◆晴人のピンチ
翌朝、雲一つない空の下、鳥すきで歓待を受けた村を後にした。
オオガミの機嫌が悪そうだった。
「タマモ、いい加減にしろよ。ツキノワもいるんだから少しは控えろよ。うるさかったぞ!晴人も晴人だ」
「オオガミ何かあったの?美味しいご飯と気持ちいお風呂の後は爆睡してたんだけど」
「ごめんなさいね。オオガミ、ついはりきりすぎちゃった」
すっきりした顔でタマモが謝っていたが晴人は
「こっちへ来て運動したので若返った感じだよ。まだまだ俺も若いってなって」
「まったく、恥じらいもなくあきれるよ。さあさあ、お二人さん夜の体操の後はこれからマラソンだ。行こう」
晴人たちはオワリトリアに向かって走り出した。
「この森だね。例のワイバーンがいるのは、何か目的があるのかな。一度追いやられてもこの森に執着しているのは」
「半年もの間待つということはかなりのダメージを負っている可能性もありますし、それだけの期間そのままにしておくということはよほど重要なものがあるのではと推測できますね」
「つまり天鼓君、何かを探しているということかな」
「そう結論付けれます。先にその探し物を見つけて保護しましょう」
「天鼓君、何を探していると思うの」
「そのワイバーンが私の知っているものなら例のアーティファクトを探しているはずだ」
カグヤの発言に晴明は
「心当たりがあるの」
「私が目覚めて千五百年ということは優曇華の実がそろそろなる頃だわ」
「優曇華ですか、蓬萊の玉の枝とも言われている植物、かぐや姫が探したお宝ですね。実在するとは非常に興味深い」
「ちょっと待ってそれなら卦で占うよ」
と晴明はいうと八卦のウインドウを開き調べ始めた。
いくつものウィンドウを手を振り操りながら息詰まる程の集中力で眺めていた。
「ふー、ここから北東、四キロほどに聖なるエリアを見つけたよ」
「なかなかの卦だな。晴明おそらくそこだろう。先に見つけるのだ」
太陽が高く空に昇っていた。
「よし昼前に着いたな。飯にしようそれからギルドだ」
オワリトリアに到着した晴人たちだった。
「逆の方がよくないか晴人、先にギルドへ行って情報を得てからの方が効率的だろ」
「すまん、食い気が先走ってしまった。その通りだ」
冒険者ギルドへ入ると受付嬢に
「ウィーネさんだったか。晴明のチームはどうしているか知っているか」
「あら、少し老けた感じがするけどこの前お食事に誘っていただいた」
「なに!どういうこと!晴人!」
「タマモ、勘違いだよ。そんな誘いしたことないよ。信じてくれよ、ウィーネさんもなんとか言ってくれ頼むよ」
晴人はあたふたとウィーネ、タマモの顔を交互に見て懇願していた。
「奥様、私の勘違いだったかもしれませんわ、喧嘩はやめてくださいね」
「あなたが隙を見せるからエルフなんかに付け込まれるのよ!」
言い合いをしている二人を後ろの方へ追いやってオオガミが
「それで晴明はどうしているんだ」
かわりに要件をこなしていった。
まだタマモの怒られている晴人の所へ行くと
「まあタマモ、お前もよく知っているだろエルフの習性をそろそろ勘弁してやれよ。それより晴ちゃんだろ」
「今どこにいるの晴ちゃんは」
晴明のこととなるとそっちが優先だ。
「昨日からワイバーン討伐のクエストにミノトリアルへ行っているみたいだ」
「すぐ追いかけましょう」
「タマモ、ここで待った方がいい入れ違いになるかもしれないから」
「そうだ、シャチホコ亭という宿に泊まっているそうだから俺たちもそこに宿を取ろう」
「わかったわ」
「じゃそこで飯でも食うとするか」




