」
「僕一人で歩いて浮きますのでサマラはここにお世話になっていて」
「いや、私も一緒に行く!」
晴明はすっかり困ってしまった。
「さあさあ、私の料理を食べて元気を出して」
とてつもなくいい匂いの皿が運ばれてきた。




