◆新ドーマハルト号
「晴人君、うちのやつは戻ってこないのか」
「ナガクでうちのかみさんと仲良くバンドの打ち合わせしているぞ」
「バンド!?そんなこと聞いてないぞ。そもそも楽器に興味があるなんて知らないぞ」
「モモ、いや百花か、俺も付き合いも長いんだが彼女とうちのかみさんで昔モモタマというバンドを組んで戦いを援護してくれていたんだ」
「演奏で戦い?どういうことなんだ」
ナガクから戻った晴人に永晴は質問攻めだ。自分の妻の過去を知る男が気になっているのだ。
「そう言えばお前さんには昨晩酔いつぶれて話をしていなかったな」
晴人は自分の転生した過去を永晴に話し始めた。
「なんてこったい、晴人君もあいつらとの戦いに巻き込まれていたんだね」
「百花さんは今の姿じゃなくて本当はタマモと同じく妖狐族なんだ。その声は他人を操る技を持っているので歌声に合わせて戦意を鼓舞するメロディーを奏でてもらったんだ」
自分の知らない妻のことを語る晴人に少し焼きもちを焼いていたが自分と共に生きた百花のことを考え直していた。
「あんな明るい顔を見るのは久しぶりだ、晴海と一緒に居る時はいつも楽しそうだった。ある日異世界に戻って決着をつけたいといいだしたとき、一緒についていくことしかできなかった」
「よかったじゃないか。嫁さんの楽しむ顔を見るのはなによりだ。それより俺も陽子、タマモとわかるまでのあいつは明るく楽しそうにしていたが、過去に縛られ悩んでいたことに気が付けなかった俺はバカだったよ。同じく亭主としてまだまだ修行しなくちゃだめだな」
「晴人君、百花のバンド、私も応援するよ。これでも学生時代はドラムを担当していたんだ」
「いいね、足りなかったポジションだ。おっと舎利弗さんに連絡しなくっちゃ」
晴人は舎利弗に連絡を取り、収監中の幹部たちを調べることを頼んだ。旅館にいる俺にも手を貸すようにとも付け加え
ナガクに全員集結して一週間が過ぎようとしていた。
「御堂に貴具、だいぶましになってきたな。ところでお前たちの術は明らかに俺が編み出してきたものに酷似しているな。まんざら導魔法師の流れをくむと言っても問題ないが何故だろう」
「導魔法師殿、京の都を土竜からお救いしたときの話を詳しくお話しいただけないでしょうか」
御堂が申し出ると
「京の疫病を収めた青鬼神薬とはどのようなものでしょう」
貴具も聞いてきた。
「歴史の中に埋もれた話だぞ、よくそんなことを知っているな」
「ええ代々伝わっております」
確かに彼らの先祖に誰かが導魔法師のことを伝えたのであろう。
「まあいい、考えるとまた妙なことに巻き込まれるかもしれん、もういい、お前たちは正当な導魔法師の弟子たちということにしておく」
「ハルト~!!見て見て、新しいギターだよ」
タマモが真っ赤なストラスキャスターを振り回してやって来た。
「タマモ、待ってよ」
百花も背中にギターを担ぎ追ってきた。
「モモタマ再結成だな。頼むからあのメイクは今回はやめておいてくれよ」
「ねえ、アンプがないのよ。資料館にもなかったの」
「それは大丈夫だよ。俺が手配してあるのでしばらく待っていてくれればいい」
ゴランが晴人の所に駆けてきた。
「ハルト様、この通信機が何やら音を立てておりますが」
携帯に着信があったようだ。受け取った晴人が対応した。
「やっぱりそうか。わかった、舎利弗さんこちらでも警戒しておく」
「晴人君、何かあったのか」
永清が聞くと
「捕らえた教団幹部は全員逃げ出していたよ。メダルで作られた偽物だった。向こうにいる俺が暴いた」
「せっかく捕まえたのにがっかりんね」
「仕方ないさ、普通の警備じゃこうなるもんだ。通信ラインが繋がったということは・・・」
晴人は空を見上げた。
「あっ、ほら百花!ドーマハルト号だよ」
タマモが指さす先に飛行船がこちらに向かって飛んできている。やがてゴランの屋敷の庭に着陸したのであった。
「なんとか修復できましたよ」
宝蔵院とリリが飛行船から降りてきた。
「リリ!」
ゴランがリリに駆け寄っていった。
「じいじ!」
リリも叫んだ。
「なんてことだリリがゴランの孫だって、ということは両親はエージェントだったのか」
「ハルト、リリちゃんよかったわね。肉親が見つかって」
「あゝ、両親もおそらく生きている。きっと奴らに囚われている」
「僕も同意見です。リリのパパとママを助け出しに行きましょう」
「あゝ、それと永晴、百花、晴海を救い出すぞ。みんな船に乗れ」




