◆大音響
「こんな大きなものが空を飛ぶなんて」
ヨシュアは新ドーマハルト号に感心して目を丸くしていた。
「客船部の全長は200メートル、70名まで乗船可能です。確かに千年以上前に作られていたとは僕も感心しました」
宝蔵院も修理をしながら驚いていた。
「これはあの文明のテクノロジーだな」
カグヤがぽつりとつぶやいていた。水無瀬夫妻もまじまじと船内を見ていた。
「晴海さんのお父さんとお母さん、晴明君と同じく同級生の宝蔵院天鼓です。水無瀬教授の論文大変参考になりました」
「そうか私の論文を読んでくれたのか。ありがとう」
「彼はM.I.Tを卒業した大実業家で私たちのブレインだ。ところで頼んでいたあれは実装できたか」
「晴人さん、お任せください」
ケーブルを運んできた。
「タマモ、ほらよ」
「これはあれなの」
タマモはにっこり笑うとギターにセットして打ち鳴らした。
大音響のサウンドが飛行船から流れた。
「すごい音だ。なんですこれは」
「ミュージックよ、ヨシュア。楽しくなるでしょ」
「うるさいだけだけどな」
「まあ聞いてみなさい、モモいくよ」
百花のギターもセットされ、二人はアイコンタクトを取ると、演奏を始め唄いだした。
真っ先にリリが踊りだした。
「タマモママ、サイコー!」
「景気がいいね。面舵一杯!行くぜ!!」
軽足は舵をツーロン島へ向けた。
海賊船の甲板にいたオオガミの耳がひくりと動いた。
「この音楽は」
オオガミが彼方を見つめた。
「ヤーシャ、向こうから来てくれたぞ。連絡だ」
発煙筒を使い飛行船に合図を送った。するとこちらに向かいやって来た。
乗船した晴人は
「驚いたぞオオガミ、ヤーシャまでどこでこんな船を」
「まあ後で説明する。船長のワーロックだ」
飛行船はワーロックの船と並行に移動していた。
「しかしオオガミ、来てくれてありがたいよ。これから晴海ちゃんを奪還しに向かっているところだ。ワーロック船長も協力ありがとう」
晴人は船長と握手していた。
「永晴さん、あんたもいたとは」
「おっ永晴、この船長と知り合いなのか」
「この世界に来た時にギルドで何回かパティ―を組んでいたんだ。義侠心に熱い男だよ」
「あいつらの本拠地がツーロン島とは確かに難航不落の要塞だよ。この船じゃ近づけもしないぞ」
「それは私がなんとかしよう」
カグヤが言った。おそらくは何らかの術式を持ち合わせているのであろう。
「飛行船で曳航していくので、乗員はあの飛行船に乗ってくれるか、みんなで打ち合わせしながら飯にしよう」
宝蔵院の計算でツーロン島には明後日の到着となった。




