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●ランクアップ

 朝になった。旅支度を整え部屋を出ると宿の下働きの女性がほかの部屋の掃除から廊下へ出た。獣人であった。タマモを見るなり飛びよって

「タマモちゃんなの!」

「ヘルマのおばちゃん!」

 知り合いのようだ。ヘルマはタマモを抱きしめ泣いている。

「村のみんなが殺されたと聞いていたけど生きていたのね」

 タマモを撫でて安堵の表情を浮かべている。

「あなた様たちがタマモを助けてくれたのですか?ありがとうございます。この子の母の姉のヘルマと申します。この宿に住み込みで洗い場やベットメイクなどの仕事しています」

 親族がいたのか。タマモとはこれでここでお別れとなるのか。少し寂しいが、この子のためだ。

「タマモを引き取って育ててくれるか」

「もちろん、私も主人と子供たちをなくしています。タマモはたった一人の親族です」

 タマモは困惑の表情を浮かべ俺の服の裾をぎゅっとつかんでいる。

「よかったなタマモ、ヘルマおばちゃんと一緒に暮らすんだぞ」

 しゃがんで目線を合わせ頭をなでる。ヘルマはタマモを抱き上げ

「ここで一緒にに暮らしましょタマモ、連れてきてくれた皆さんにお別れを言うのよ」

「・・・・」ヘルマの胸に顔をうずめ無言になった。


 一階に降りるとすでにハルナが待っていた。弓矢を背中に背負っているアーチャーなんだ。あらためてみると俺より背が高く、すらりととした美人だ。

「またせたな、馬を調達したら出発だ」

「あれ、あのかわいいおチビちゃんは?」

「ああ、親戚が見つかって別れることになった」

「そうなのですか。よかったですね」

 よかったのかどうなのか少し複雑な心境だ。ヘルマが階段の上から手をつないだタマモと一緒に見つめている。軽く手を上げこたえ宿を出た。

 馬は首尾よくいい毛並みの丈夫そうなものが見つかり、トラクターも思た以上の値で売れた。街の市場で朝飯を済ませて、ギルドへ赴きクエストを確認した。

 ギルド内がざわめいた。オオガミたちが猛烈な勢いで魔獣狩りをしたことが噂になっている。一日の討伐数ランキングを塗り替えた。ギルドの係員が読んでいる。

「何か問題でも?」

「いえ、クラディウス様、ライセンスをこちらへお戻しください」

 なんだろう?何か罰則でもしたかと係員に渡す。

「はい、新しいライセンスです」Bランクの銀のライセンスを手渡された。

「これも新記録です。たった一日でCからBですよ」パーティーの恩恵だが他人のふんどしでとやらで簡単にランクアップしてしまった。

「Bランクになると依頼が高いものになるがそれ以外何か特典はあるのか?」

「Aランクですと準貴族の待遇になりますが、貴族であるクラディウス様には関係ありませんね」つまり身分証としての信用度が上がるということですか。つまらない。各種割引が効くとかそういったものを期待したんだが。

 交換係の男は「すごいな、気前がいいだけじゃないんだな。応援するぜ」この街にはSランクは一人、Aランクの冒険者は五人、Bランクも十数名しかいない。Bともなれば街の人気者だ。


 依頼を見ていたアルジェが指さした。

「ハルト様、これはいかがでしょう」

 次に宿へと考えていたドゥーベ村からの依頼だ。村の森にマンティコアがあらわれ狩りに行くのも困難で緊急の依頼だ。マンティコアは人の肉を好み獅子の体に猿の顏、蛇のしっぽのキマイラだ。鵺のようなものだ。Aランクの依頼だ。報奨金も金貨二枚、馬代が稼げる。

「この依頼を受けたいんだが、報告はまたここに戻る必要があるのか?」

「いえ、Aランク以上は別の街のギルドで報告可能です。お受けされますか」

「ああ、頼む」オオガミのライセンスに依頼が記録された。俺のランクでは受注できないからだ。その代わりパティ―として登録されているからギルド経験値には加味される。Bランクのライセンスを眺めた。

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