◆突入
一夜明け、いよいよツーロン島まですぐ近くの海上にいた。
「なんだか気分がすぐれないな」
「ミッチー、嫌な思い出があるんだろあの島には奥で休んでいていいぞ。俺たちだけで何とかなるからな」
白鳥と晴人は操舵室で行く先を見つめていた。
「いや、過去と向き合って前に進まないとな」
「さきがけは二人で乗り込んでやるか」
「おーいあれを見ろよ。黒い飛行船が出かけていくぞ」
軽足が指を指した。
「なんだよ逃げ出してしまったのか、張り合いの無いやつらだな」
「城の中を調べるだけで終わりそうだな。上陸メンバーを組みなおすか、俺とミッチー、永晴と百花、オオガミとヤーシャの六人で乗り込むぞ用意して最下部に集合だ」
そして晴人はモニターに映るワーロックの船に乗っているカグヤとヨシュアに
「カグヤ頼んだぞ、海を沈めてくれよ」
ツーロン島に近づくにつれ激流が行く手を遮っている。
「ヨシュア、奏でてくれ」
「行くよ、カグヤ!」
ドラムスティックを持ったヨシュアは海賊船にあるものをストリートパーカッションのようにたたきリズムを刻み始めた。
舞うカグヤ
いさなとり あめのうみにたちおこる
ゆくてをわれに
鎮静
見る間に荒れた海が静まっていく波一つなく
そして飛行船の船尾から六人が飛び降りていった。
スカイダイビングよろしく滑空していく六人、海賊船からは小船を出して島へと上陸していく海賊たちとカグヤとヨシュア、空の六人は小さなパラシュートを開き入口に直接降下していった。
上陸組が島に乗り込むとどこからかメダルゴブリンたちが現れ襲い掛かってきた。
なんと先ほどの演奏で興奮しているのかヨシュアが先駆けを務めゴブリンたちをなぎ倒していった。
「さあ、入るぞ!」
晴人は勢いよく城の入り口を開け放った。ステンドグラスがはめ込まれた広間、静寂の中、リリム(晴海)がゴブリン兵を引き連れて現れた。
「晴海!!父さんと母さんだ!こっちにこい」
永清が叫んだ。
それが聞こえないかのように六人に攻撃を始めた。放たれる爆裂呪符、ゴブリンの攻撃が始まった。
「ちくしょう!どうにもならないな。ヤーシャ、突っ込んで二人がかりで晴海を止めるぞ」
オオガミが叫び二人は素早く敵をすり抜けて晴海に迫ろうとした。その時、晴海は錫杖を打ち鳴らした。
オオガミとヤーシャが空中に制止した。
「いかん、結界だ。オオガミとヤーシャを助けるぞ」
晴人と白鳥もゴブリンを切り裂きながら近づいていった。またしても錫杖を打ち込んだ。
残り四人も結界に取り込まれてしまった。晴海がうしろ向き下がっていくと代わりにワームモンスターが現れた。かつて平安の時代、晴明が倒したワームよりは小さいが無数の鋭い歯を大きな口から覗かせ六人に向かってきた。




