◆久遠と晴海
「久太郎、本当に大丈夫、異世界なんかにやってきて」
「オオガミさんにもさんざん言われちゃったけど、晴海様の手伝いしないといけないんで」
「あんまり無理しないでね。私がカバーするから後ろの方にいたらいいからね」
晴海は本気で心配していた。特務課のなかで普通の人間は久遠ただ一人である。舎利弗本部長はオリンピッククラスの元アスリート、久遠はなぜか特務課に配属されただけ警察組織にいるということでこんな辺境まで連れてこられたからである。
「たしかに足手まといかもしれないけど、なぜかやる気があふれてくるんだよ。情報収集をすることが僕の使命じゃないかとそう思えるんだ。天鼓君みたいにガジェットを作り出せればいいんだけど」
「ふっふ、なんかいい顔してるね久太郎」
「さあ、この店から聞き込みを始めよう」
店のドアを開いた。
「久太郎、この店は何の店なの」
「天鼓君がくれたこの眼鏡、異世界語の翻訳機がついているんだ。この店の看板を見てちょっと興味がわいただけなんだけど、本屋さんだよ」
「その眼鏡、便利そうじゃん、ちょっと私にも使わせて」
晴海は久遠がかけている眼鏡を取り上げてかけてみた。
「うわ、すごい!!異世界語が日本語に翻訳されて見えるわ」
久遠は晴海から眼鏡を取り戻して女店員に話しかけた。エルフのような耳で少しリリに似ていた。
「魔法の入門書みたいなものはあるかな」
「いらっしゃい、ヘイ・オン・ワイ書店へ、入門書か・・・そんな本はないわよ」
「いや向学のためにちょっと読んでみたいと思って簡単に魔法力をつける方法なんて本があれば別だけど」
「あなた何も知らないのね。魔道書を読めば簡単に魔法使えるわよ」
「本当ですか!!本を読むだけで魔法が使えるんですか。買います買います!」
「うちにはないわ。その本はダンジョンのドロップアイテムでしか手に入らないの、なかなか店にも売りに来る人がいなくて」
「ダンジョンってどこにあるんですか」
晴海は店員に聞いた。
「ハルトの街のお城跡が地下に続くダンジョンになっているのよ。あなたたち人族みたいだから入ることできるかも、入手したらうちにぜひ売りに来てね」
ハルトの街には不思議なダンジョンがあることが分かった。
「それよりあなた、色白でひょろとしていてかわいいわね。この後どこかにいかない。店の奥でもいいけど」
「お断りいたします!!!、久太郎いくわよ!」
「いや、ちょっと待って、この店の奥を見せてもらえませんか」
久遠はなぜか興味を女店主ではなく店の奥に持ち出した。




