◎桜花咲
桜満開の小道を歩み寺へと向かう。
「もっと早く気がついていれば花見弁当として売り出せたのにな」
「あなたより晴ちゃんのほうが経営者として向いているわね、楽しみだわ」
「母さん気が早いよ。それに旅館を継ぐかどうかはわからないよ」
「そのとおりだ、自分の人生だからな。好きなことをすればいいんだぞ晴明。しかし俺たち家族はどうやら好きなことができない運命だけどな。何で世界を救わなくちゃならないんだ」
晴人はぼやいていた。
「世界を救う?どういうことだ晴人」
「いやミッチーなんでもない、ただの冗談だ」
「晴人、もしかしてお前にも前世の記憶があるのか。その世界を救う話、私も関わった気がするんだ」
敵としてハルトと戦ったものであろう。
「さすが小説家だな。想像力がたくましいよ」
話をはぐらかしてさらに歩いていった。
満腹寺にも大きな山桜が咲いていた。塀の向こうに見える花に
「あの木の下でお花見しながらお弁当食べたら美味しいだろうね、母さん」
「花より団子ね、いやお酒かしら元さんにおつまみ作ってもらえばよかったわね」
「こんにちは、晴海!お邪魔するよ」
寺の本堂には舎利弗と久遠そして、オオガミに宝蔵院、その横にリリがちょこんと座っていた。
「まあ、リリちゃんも来たのね」
タマモが抱き上げて頬を摺り寄せていた。
「やっぱり女の子が欲しいわ、晴人」
「おいおい場所をわきまえろ恥ずかしいだろ、オオガミも来ていたのか」
「これは始めまして、県警の舎利弗です。今日はよろしく願います」
「この前は面をつけての面談で失礼しました。八雲晴人です。どんなお話になるのでしょう」
「これは部下の久遠です。捜査の際はお世話にあんりました。久遠君準備を頼む」
「では準備をしますのでお待ちください」
久遠は本堂を出て桜の咲く庭へと向かっていった。
「どうするんだろお花見かな父さん」
「そんなわけないだろう会議だぞ」
「いや、堅苦しいのも何なんで花見で一杯という趣向を凝らしてみたのだ」
「いい考えだ。舎利弗さん気に入った」
足を崩して座りなおす晴人
「天天、お花見ってなあに」
「リリ、花を見ながらお食事することだよ」
「ふーん、楽しそう」
「本部長!用意できました」
声のするほうへ移動すると、久遠と晴海、晴山和尚まで手伝い宴席の支度が出来上がっていた。
「和尚までお手伝いいただき恐縮です」
「いやいや、わしもご相伴に預かりたいからの」
「見事な桜だな」
オオガミがそういった。
「どうしたんだオオガミ、言うようになったじゃないか」
「この桜はのう、この寺の開祖様が植えた木なんじゃよ」
「そうだ!ご先祖さまにも楽しんでもらいましょう。塗り壁君」
晴海は塗り壁を呼び出し収納されている開祖の像を取り出して桜の下に飾った。
「さあさあ、座った座った。始めようじゃないか」
車座にすわり舎利弗が乾杯の音頭を取った。
「捜査零課のフルメンバーではないが、八雲氏をお招きして新生零課の発足式としてこの場をお借りして乾杯!」
それぞれに乾杯が始まった。リリは珍しがりみんなに乾杯をして回っていた。
「舎利弗さん、どうして白鳥まで加えたんだ」
「実は零課の捜査に以前から協力をしていただいていたんだ」
「ミッチーそんなことをしていたのか」
「まあ捜査情報は秘密だからな。それより晴人はなぜ」
晴人は意を決して白鳥に打ち明け始めた。




