◆メラク峡谷橋梁
お弁当談議で楽しくすごし、選挙問題も片付いてぐっすり眠りに就く晴明とサマラ、列車の汽笛が悲鳴のように鳴り響いた。
なにごとかと慌てて起き上がった二人は列車が止まっていることに気が付いた。
「どうしてのかな、ちょっと調べてくるから部屋にいて」
「私もついていく」と言ってきかないサマラは晴明の後に続いた。先頭の機関車にたどり着くとドアが開き運転手と車掌が前方を眺めて話し合っていた。
「何かあったんですか、どうして停車したんです」
晴明は暗殺者の件もあって気になって尋ねたのだった。
「ほらあれを見な」
列車は渓谷に向かって走行していたのだが、目の前の鉄橋が壊されていたのだた。運転手が優秀だったのが幸いした。乗客が眠る中、前方を注意深く警戒して運転していてくれていたのだった。
「なんてことだ、気が付かなきゃ川底へまっしぐらだ」
「よく気が付きましたねありがとうございます」
「乗客の安全が一番の鉄道マンとして当然のこと、それより困ったドメルへ向かえない、引き返すしかないな」
先を急いでいる晴明も困った。
「ドメルまではあとどのくらいだったんですか」
「この橋梁を渡って20キロくらいでドゥーベ・ジャンクションだ。そこから馬車で六時間と言ったところか、それにしてもこのメラク渓谷を渡らなきゃ何もならんがな」
車掌は晴明とともに向こう200メートルはある向こう岸を見つめ途方にくれた。
「晴明ならどうする」
サマラは期待していた何かやってくれると、谷底を覗き込んでいる晴明は何か考え込むと、
「やってみるか」と言って
しきたへの
ころもまといし
わきてあがれ
土嚢
晴明は念動力も使い河に落ちている残骸と共に谷底に残っている橋脚に土くれが補完されてきて土柱を作り上げた。
「ふう」汗をびっしりかいている晴明み車掌は
「あんた一体何者なんだ。しかしレールが足りないぞこれじゃ列車は動けんぞ」
「ちょっとお借りしますね」
というと列車後方のレールを念動力で持ち上げ繋いでいった。
「とりあえずゆっくりと渡ってもらえますか」先頭車両に上った晴明は運転手に言った。
「だいじょうぶなのかい、落っこちたりしないだろうな」
「渡り切るまで僕がサポートしますから行ってください」
列車はのろのろと進んでいく、ぎしぎしと橋梁が音を立てている。
傍らに並んだサマラもドキドキとしながら見守っていた。
そして最後の車両が橋梁を通り抜けた。
「すてき!晴明、神様見たい!キャッ晴明、体が火のように熱いわ」
「だいじょうぶだよ。この力を使うとこうなるんだ」
機関車の屋根に大の字で倒れ込んでしまった。




