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◆春休みの最後

 優曇華(うどんげ)の実こそ奪われてしまったが、討伐まではならなかったがワイバーンの排除に成功した晴明たちはミノトリアルのギルドに報告に向かった。

「もう、クエストこなしてしまったんですか」

 受付のフローラが驚いていた。

「死体とかないんですけどいいのでしょうか、こんな報告で」

「ええ、こちらで調査しますので数日後には確認が取れて報酬をお支払いできます」

「また、ここに来ないとダメなですか」

「大丈夫です。どの町のギルドでも受け取れますから」

 日帰りのつもりのクエストだったが思わぬ出来事に晴海を心配した晴明は。

「フローラさん、ちょっと教えてほしいのですが料理店で美味しいすき焼き出してくれるところを知りませんか」

「すき焼き?」

「料理名が違うのかな。お肉と葱なんかの野菜を醤油と砂糖で煮る鍋なんですけど」

「ああ、ハルト鍋ね。ここからすぐ近くの老舗のお店があるわよ」

 また父の名前が歴史になっている。かつてミノと呼ばれたころこの町で食べたときに知れ渡ったのであろう。

 美味しいものを食べると元気になると晴明はそうだが晴海もそうだと勝手に思い、教えてもらったお店に入りハルト鍋を注文した。

「若い冒険者さんたちだね。ミノトリアルは始めてかな、いい店に入ったね。うちのハルト鍋は伝統的な作り方でどこよりも美味しいんだよ」

 女性店員さんはそういうと牛脂を鍋に擦り付け焼き始めた。いい匂いがあっという間に広がる。お腹がなった。

「後は自分たちでやりますので任せてください。そっちの鍋はお願いします」

 そっちとはカグヤたちが囲むテーブルのほうであった。

「あら、そこまで言うならどうぞ、わからなくなったら聞いてくださいね」

 晴明は卵を割り器にときめた。すき焼を知らぬヨシュアやカグヤたちはそれを真似だした。

 卵を溶く音に店員は

「あら、大丈夫そうね。よく知っているのね」

「ええ、家でよくやってますから、そのときは父さんがすべて仕切るんですけど」

 肉を焼き、砂糖をまぶして醤油を流し込むとじゅっという音とともにいい匂いがした。

 葱に、焼き豆腐、糸こんにゃくに椎茸などなど晴明の家で行う鍋と同じ具材がそろっていた。

「お姉さん、ご飯もお願いします」

 父ならばここは冷酒や赤ワインを頼むのだが未成年者がほとんどのパーティだが、ヤーシャはワインを頼んでいた。

 リリもあまりの美味しさに宝蔵院にうれしそうに話をする。

「テンテン、この料理大好き、テンテンは」

「僕も日本に帰ると必ず一度は作って食べますよ。リリには今度僕が作ってあげるよ。ささがきのごぼうを入れても美味しいよ」

「あっ、それ僕も好きだよ。研究所でかえったらみんなで鍋を囲もうか」

「そうですね、そろそろ春休みもあと三日、明日には一度戻りましょう」

「晴明、ありがとうお肉美味しいわ。舎利弗(とどろき)本部長に言って最高のお肉で囲みましょう」

 晴海も少し元気を取り戻してきたようだ。

「お肉追加お願いしまーす」

 たらふくすき焼きを食べた一行は温泉へと向かっていった。

「この温泉は父さんが掘り当てたんだよ。ごめん、晴海、父さんの話ばかりしちゃって」

「いいのよ。生きて元気にしてることがわかったんだから」

 ゆっくりお風呂に入りミノトリアルで一泊した晴明たちは朝一番でオワリトリアに戻っていった。

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