◆ドーマハルト号とベールの街
「そう言えば飛行船はもう飛んでいないのかこの世界は」
こちらへ来てから空を飛ぶ飛行船など目にしていなかった。
「懐かしいわね、モモッチとのオープニングセレモニー歌いまくったよね」
百花の顔が明るくなった。
「ええあの時が人生で一番だったかも。飛行船のテクノロジーも亡くなって五百年だ、管理していたヘイ・オン・ワイなら何か知っているかもしれないが」
「それならつてがある、当たってみよう。晴明がいればピコーナで何とかなるのにあいつは今どこにいるんだ。そのやつらのアジトとはどこにあるんだ」
「昔、監獄として使われていた島だ。絶海の孤島の中にある」
「ツーロン島・・・あそこか・・・」
白鳥がつぶやいた。
「白鳥君どうしたの知っているのツーロン島を」
「彼にはミシェル・スワンの記憶があるんだ」
「ええ!スワン卿のそういえば初めてあったときにどこかで会ったような気がしていたわ。あなたも転生者なの」
「いや僕は単なるミシェルの生まれ変わりだ。晴人に会いたいという思いがかなったんだろうな。それよりツーロン島は激しい海流に囲まれて二つの月が新月になるときだけ船で渡れる脱獄不能の監獄島だ」
「ユートからベールに向かう航海のちょうど中間地点くらいにあったな。ユートの街から行くことはできないのかな」
「閣下、ユートに街は今はない。シーモフサルトの地のように廃墟だけだ捨てられた街になっている」
ハルトの第二の故郷であるユートの現状を聞いたがこれと言った感慨もないようであった。
「ツーロン島よりベールは今どうなっているんだ」
白鳥はそれこそ故郷であるベールのことが気になり始めた。
「今も温泉と海に幸の美味しい美しい街だが」
「だがって!どうなっているんだ」
いつになく興奮した様子の白鳥、割って入る晴人
「ミッチーいきり立つんじゃない、それで」
「月の統合後、山岳部の地下深く住んでいた龍族の街へとなっている」
「百花さん!本当の話ですか」
今度はヨシュアが興奮して前に躍り出た。
「ただそれは五百年も前の話だ。永晴とここへ戻ってからまだ訪れていないが噂では変わっていないようだだった」
「お会いしたことはあるんですか西の龍族と」
「あゝ、長はエヴァの最初の娘だ」
「僕のお姉さんということですか早く会ってみたいです」
ヨシュアは鼻を膨らませて想像をしていた。
晴人たちは蕎麦を食べてゴランの所へ戻ることとなった。
「元気なヨシュア君、永晴を担いでついて来い」
ゴランの屋敷にたどり着いた晴人は飛行船のことを聞いた。
「あゝ飛ぶことのできる飛行船はあやつらに奪われ真っ黒に塗り替えられているが、未整備の機体が残っているはずだ。しかし整備できるわしの息子、ルーシーの兄じゃな。ラリックが行方不明なんだ」
「整備は優秀なエンジニアが一人仲間にいるから大丈夫だがここにあるのか」
「いやマナーコから東、かつてのシーモフサルトにございます。国王閣下が大流星で破壊した城の地下が整備庫となっております」
「そうかわかった。借りるぞ」
「どうぞお使いください。お願いがあるのですが息子夫婦の行方もお調べいただければ、かわいい孫も行方知れずで、お願いします」
晴人は研究所にいる宝蔵院に連絡を取り飛行船の整備を頼んだ。
「ヤーシャ!、晴明君のお父さんから出動要請だ。助けに行くよ」
「わーい、テンテン、戻れるの」
「あゝ、リリもついておいで、空を飛ぶんだよ」
リリがはしゃいでいる横でヤーシャは旅の荷造りを始めた。




