◎外泊してます
「帰ろうといったがせっかく旅館も休みだし少し羽を伸ばそうか」
「デートの続きね」
「母さん、僕を忘れてない。家族のお出かけだよ」
研究所を出た晴人ファミリーはぶらぶらと歩いていた。
「バス停はどこだ。不便なところだなこの研究所は」
「父さん、ナイトを出そうか」
「ナイト?何だそれは」
「まあ見てて、ノウマク サンマンダ ボダナン バク!ダッシュフォー、ナイトの化身」
取り出したオーディンの馬にメダルを投入した。真っ赤な車がエンジンをふかし
「オヨビイタダキアリガトウゴザイマス」
「おお、いいじゃないか、ナイトだなんて心くすぐらせるなよ」
「天鼓君の車改造しちゃったのいいわね赤にしたのね。かわいいわ」
「ちょっと目立ちすぎるな。ナイト、色は変えられないのか」
「オノゾミトアレバ」
「いい子だ、元の白に戻してくれ」
ナイトの体の色が見る間に変化してオリジナルの車と同じになった。
「かわいかったのに」
タマモは不服そうであったが
「母さん、仕事だ。ホテルを予約してくれ、そうだな海の見える部屋がいいな」
「外泊するのね。うれしいわ、サービスするほうからされるほうへ、いいお休みね」
スマホでホテルの予約を取るタマモ、晴人は晴明に
「映画でも見るか、あれを」
「あれだね。楽しみしてたんだ」
「父さんもあれのリメイクが楽しみだ。その後は中華でも食べよう」
「海鮮の中華がいいわ」
「何だ聞いてたのか、さっそく町へ向かうか」
一家はナイトへ乗り込んだ。
「トテモ、ハシリヤスイミチデスネ」
舗装れた道路をはじめて走るナイトは喜んでいた。
「自動運転はいいから俺に運転を代われ、さっきは赤信号だったぞ」
「アカシンゴウ?」
交通規則はインストールされていないようだった。しかし晴人の運転をしばらく見て
「シンゴウノテイシ、ういんかーノツカイカタ、ガクシュウシマシタ。ツギハオマカセアレ」
おそらく晴人は任さないであろうが
海へ突き出たホテルの駐車場に入る前にナイトをメダルに戻した。
チェックインを済ませると
「さあ映画館に行くか」
隣接する商業施設へと向かっていった。
「晴海ちゃん、御堂と貴具も連絡を取ったよ。こっちへ向かっている」
「団長さん、ありがとう、あの二人苦手なんだよね。でも晴明たち家族は呼ばなくていいかな」
「水無瀬さん、そろそろ本当のことを言って舎利弗本部長に協力を頼んだほうがいいんじゃないかな」
「そうしましょう。みんなにあんまり秘密は作りたくないからね」
晴海は晴明に電話をかけたがつながらなかった。
「電源切ってるわ。メールを入れておこう」
晴明家族は映画鑑賞中であった。




