◆ヨシュア戦う
「ヤーシャ殿、晴明たちと合流しませんか。私では足手まといにしかなりませんです」
ヤーシャは何も言わずどんどん先を進んでいく。
「お願いします。引き返しましょう」
ヨシュアは半べそでヤーシャを引き取目にかかっているが意にも介さず進むヤーシャだった。
お目当てのヒポグリフを見つけたヤーシャたちだったが別の冒険者三人が闘っていた。
「よかった、あの人たちに任せて戻りましょうよ」
ところがこの冒険者たちは明らかに経験不足のようだった。今にもヒポグリフに凌駕されようとしていた。
「助けるぞ、ヨシュア行ってこい」というとヨシュアを掴んでその戦いに中に投げ込んだ。
「うぁぁぁあ!」
転げまわりながら冒険者の前にヨシュアは飛び出た。龍族を見慣れない冒険者らは
「新手の敵が現れたぞ。このリザードマンは俺が引き受けた」
獣人の男は傷だらけで今にも倒れそうであったが力を振り絞りヨシュアに剣を向ける。
「ま、まってくれ加勢に来たんだ。敵じゃない」
そう言うとあわてて槍をヒポグリフに向けて目をつむったまま突進した。
気は弱いが屈強な龍族の力である。その突進力はすさまじく素早いヒポグリフもよけることができなかった。
槍は深々とヒポグリフの胴体を貫いた。そして二人の冒険者が恐る恐るとどめを刺した。
「ありがとう。助かったよ。おれはムツルキ」
最初に剣を向けた男がヨシュアに手を伸ばした。ヨシュアもそれを掴み握手をした。
「龍族のヨシュアだ。よかったよ間に合って」
「それにしてもすごい突きだな。さぞ高名な冒険家なんだろうな。俺はミナルキ、こいつがハツルキだ」
「初めてのヒポグリフ討伐クエストだったが俺たち兄弟にはまだ早すぎた」
ハツルキという男が長兄であろうか、そう言ったところへヤーシャが現れた。
「ヨシュア、よくやった。ハツルキとか言ったか、この獲物は私たちのものでいいな」
「まって、ヤーシャ殿、魔石はこちらで残りはこの兄弟に渡してやってくれないか。せっかくここまで傷ついて挑んだんだから」
「いいのかヨシュア、助けてもらったうえに死骸を譲ってくれて」
「気にするな。こんなやつ目をつぶったままでも何匹っでも倒せるからな。はっはっは!」
ヒポグリフを倒してすっかり気が大きくなったヨシュアは調子に乗って軽口を叩いていた。
「ヨシュア、次を探すぞ。目を閉じたまま簡単に倒せるんだろ」
「そ、それは・・・ヤーシャ殿待ってくれ」
魔石を取り出すと立ち去るヤーシャをあわてて追いかけていった。
次の獲物をヤーシャよりヨシュアが見つけた。
「ヤーシャ殿、この先に獲物がいます」
「よくわかるな。思ったより鋭敏な感覚を持っているな。臆病も役に立つな。いくぞ」
「臆病は余計です。この髭が教えてくれるんですよ」
くるっとカールした髭をひくつかせた。
川沿いへ近づくと水を飲んでいるヒポグリフがいた。
「作戦はいたって簡単だ。おまえが槍で突撃して私が動きの止まった獲物にとどめを刺す。さっきのようにだ」
「そんな、さっきは無我夢中でたまたまうまくいっただけなのに」
「なにやればできるさ、しかっり目を見開いて獲物に集中して息を思い切り吸って止めた瞬間に走り出せ」
ヨシュアは言われた通り槍を構えてシューッと息を吸い込んだ。気持ちが静まっていくことを感じた。
息を止めた瞬間地面をけった。
すさまじいスピードでヒポグリフに突っ込んでいった。
槍は腹部に突き刺さりその勢いのまま川まで突っ込んでいった。
水から顔を上げ叫んだ。
「ヤーシャ殿!とどめを!」
「なにを言っているんだよく見ろ」
ヨシュアは掴んだ槍の先を見るとぐったりとなったヒポグリフが突き刺さっていた。
一突きで獲物を仕留めたのだった。
「こ、これは・・・」
「お前ひとりで仕留めたんだ。もっと自分の力を信じちゃどうだ。守りたいものも守れないぞ。これからの旅の途中私が鍛えてやる」
「ヤーシャ殿、いやヤーシャ師匠お願いします」
頭を下げて頼んだ。
「ところで晴明はどうしているんだろう」
「いったん、天のところに戻るとするか」
ヨシュアは自ら仕留めたヒポグリフを引きずりながらヤーシャを追った。
「テンテン、みんなまだ帰らないね」
「リリ、もうすぐ戻ってくるよ。お昼ご飯だからね」
ヤーシャとヨシュアが戻ってきた。
「天よ、一匹倒したみたいだな」
「持って帰って来た本で学習した闇魔法を試した見たんだ」
「晴明はまだ戻ってないんですか」
「先に腹ごしらえしよう。食べ物の匂いでやつなら戻ってくるだろう」
「そうですね。このヒポグリフを食べてみましょう。どんな味か調べてみたいんですよ」
昼食の用意をし始めた残された仲間たちだったがいつまでたっても晴明と晴海が戻ってこなかったのであった。




