◆竜人姫
ガッチャーン!!大きなガラスの割れる音が鳴り響き何かがワームの上に落ちてきた。衝撃で土煙が辺りを覆った。
朧げに見える姿は人のようであったその手に握った剣が深々と突き刺さり
やくもたつ やえがきころも
のしてつぶれろ
重力
ワームは超重力で床にのめり込みペシャンコになった。あたりの覆いが次第に薄れると、聞き覚えのある声が
「ごめん、遅くなっちゃった」
「晴明!」
数日前
無重力空間のようなゲートの狭間、勢いよく飛び出したはいいが晴明は晴海に手を伸ばすが思うようにそちらへ進むことができない。
晴海は追ってくる晴明に気が付いて大きな声をあげた。
「だめ!晴明、来ちゃダメ!!」叫んだ晴海は鳴釜を呼び出し、錫杖から外した遊環と取説妖怪バットリを釜に詰め込み
「行きなさい鳴釜!晴明を助けてちょうだい」
頷く鳴釜はロケットのように晴明目がけて飛んでいった。鳴釜につかまる晴明
「晴海!!きっと助けに行くから待って」
イレギュラーな異世界転送の衝撃で晴明の意識が遠のいていき遥か彼方へ消えていった。
「こ、ここはどこだろう」
目を覚ます晴明を心配そうに鳴釜がのぞき込んでいた。滝の音が聞こえる川辺、
「晴明のあにさん目を覚ましたでやんすか」
バサバサとバットリが羽ばたいて晴明の目の前に飛んできた。
「やあ、バットリ、晴海は?」
「連れ去られたままでやんす。早く助けにいくでげす」
「ぴぽぴぽぴー」
「なんだ鳴釜君、アストロメク・ロイドみたいだな。で言っている言葉はわかるよ。君も晴海が心配なんだね」
「ぴぽぴー」
「ちょっと喉が渇いたんで川の水でも飲むよ」
滝から流れる川面に近づいていく晴明はハッとして隠れた。そこに水浴びをする女の人がいたのだった。
「あっやばい」
慌てて引き返す晴明だが気を付かれてしまった。
「誰、そこで覗いているのは!」
「ごめんなさい、水を飲もうと近づいただけなんです」
後ろを向いて謝る晴明
服を着たその女は晴明に近づいていった。
「見慣れぬ人間ね。どこから来たのかしら」
緑の肌に真っ赤な髪の女性が晴明の素性を尋ねた。
「ここがどこかわからないです。いったいどこに僕は飛ばされてしまったのです」
「ここか?変なことを言うのね、ベールよ。温泉と美食の街」
晴明の顔が明るくなるセリフだった。
「僕の名前はハルアキ、トルクメニストから来ました。あなたは」
「ドラゴノイドのサマラ」
その時、晴明は彼女にヨシュアと同じ尻尾がある事に気づいて
「竜人族!?なの」




