◆再び三人の旅
車中でも三人のお喋りは続いた。
「オオガミ、ずっとあんな調子で探偵家業をしてたのか」
「そうだな。戦後色々な仕事をしたが戦争中の上官の銭形大尉に再会して住むところを世話してもらって港湾での仕事をしばらくしていたが神戸の港もさびれてな、それからは探偵さ」
「ねえ、私は戸籍あるけどオオガミはどうしているの?ないと不便でしょ」
「戦後のどさくさで大神明人という戦死した戦友の戸籍を代わりに使わせてもらっている。もうこれでも戸籍通りなら90歳という設定だ。年金生活者だよ。笑ちゃうだろ。必要な時は老人に変装して切り抜けているがな」
「戦争に行っていたのか」
「あゝ、日本で二度と起こってほしくないな。馬鹿げた行為だ。まだ戦国時代の方がましだ」
「まったくだ。世界でもまだまだ戦争はなくならない。支配者のエゴで殺し合いをさせてるだけだ」
晴明や子供たちの将来を考えても平和な世の中を願い憤慨している晴人に
「晴人、今からあんまり熱くならないでよ。これから平和を取り戻す旅に出るんだから」
後ろの座席から助手席に座る晴人の肩をもみながら、タマモがやんわりと言った。
旅館に着くと一週間ほどの旅支度を整えて
「ゲートは晴明たちが使ったところから出発しよう。道は案内するオオガミ行くぞ」
「いいのか。こんな老舗の旅館を放っておいて」
「しばらく改装工事が入るから休業だ。あとは優秀な従業員がいるから問題ない」
車を飛ばし古代遺跡風の教団本部にやって来た。
「ここだここから異世界へ飛ぶぞ」
「生身では久しぶりね」
「生身では?今の異世界へ行ったことがあるのか」
「晴明に合流出来たら教えてやるよ新兵器を、まだ驚く出逢いがあるぞ」
神殿の中へ入っていった。
「さあ今日はどんなクエストがあるのかな」
晴明は冒険者ギルドで依頼を物色していた。
「ヒポグリフの討伐依頼がなくなってるね。私たちが全滅させちゃったのかな」
「そりゃそうだよあれだけ退治したらもうあそこらへんには怖がってヒポグリフも寄り付かないよ」
「ハルアキ様、ちょっとこちらへ」
ギルドの受付のウィーナが呼んでいる。
「なんですか。何か問題でもあったんですか」
「問題と言えば問題なんですけど、ヒポグリフの討伐クエストの件なんですが特例なんですがギルドマスターがランクアップを許可したんです。それもツーランクアップなんです。Bですよ、B、たった一日で驚きました。カードをこちらへ書き換えますので」
晴明たちはギルドカードをウィーナに渡した。
「あのお方がおられないようですがどちらへ」
「あのお方?父さんですか。別行動しているんです」
「それは残念です。もう一度お会いしたかったんですけど、伝えてもらえます今度食事にでもと」
えらいことである母さんが知れば大変なことになる。
「とりあえず伝えますけど無理だと思いますよ」
晴明はそう伝えたが父さんが知ればどう言うかな。
「それとギルド長からミノルトリアでワイバーン討伐のクエストをお願いできないかと向こうでも持て余しているらしいんですよ」
ミノルトリアと言えば晴海の両親が最後にクエストを受けた場所だ。
「受けます、喜んで、ミノルトリアには行ってみたかったんです。晴海、ミノルトリアに行くよ」
晴明たちは一度宿に戻りミノルトリアへと出発していった。
「ここがシーモフサルトか、日本とはやっぱり空気が違うな。戻ってきたんだな」
オオガミが深呼吸をしてそう言った。
「まずはエヴァ女王の所へ行こう。走るぞ」
「晴人、大丈夫なの」
「身体強化を最大に付与してオオガミのペースに合わせるようにするから、タマモも遅れるなよ」
「あなたこそ、昔みたいに動けないのよ。無理しないでね」
「ダイエット代わりだよ。行くよ」
三人はドラゴニアを目指してマラソンを始めた。