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◎久しぶりのデートなのに

「おい、かあさ・・いや・・タマモちょっと服装が派手その・・すぎるんじゃないか」

 外出用の服に着替えたタマモに晴人は戸惑っていた。どこに隠し持っていたのかその服はボディラインのよくわかるタイトな衣装で派手な色がさらにスタイルのいい体を浮かび上がらせていた。

「いやね。たまには陽子を演じるんじゃなくて()の私でデートしたいの」

「それにしても・・・」

 これ以上何を言っても無駄だと晴人はしぶしぶ手をつなぎ家を出た。

 電車の中でもしっかり晴人に寄り添っているタマモ、周りの視線に恥ずかしくなる晴人だった。

「タマモ、もう少し普通についてきてくれないか恥ずかしくて仕方ないよ」

「かまわないわよ。陽子じゃなくて今日はタマモなんだから昔もこうしてたよね」

 顔を晴人に近づけていった。

「確かにそうだが周りの目がそのあの・・・気になるんだ」

「今日は私のわがまま聞いてよね」

 観念して黙り込みサングラスをかける晴人だった。

 田舎の電車の車内は好奇の目で晴人たちを眺めていた。視線に耐えてやっと新開地まで来た二人は電車を乗り換え元町へと降り立った。


「先に飯でも食ってから向かわないか。とんかつでも食べるか」

 最近は肉っ気がさっぱりご無沙汰の晴人はリクエストをしたが

「だーめ、お蕎麦にしましょ」

 あっさりと却下されてがくりとした。

「でも天ぷら頼んでいいよ」

 お気に入りの蕎麦屋で天ざるをタマモはカモせいろ注文した。

「いいかなタマモ、日本酒を飲んでも」

「私もいただくわ」

 丹波の銘酒、小鼓を二人で乾杯をして杯を傾けた。

「あゝ幸せ、昔を思い出すわね。ミノでの立ち飲み美味しかったわよね」

 異世界エンドワースの酒場のことである。

「肉が食いたくなるな」

 タマモが晴人を見つめて指を見せる。

「なんだよ」

「思い出さないの」

 さらにじっと見つめる。

 やっと晴人はその指にはまるリングをに気が付いた。

「まだ持っていたのか」

「そうよ晴人が初めてプレゼントしてくれた指輪、大事にしまっていたのよ」

「俺のもまだあるよ」

「ほんと、どこにあるの」

「オーディンの馬の中にしまってあるよ。大事なものだからな」

「あら、うれしい、大事にしていてくれていたのね」

 蕎麦を美味しく食べた二人は乙仲通りに向かおうとしていたが、元町の商店街が何やら騒がしい。

「なにかあったのかな」

 晴人は人々が逃げてくる方向へと向かって行った。

「あなた、待ってよ」

 タマモもあとに続く

 商店街のど真ん中で大きな蜘蛛が暴れていた。

「あれはメダルの妖怪だよな」

「晴ちゃんが言っていたけどメダルを使い続けると麻薬中毒のようになって我をなくす人がいるって言ってたわ」

「まさにその状態のようだな。討伐するかタマモ」

「もちろん、食後の運動よ。あなたがんばって」

「おれか、しかたない」

 晴人が印を結ぶとあたりを霧が立ち込めて視界を奪った。

 大蜘蛛も動きを止めた。晴人は静かに近づいてい行った。

 むんずと蜘蛛の頭を掴むと


あまびこの

おとをまゐらすわりなしの

さがなしものにさながらうす

雷撃(フルミネ)


 電撃の衝撃波をぶち込んだ。

 地面にひれ伏した蜘蛛に

「オンキリキリバザラウンバッタ」

 除霊の真言は術者からメダルを引きはがした。それをポケットに突っ込んだ。

 あとには気絶し倒れたていた。見れば普通の学生のようだった。

「どうだタマモ、まだまだ捨てたもんじゃないだろ。さあ逃げよう」

 タマモの手を引き路地裏へと駆けて行った。


「はあはあ、ここまでくればもういいでしょ。でも楽しかったわ」

 息を弾ませながらタマモが笑顔で晴人に言った。

「そうだな、ちょっとしたエクササイズになったよ。あまりカロリーは消費しなかったけどな」

「教団の幹部たちは捕まってもまだまだ被害者がいるのね」

「最悪のやつらだな久遠くんの特務捜査課零係にしっかり働いてもらわないいけないな。銭形ビルへ行こう」

 二人は手をつなぎ乙仲通りへ向かって行った。

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