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◆病の教皇

「フローラ、どうして地下室へ行くの神殿に向かわないの」

 教皇をお見舞いに行くはずがなのだが、晴明とサマラは地下へと階段を下っていた。

「心配なさらないで、ここよ」

 フローラが手のひらを扉に当てると光輝く壁面へと変化した。マナーコの城へと続く回廊と同じ構造のようだ。

「神殿の居住区へと続く回廊よ。通勤路みたいなものよ」

 中へ入るとすぐに出口となっていた。出口は広間に直結していた。絵画や彫刻様々な装飾品の飾られた部屋である。スミエル家からの来訪を察した教皇の従者が飛んできた。


「これはフローラ様と?」

 挨拶をして一緒にいるものの顔を見た。

「私は誰だかわかるわよね」サマラが言った。

「サマラ様ですか、スワン教皇もお喜びになられると思います。わざわざ市国までいらしていただいて、それでそちらさまは」

「晴明は私と一緒にとても遠い国からやっていらした最上級の治癒士よ。教皇を診察に来られたの内密に」

 もったいぶってサマラは晴明を紹介したが信じてもらえたであろうか。

 教皇の従者はしげしげと晴明を見つめて奥へと下がっていったが慌てて戻ってきた。

「こ、これをご覧ください」指さす先の肖像画がどうも晴明の姿を描いたもののようだ。

「かつてのユートガルト連邦国の建国の祖、ドーマハルト様の幼少の肖像ですが、どう見てもあなた様ではないですか何かご縁のお方でしょうか」

「晴明!そっくりじゃないどういうこと」

「よくわかんないけど・・・よく間違えられるんだ」とりあえずぼやかして答えた。

「とんでもないこれだけ似ていらっしゃるということは何らかのご縁があるはずです、しかも高名な治癒士ということぜひ教皇を診察ください。

 晴明たちは寝室まで案内された。

「!」晴明は何かを感じ取った。


「スワン教皇、お体のお具合はいかがですか」

「おお、フローラ、どうもわしも先は長くなさそうじゃ、そなたの父君は残念なことであった。本来はわしを継ぐものであったのに」

「そんなお気弱なことではいけませんわ、お元気になってもらわないとそこで高名な治癒士をお連れしましたのでお加減をご診察くださいませ」

 晴明は会釈をして前へ進み出た。

「おぬし!ドーマハルト国王の生まれ変わりか・・・ありがたや」


「それはともかく晴明と申します。では失礼します教皇」

 というと鑑定による診断もせずにいきなり教皇の胸に手を当て

「オンキリキリバザラウンバッタ」と真言を唱えるとメダルが晴明の手のひらへと収まった。

「これで大丈夫だと思います」

 教皇はベッドから身を起こした。

「なんだこれは嘘のように体が軽くなったぞ」

「こいつが元凶でした」

 妖怪メダルを見せた。

「ハルアキ様、それは一体」

「これは妖怪メダル、魔石より強力な呪術アイテムです。犯人はわかっています。こんなことをするのはメリムとザグレットです」

 晴明はスワン教皇に忠言した。

「今ここ、ハルト市国及びガルト共和国に危機が迫っています。ゼブル教団による侵略です」

「ゼブル教団、歴史書に残るあの教団ではないか五百年前にツチグマ様とオオガミ将軍が絶滅させたと聞いているが」

「やつらはこの世界を破壊に導く魔王、ベルゼブブの復活を狙う集団です。僕たちの世界をまず狙っていたようですが、壊滅をしようとした僕たちの仲間から逃げこの世界にやってきているんです。しかもこのハルトの神殿の地下深くのダンジョンに攻め入ろうとしているんです」

 スワン教皇はまだ弱る体で立ち上がり従者のガ―ラッドに

「聖騎士団のガートベルト団長を呼べ」

「スワン様、まだお体が充分ではございません、お休みを」

「ええい、早くしろそしてメリムとザグレットをとらえるのだ」

 というとまた崩れるようにベッドに横たえた。


 部屋を出た晴明は従者に尋ねた。

「ガ―ラッドさん、メリムとザグレットは最近ここへ来たんじゃないんですか」

「いや、十数年前から商人として多額の献金をハルト神殿に寄付をいただいておりました。ここ最近に僧籍を得て神殿の運営を任されていました。スワン教皇の具合が悪くなった時よりほか神官に働きかけて選挙に名乗り出たのですが、まさかこんなことが」

 その時教会の鐘が鳴った。

「?今の鐘は」

「六時を知らせる鐘でありましょう」

「大変だサマラ、列車の出発が近づいている」

「あと十五分で出発よ」

「サマラごめん」

 というとお姫様抱っこをして窓から飛び出した。

「フローラまたね!」

 加速(アクセル)を加えながらあちこちの壁に飛び移り駅へと向かった。

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