◆仲間への不安
晴海は真っ黒な飛行船で絶海の孤島へと運ばれていた。
そして古城の前へと着陸を果たした。深い堀に囲まれた城の入り口から橋が降りてきた。
「こんなところへ連れてきてどうするの早く久太郎を開放してよ」
炭化冷凍された久太郎が火車に引きずられて城へと運ばれていく
「そのあたりに並べておけ」
油すましが火車に命令する場所にはほかにも炭化した人々が並べられていた。
城の広間の椅子に晴海は座らされ、その前に油すまし、鉄鼠が机をはさみ座っていた。
そこへ火車が一人の妖怪を連れて現れてきた。
「さて、お嬢さん素直に我々に協力するか。強制的に働いてもらうかどちらを選ぶかな」
「そんなのどちらも嫌よ。久太郎を返しなさい!!」
「仕方ないな。百々目鬼やれ」
油すましの命令に百々目鬼の腕にある多くの目が晴海を見つめた。
「やだ!なにするの」
晴海は顔をそらし目をそらそうとしていたが百々目鬼に釘付けとなっていく。次第に晴海から表情が消えていった。
「さあ、おまえはわしの命令に逆らえなくなる。リリムと名付けてやろう。さあこっちへ来てひざまずけ」
晴海は立ち上がり油すましの方へと歩いていき、ひざまずいた。
「よしよし、リリム、顔を上げ鉄鼠とともに行くがよ」
顔をあげた晴海の目は緋色に輝いていた。
ゼペット・ゴランの屋敷へとたどり着いた。純和風の平屋の豪邸であった。
「これをご覧ください異世界からのお客様、ご先祖がドーマハルト国王のために開発した秘密兵器の数々を」
そこにはピストルになるライターやナイフが飛び出る靴などがQの肖像と共に並べられていた。
「この発明品をクエンティン様のペティ奥様が商品化して財を成したことが一族の秘密家業の財源へとなりました」
「ペティだってQはミス・ペティと結婚したのか」
「よくご存じですね。我が家の家系にお詳しいのですか」
「なに言ってんのよ。ハルト国王なのよ、私の旦那は」
「転生されたのですか・・・まさか」
「まあ、そんなにかしこまらないでくれ俺は俺だ。それよりその情報網で俺に手を貸してくれ」
「もとよりそのつもりです。この国に危機が迫っておりますがゆえ」
「ゴラン、どこまで掴んでいるんだあいつらのことを」
「晴人、ちょっと待ってくれ、我々は席を外す、御堂、貴具外へ出よう」
「俺たちも聞きたいんだぞ」
「カグヤがそう言うならお前たちは外で待っていろ」
「ちょうどよかったです。じつはあの貴具とかいう男、我々の調査対象でして」
「どういうことだ、貴具が何をやらかしたんだ」
「去年の秋ごろからこちらの世界で何かを探っている人族がいるということでわが機関で調べているのです」
「去年の秋だって、俺たちより先にここへ来ていたというのか」
「ええ、二人連れで行動していました」
「ここに・・・わかったこちらでも調べてもらうことにしよう。この話はもう少し内密に頼む」




