◆晴明からの贈り物
マナーコに一泊した晴人たちはツチグマの通夜と葬儀を終え、ツキノワを加えて四人でオワリトリアを目指し走っていた。
そして一時間後、最初の休憩を取っていた。
「晴明のお父さん、普通の人間にしてはなかなか根性あるね」
ツキノワは晴人の走りっぷりを見て褒めていた。
「年期が入っているからなこれでも結構昔は鳴らしてたんだぞ。お前さんが生まれる前から」
すでに晴人は昔ほどではないが体力がアスリート並みに向上していた。それに伴い肉体はシェイプアップされつつあった。コマーシャルでも見ているかのよう別人に変貌しようとしていた。
「たった一日でここまで鍛え上げれるなんて晴人、素敵よ今のあなた」
すりすりと体を寄せタマモが抱きついていた。
晴人はこのタマモの行動にも慣れ始め気にならなくなっていた。精神面も平安時代の晴人に近づいていた。
「どうするのおじさんたちオワリトリアにこのペースで進むのなら、夜も走らなくっちゃたどり着けないよ」
「そうだな。春休みは後四日で終わり新学期だ。晴明たちに早く合流したいのも山々だが何とかなるだろう。近くの村に泊まる事にするか」
「野宿で十分だろう、贅沢だな」
「いいじゃないオオガミ、ツキノワちゃんが持ってるお金もあるし、何か美味しいもの食べてベットで眠ればいいじゃない」
「いいだろうオオガミ、これは俺たち夫婦の久しぶりの旅行なんだよ。タマモを楽しませてやってくれ」
「わかったわかった、好きにしてくれ」
やれやれと言った顔でオオガミはあいかわらずタマモに甘い仲のいい夫婦を見ていた。
晴人たちは晴明がゴーレムを倒し村人たちの不安を取り除いた村へとやってきた。
街道沿いの宿場町になっているのだろうが人族の一団は珍しいのだろう。すぐに村長と思しき男が晴人たちのもとにやってきた。
「そうですか、晴明が、そんなことを」
なにやら村長と話し込んでいた。
「あなた、晴ちゃんがどうしたの」
「いや、ここの村近くでゴーレムの団体がうろうろしていて、その退治を晴明がしたらしいんだ。まったく、なんでも首を突っ込んで」
「それがあの子のいいとこよ。困っている人をほっとけないのよ。それで」
「俺たちが両親だといったら、ご馳走してくれるんだって、ご相伴に預かろうぜ」
「やったー晴ちゃんありがとう」
その夜振舞われたのは味噌仕立ての地鶏のすき焼きであった。
「うまいな、牛肉もいいけどこの地鶏いい味している」
「本当、このお葱も甘くて美味しいわ。鶏肉って言うのがヘルシーでいいわよね」
「ご飯のお変わり頂戴」
「よく食うなツキノワ」
「おじさんも結構食べてるじゃないかよ」
晴人とタマモはミノトリアル産の地酒をコップでぐびぐびとやっている。
「よく運動して代謝もあがっているみたいだよタマモ、これでダイエット生活卒業だよな」
「いいわよ。この胸肉を薄く切ってさっとくぐらせて食べるのは、筋肉のためにいいわよ。どんどん食べて」
箸で晴人の口へ運ぶタマモであった。タマモも結構酔っ払っているようだ。
鍋の〆はうどんが投入された。あの味噌煮込みうどんに使われているしっかりとした麺だった。
「あ~満足満足、久しぶりに思いっきり食べれた」
「旅人さん、前のお連れさんが露天風呂を作られたみたいなんですがいかがですか」
料理を振舞ってくれた村人が言った。
「なんだ晴明、用意がいいな。さっそくみんなで風呂に入るか」
ゆっくり浸かった後、宿に戻ると布団が用意されていた。気を利かせてか晴人夫婦は別部屋だった。
「いい一日だったなタマモ、晴明からのプレゼントだな。さて寝るとするか」
「まだよっ!次は私のお楽しみ」
タマモの目が光ると抱きついてきた。




