◎カチコミ
「なんだ、異世界へ行くのか」
「あっオオガミさん、戻ってらっしゃったんですか」
「貴具の謎が解けたんだ、舎利弗に報告しようと思ってここへ来たんだが」
「本当ですか!すごいです!教えてください」
旅支度の手を止める宝蔵院とヤーシャ
「18年前の事件を調べたんだ、貴具家ことを真相がわかった」
「教団によって貴具さんのお父さんやお兄さんが殺されて一族に伝わる宝を奪われたというやつですね」
「それが大きな間違いだったんだ。貴具の一族は異世界へと渡る能力を持っていたんだ。俺は忘れていた昔、銀羽教と戦っていた時にキグという名の陰陽師がいたんだ。そいつの使う術に異世界送りという技があった」
「貴具一族は教団側にいたと言ことですか」
「いや、我々を助けてくれていた。味方だよその昔から、何か痕跡があるはずなんだ貴具の屋敷にはと思ったら、やくざの事務所になっちまっているんだ。いつもなら単身乗り込んで解決できるんだがお月様がそれを許さない。ヤーシャ、ついてきてくれないか」
「ヤーシャ行っておいでよ。僕は一人で大丈夫だよ」
「わかった天よ。ネロを預けて行こう」
ヘルハウンドのヤーシャのペットだ。影から出てきたヘルハウンドはリリにすり寄っていく。
「すっかりリリに懐いてしまっているな。リリにもビーストテイマーの素質があるようだ」
ヘルハウンドはリリの影に入って行ってしまった。
「オオガミさん行ってらっしゃい、僕とリリはこれから先に向こうに行くので何かあったらこれで連絡ください」
オオガミにスマートフォンを投げよこしたが
「悪いなこういうのは嫌いなんだ。ヤーシャが使ってくれ」
受け取るや否やヤーシャに投げよこしてしまった。
もと貴具の屋敷、いろは組の事務所の前にロクヨンを止めたオオガミ
「行くぜ、ヤーシャ」
入口でたむろするしったぱどもを投げ飛ばしていくオオガミとヤーシャ
「どこの組のもんだ」
ぞろぞろと中からやくざたちが出てきた。
「黙って中に通しな。組長はどこだよ」
騒動に気が付き頬に傷がありいかにもの親分が奥から姿を現した。
「どこのどいつが殴りこんできてるんや!ここを天下のいろは組と知ってるんか」
息巻いていたがオオガミの姿を見たとたん顔色を変えた。
「!?これはオオガミの兄貴、何か不手際でもありましたんか。謝りまっさかい許しておくれやす」
「なんだ、市の組だったのか。それならそうと看板に書いとけよ。いらない手間を食っちまった」
「オオガミ知り合いなのか」
「ああ、こいつがチンピラのころ面倒をよく見てやったんだ。市よ頼みがあってここに来たんだが話を聞いてくれるか」
「もちです、なんなりと、それにしても四十年はたっているというのに豪胆でお若い様子」
へこへことした態度で応対した。
「ちょっとこの屋敷を調べたいんだ。もちろん警察とは関係ないぞ」
「こら、喜六に清八、案内して差し上げろ」市は壊された屋敷の掃除を始めた。オオガミが怖いのか関わりたくないようでなんとも箔の無い親分であった。
割を食ったの組合員はヤーシャとオオガミにぼろぼろにされた二人だった。
「大変すみまへんでした。親分のお知り合いだったとは、何をご案内すれば」
「ここは十八年前、貴具というやつの屋敷だったはずだ。何か隠し部屋のようなものはなかったか」
「親分~貴具の旦那のことを聞いているみたいなんでやす」
どたどたと呼ばれた市がやってきた。
「へえ、貴具はんは奥の中庭にあるお稲荷さんにお参りに来るからと交換条件で格安でこの屋敷を売っていただいて祠には人を寄せ付けるなと」
やくざに警護させるとは何んともあきれた公安の貴具だった。
いなりを祭る祠にはオオガミでもわかる結界が施されていた。
「たまにお参りにいらっしゃるんですが気が付くといつのまにか帰ってられるんですわ。いつも不思議どしたが」
オオガミは稲荷像の奥の祠を力づくで開け放ち入っていった。ヤーシャも中に入ると研究所にあるゲートと同じものがそこにはあった。
「ここから異世界へ行っていたんだな。まったく秘密主義の男だな」
「ヤーシャ、舎利弗に連絡しておいてくれ二人で乗り込むぞ」とふり向くと市に
「ここから先は絶対に踏み入るなとんでもないことになるぞ」
「もちろん仰せに従いやす」
連絡をすませ祠を閉めるとオオガミとヤーシャはゲートを潜って行った。
オオガミとヤーシャは真っ暗な地下室のような場所へ転移していた。オオガミは鼻を嗅ぐしぐさをする。
「特に危険なことはなさそうだな。行くぞ」
「ちょっと待て」
光
部屋に明かりが灯った。
「魔法も使えるのか」
「天に基本魔法はレクチャーを受けている」
扉を開けると上に続く階段があった。警戒しながら上がると礼拝堂のような場所に出た。
「ここは教団の施設なのか」ヤーシャが問うと
「いや、俺も知っている場所だ。ユートガルト魔法学校の礼拝堂だ。ツキノワを連れて来た時にここで入学式があった」
「人の気配がないな。もう使われていないようだ。ほこりだらけだ」
「そのようだな。しかしここが魔法学校とするとユートガルト側に出たということか。晴人たちと合流するには数日かかるな。いったん研究所に戻って出直したほうがいいか」
「いやオオガミ、我々はここからこの世界を調査しながら進んだほうがいいのでは」
「そうだなそれも妙案だ。ミノトリアルまでこのまま向かうか、通信機は生きているか」
「だめだな圏外のようだ」
「それは結構なことだ。紐付きの散歩じゃ楽しめない。何か武器を探していくか」
オオガミの案内で武器庫を物色して剣を探し当てた。
「足あとを見る限り二人がこのゲートを利用しているようだな。貴具には兄がいたな」
「しかしこれらは一年以上は昔のものだな。オオガミ、どこに向かって行くつもりなんだこの足跡を追うのか」
「いや合流のために隧道を通りたいところだが警備があるだろう。ちょっと寄り道にはなるがユートに向かう」
「ユート?どんなところだ」
「隧道ができるまで貿易港として栄えた街だ。船でエンドワースまで向かおう」
オオガミとヤーシャの二人旅が始まった。




