◆ドワーフの職人
「なんだかヨシュア、うきうきしているみたいだな。やっと冒険に楽しさを感じてきたようだな」
「あなた、違うわよ。西の龍族よ。会うのが楽しみなのよ」
馬車の中で雑談をする晴人たち
「ヨシュア、期待するといいわ。ハウルの話で西の龍族の正体がわかったわ」
「カグヤさん、どういうことですか」
「内緒よ。楽しみにしてなさい」
「あら、カグヤちゃんもったいぶっているわね。言ってあげなさいよ。女の子だって」
「ヨシュアよかったな。旅の楽しみができたな。クエストにも気合が入るだろう」
冷やかす晴人は笑っていた。もじもじとするヨシュア
「恋愛に関する相談なら僕に任せればいいよ。ヨシュア君」
「からかわないでくれ白鳥、そんな気持ちなんてない」
とさかを整えるヨシュアであった。
馬車を降りた一行はナガク鉱山のギルドに立ち寄り詳しい情報を聞くことにした。
「あれ?誰もいないな。おーい!」
声を上げ呼び鈴を鳴らした。奥からのそのそとドワーフの男が現れた。
「なんだ。冒険者か、ここの担当のドジルだ」
晴人はギルドカードを提示して鉱山の様子を聞いた。見た目とは異なり愛想のいいドワーフは
「何組かの冒険者はオーガと聞いて容易いと思っていたが、みんな逃げかえってきてんだ。おまえさん達は大丈夫かな。そこのリザードマンは頼もしそうだけど」
「リザードマンではない!龍族のヨシュアだ」
ご機嫌斜めなヨシュア、トカゲ風情呼ばわりされるのが腹立たしいようだ。
「すまない、龍族か、ハルトの街にいるそうだがあんたがそうなのか。ちょっとその槍を見せてくれないか」
受付のカウンターから身を乗り出してヨシュアの槍を受け取るドワーフ、しげしげと眺めて
「これは業物だな、いい仕事をしている。俺はこの裏で鍛冶屋と武器屋をしているんだがこれほどの槍はなかなかお目にかかれない」
「そうかそんなにいいものなのか。われら一族の鍛冶職人が鍛え上げたものなのだが」
「ほう、一度その職人に会いたいものだな」
「ドジルさんは武器屋さんなのか、実は私は武器を持ってないんだ。一つ見繕ってもらえないか」
白鳥が願い出た。
「おっとお客さんか、いいぜこっちへ来な」
カウンターのドアを開けて裏へと案内していく。
工房にはいろいろな武器や防具が並んでいた。
「さて、何がお望みだ」
白鳥はぐるっと見渡して、一本の槍を掴み取った。
「おお、なかなかの目利きだな。そこの龍族のものに比べれば見劣りするかもしれないが俺が作った中では一番の出来だ」
狭い店内を器用に槍を振り回す白鳥
「いいバランスだ。これをいただくよ。晴人、支払っておいてくれ」
「宿代と一緒につけとくよ。さてこれで、いい情報も付けてくれるんだろうな」
「かなわないな、じゃあとっておきの情報だ。どうやらオーグリス、女王が率いているんだ。そいつがとてつもなく強いって話だ」
「そいつを倒せば統率が崩れるってことか」




