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◎二人の行方

「本当の話か!宝蔵院君」

 県警に帰る途中に電話を受けた舎利弗(とどろき)が声を荒げて聞き返した。

「久遠さんのスマートウオッチから緊急信号が発信されたので眼鏡のレコーダを解析すると襲撃された映像が残っていました」

「相手は教団か」

「ええ、鉄鼠(てっそ)と油すましです」

「油すまし?新手の妖怪か、ふうむ。二人は無事なんだろうな」

「久遠さんの生体情報(バイタル)が消えてしまいました。久遠さんが持っていたすべての機器もダウンしています」

「なんだって!!まさか死んだということなのか」

「いえ、それは確定できてません。画像は切れてしまいましたが油すましに何らかの術をかけられたようです。僕は久遠さんは無事だと思います」

「ありがとう少し安心はしたが晴海さんは無事なのか」

「わかりません・・・団長とヤーシャさんが現場に向かっています」

「私も臨場(りんじょう)する。位置情報を送っておいてくれ、それに至急、八雲氏に連絡だ」

「私に手伝えることはあるのか。宝蔵院」

「カグヤさんは待機しておいてください」


 研究所から寺へと向かう街道から外れた田んぼの中に久遠の車はあった。

「現場についた、天、映像を送る指示してくれ」

 軽足から連絡が入った。

「周辺を確認して敵の侵入経路の痕跡を探してください」

「だとよ。ヤーシャ探してみてくれ」

 軽足は久遠の車を丹念に調べ上げていた。

「天よ。ここに新しい(わだち)がある」

 ヤーシャは映像を送ってきた。宝蔵院は解析を始めた。

「間違いありません、それは敵の痕跡です・・・照合できるのは火車の轍です」

「火車だって、そいつはもう捕まえたんじゃないのかい」

 車を調べながら軽足が聞いた。

「また新しくメダルで作り上げたのでしょう。それより油すましが気になります。今まで現れていませんでしたから」

「天、久遠くんの車にこんなものが取り付けられてたぞ。GPSじゃないか」

 宝蔵院に画像を送った。

「いつの間にそんなものを取り付けられたのでしょう。僕たちが研究所を空けたときに誰かが忍び込んだのでしょうか。あるいはそれ以前から」

「おお、舎利弗の旦那、せっかく来てもらったが何も手がかりはなかったぞ」

 臨場した舎利弗に軽足は残念な報告しか話せなかった。

「わしも調べてみる」

 久遠と晴海のことが心配で居ても立っても居られない舎利弗だった。

 そんな舎利弗に晴人から電話がかかってきた。

「舎利弗本部長、晴海と久遠くんがさらわれたそうだな。心配するな俺たちが探し出してやる」

「ありがとう八雲さん、しかし二人は大丈夫なのだろうか」

「それは心配いらない。奴らにとって大切な人質だからな。しかも彼女の両親にとっても睨みの利く」

 しかし、晴人の考えの上をいく目的のあることに今は知る由もなかった。

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