◆ドメル前夜
「ふー何とか間に合った」
胸をなでおろす晴明、サマラは目を回している。
「何がどうなってるの…ちびっちゃいそうになったわ」
駅で待っていたバットリと鳴釜があらわれた。
「まったく、戻って来られないから冷や冷やしたでやんす」
「ぴぽぴぽぴ」
「わかったよ。でもこの駅のお弁当も見なくっちゃ」
「もう、晴明、そんなこと言ってる暇はないわよ。いそいで」
「ぴーぴぽぴぽ」
「え、Jに言われてバットリと一緒に買ってくれたって、ありがとう!」
駅のパンフレットとともに晴明に弁当を手渡した。
コンパートメントに戻った二人は
「ありがとう、晴明」
「えっどうしてお礼を言うの」
「これで選挙がなくなって私は自由になれたからそのお礼」
スワン教皇が元気になれば今まで通りの体制となるからだ。ドアがノックされJが入ってきた。
「ハルアキ様、ご報告があります。ハルトの街で本部に連絡を取ったところ晴海さんの居場所が分かったようです。お父様たちもそこへ向かう準備中です」
トルクメニストにいる父たちの動向がわかった。
「それでどこにいるの」
「ミノトリアでガルト共和国の海上のツーロン島という潮流が渦巻く船では上陸できない孤島に向かう準備中です」
「父さんたちはどうやって上陸するつもりなの」
「飛行船を使うようです。宝蔵院さんが修理をしているところと報告を受けました」
「晴明、飛行船ってなあに」
「空を飛ぶ船だよ。楽しみだな僕も乗船してみたいな。ところでツーロン島ってどこにあるの」
Jは地図を広げて島の場所をペンでマークした。
「ドメルについたら早くミノトリアに行かないと置いてけぼりになっちゃうね。出発はいつなの」
「修理が順調に済めば三日後を予定しているみたいです」
「間に合うね。何事もなければ」
列車は一晩過ぎればドメルに朝早く到着する。ドメルからミノトリアまではその夜または翌朝にはたどり着けるはずとJはいった。
「なにからなにまでJさん、ありがとう、この部屋で晩御飯でも一緒にしませんか」
「いいんですか、一人じゃ味気がなかったんですぅ。あとで自分の買ったお弁当持って伺います」
「Jさんていろいろお手伝いしてくれてどうしてなの」
「ある情報組織がこの国にはあるんだよ、世界を裏から守ってくれているんだよ。そのエージェントの一人なんだ」
「ふーんそんな存在があるなんて今まで知らなかったわ」
「だから秘密組織だよ」
しばらく二人は窓の外を眺めて景色の子と話し合っていた。ドアがノックされたJが来たようだ。
「わお、そのお弁当!」晴明は驚いた、山ほどの数を持ってきたのだった。
「とりあえず全種類買っちゃいました」涼しい顔でJは言っていた。どうやら全部自分で食べるつもりだったようで、お茶お入れてあげると次から次へともぐもぐと食べていた。
「ハルアキ様、食べたいおかずがあれば一個はあげますよ、どうぞ」
「いや、遠慮しとくよ代わりに食レポしてもらえればいいから」
「あら、いいのじゃあレポートするから」
食の知識が深く詳しくいろいろと解説してくれて晴明は感心してしてしまった。
すべて食べ終わると空き箱をすべて持って席へ帰っていった。
「びっくりしたね。少しぽっちゃりしているけどあんなに食べるなんて」
「でも参考になったわ、次に食べたいものも決まったし」
そうこう言ってうちにベットの時間となり、暗闇を列車はドメルに向かい走っていった。




