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◆ホワイト・ラビット

 竹林を出て行こうとするとからくり兵がまた目の前に現れた。先ほど倒したはずの個体であった。

「どうしてまた、二人とも後ろに隠れて」

 剣を構え晴明が応戦しようとしていた。

「ホワイト・ラビット!止まりなさい」

 カグヤの命令に従うようにからくり兵は動きを止めた。

「白兎だって、こいつの名前なの?確かに倒したはずなのに」

「自己修復するのよ。戦闘形態を解きなさい」

 からくり兵の体が裏返るとウサギ型の獣人となった。

「すみませんカグヤさま、かなりのダメージを受けてしばらく行動不能になりました」

 なんとそのウサギはしゃべりだした。

「晴明、あなたたいしたものね。ラビットを行動不能にするには正確にコアを破壊しないと、いけないのよ」

「たまたま似たやつと戦ったことがあるから何とかできただけです」

「謙遜なんかしなくていいのよ、晴明、あなたがすごいんだから」

「そんなこと言わなくてもいいよ。でもカグヤ、コアを破壊したのに自己修復なんてできるの?」

「ラビットはこう見えて狼なのよ。月の力で不死身なの」

「オオガミさんと同じか」

「人狼の知り合いがいるとは珍しいな。アルテミス様の加護がないとそんな存在はなしえないのだがな」

 晴明はあのオオガミと女神様を比べ想像したとたん笑ってしまった。

「いや、女神様とは程遠い人なんですけど・・・」

「羊ならぬウサギの皮をかぶった狼さんお供にしてあげるから私たちについてきなさい」

 晴海は実はウサギが好きだった。ホワイト・ラビットはカグヤのほうを向くとカグヤのうなずく姿に従った。


 晴明を待つ宝蔵院たち

「おや?なんだか不安がなくなってきた感じがする」

「ヨシュア、どうしたんだい。何か確信があるのかな」

 宝蔵院はその理由を知りたくなっていた。

「ドラゴニアにいたときに神殿でアルテミス様にお祈りをしていると心安らぐことがあるんだけどそんな感じが今よぎったんだ」

「おい、晴明たちが戻ってきたぞ。なにやら見慣れぬやつらを引き連れて」

 警戒していたヤーシャがそう叫んだ。


「ごめん、遅くなって、心配かけたかな」

 晴明がそう言いながら走ってきた。

「晴明君、その女の子とウサギは何者なんだい」

「カグヤさんと言って、竹林で眠っていたんだ」

「カグヤ?竹林?かぐや姫なのか」

「まあ、そんな感じかもしれない。千年以上眠っていたみたいだから」

「!興味深いですね。調べていいですか」

 宝蔵院の好奇心に火がついてしまった。

「気に入らないけどレディなんだから天鼓君、調べてみたいだなんて失礼な言い方はダメよ」

「つい、カグヤさん、すみませんでした。宝蔵院天鼓といいますよろしく」

「ヨシュアです」

「あら、龍族の男の子じゃない。封印は解けたの」

「カグヤ、月が統合されたんだ。五百年前」

「よかったわね。アルテミス様に許されて、そちらの戦闘力の高そうなお姉さまは」

「ヤーシャだ。お前も戦闘力で言えばなかなかのようだが」

「うあ!ウサギさん、かわいい」

 リリがホワイト・ラビットに抱きついていった。

「私はリリ、ウサギさんは」

「俺の名前は(ダブリュ)(アール).だ」

「だぶあ、だぶあちゃんよろしくね」

「言いやすいね。だぶあ、天鼓君に変身見せてあげて」

「このウサギ、何か特殊な能力があるのですか。実に興味深い。早く見せてください」

「見せてあげなさい。()()()

 カグヤが言うと身を小さくかがめるホワイト・ラビットはからくり兵へと変身した。

「おお!!これは!!調べさせてください」

 一瞬にして宝蔵院は夢中となってしまった。

「天、後にしなさい。まずは晴明たちの腹ごしらえが先だろ」

 ヤーシャは宝蔵院をいさめた。

「そうだよ。おなかペコペコだよ」

「任せてください。晴明君、ヒポグリフの肉を極めましたから」

「おっ、面白そうだね。お願いするよ」

 晴明たちは遅い昼食を取ることになった。

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