◆エイジェントQ
逃げるヨシュアの手を引っ張り、建物の影に引き寄せたカグヤ
「声を出さないで」
人差し指を口の前に置くカグヤ、その見つめる先には貴具とフードをかぶった男がいた。
貴具としばらくなにやら話し込み何かを渡して去っていった。得意げにその数枚のメダルを放り投げ掴みポケットへ突込み何食わぬ顔で去っていった。
「あれは教団の妖怪メダルですよね」
「このことは誰にも言わずに黙っておいた方がいい、ヨシュアわかりましたね」
「ど、どうしてですか。あやつは敵と通じているのかもしれませんよ」
「何か考えがあってのことかもしれない。くれぐれも内密に」
「久太郎、のこのこついて行って少しは警戒しなさいよ」
女店員に導かれ本棚の間を進む久遠に晴海は注意を促していた。
本棚の本を何冊か出したり入れたりする女店員、すると本棚が開き奥への通路が現れた。
「何この店、こんな秘密基地みたいな部屋があるなんて」
「どうぞお入りください」
ドアを開き久遠に入室するように促した。
久遠が中に入った瞬間、何者かが襲い掛かってきたが宝蔵院製の時計のベゼルを右に回しておいたおかげで逆に何者かを投げ飛ばしてしまった。
「すごいなこのスーツ、とっさに体が動いて・・・えっええぇー!!どうしてここへ、僕がやったんじゃありませんよ。すみません!!」
投げ飛ばされた男が起き上がってきたが何とオオガミがそこにいた。
「久遠、なかなかやるじゃないか。いい心がけだ」
「どうしてオオガミ隊長がここにいるんですか」
「ここは千年以上続く秘密諜報機関なんだ。まさか今も続いているとは思ってもみなかったが」
「そうです。まさかあの伝説のオオガミさまがいらっしゃるとは驚きましたわ。私はルーシー、ミノトリアル支店の諜報部員です。Lと呼んでください」
久遠が振りむくと女店員は自己紹介をした。
「久太郎、でもすごいわね。どうしてここに何か秘密があるとわかったの」
「いやなんとなく虫の知らせというか勘が働いただけだよ」
「すばらしいですわ。そのインスピレーションが諜報部員には必要なんですよ。私と一緒にここで働きませんか。空席になっているコードネームQを差し上げますわよ」
「いや、お断りします公務員なんで副業は禁止なんです」
「なに気取ってるのよ。スパイよ。Qなんて呼ばれたらかっこいいじゃない」
晴明ではないが妙な妄想をする晴海であった。
「俺は末席に加わればこちらとのパイプ役になれるので便利だと思うがな」
「ギルドカードをこちらに渡してもらえる」
晴海は久遠の胸ポケットから勝手に取り出してLに渡したのであった。
「晴海様・・・・」
Lはそのカードに何か細工を加えて久遠に返した。
「これでオーケー、行く先々のヘイ・オン・ワイに伝わるからそのギルドカードを使ってね」
半ば強引に久遠はヘイ・オン・ワインのエージェントとなってしまった。




