◆オワリトリア
その都市は土塀で囲まれていた。まるで日本の城郭のような様式であった。
「なんだか日本的ね。晴明、ここが昔エンドワースと呼ばれたこの国の首都だったオワリなの」
「父さんからも聞いていたけど木造建築の粋を凝らした美しい街らしいよ」
「興味深いですね。おそらく大昔に異世界転送された日本人たちが作った文明かもしれませんね」
「あそこに門がある!ナイトを戻して行ってみよう」
メダルに戻すと車に付けていたシロクマの旗を持って門番に近づいていった。
「おまえたち人間族じゃないか珍しいな。ここに来た目的はなんだ。その旗はシロクマ殿の傭兵か」
大きな魔族の門番の矢継ぎ早な質問ぜめが始まった。
「これを見てください」
シロクマからもらたった通行許可証を門番に見せた。
「通ってよかろう。オワリトリアにようこそ」
見た目とは違って親切な応対だった。
「人探しをしています」
正直に晴明は晴海の両親の写真を見せながら聞いてみた。
「見たことがないな。冒険者ギルドにでも行ってみな」
「アドバイス、ありがとうございます。冒険者ギルドはどっちですか」
「城門を入ってまっすぐ行けばわかる」
晴明は父を召還した。
「やっと呼んでくれたか晴明、母さんがやきもきしてたぞ。無事オワリに着いたようだな。ここは昔の面影が残っているな」
木造建築の様式美を備えた異世界とは思えない風景が広がっていた。
「なんだか日本的な街だね。今はオワリトリアというみたいだよ」
「これからどうするつもりだ」
「冒険者ギルドに行って登録しようと思うんだ」
「あと少しで春休みも終わってしまうから、ゆっくりクエストをこなす時間なんてないぞ。まあこっちの世界の身分証明にもなるし登録に問題はないがな」
冒険者ギルドの場所はすぐに見つかった。中に入ると時間のせいかあまり人がいなかった。
「あそこが受付だ」
晴人が晴明たちを連れてエルフの女性職員の前に連れていった。
「こいつらを冒険者登録をしたいんだが受け付けてもらえるかな」
「シロクマ様の所から来られたのですか、どの方を登録するのですか」
「俺を除くこいつら全員だ。登録費用はこれで足りるか」
カウンターにシロクマからもらったお金を置いた。
「五名様ですよね。充分です。こちらの申込用紙に書き込んでいただけますか」
「父さん、書いてよ。こっちの国の文字なんてわからないよ」
「僕が書きましょうか」
「えっ、天鼓君もう文字覚えちゃったの」
「ルーン文字に似ているので大丈夫ですよ。昔解析したことがありますから」
宝蔵院がペンを取って羊皮紙の申込書をどんどん書いていった。
「晴明君のお父さんこれで大丈夫ですか」
晴人に用紙を渡して確かめてもらった。
「まったく驚くほどの才能だな。問題ないよ。晴明のジョブが陰陽師、晴海がお祓い師、ヤーシャが暗殺者、ヨシュアは戦士、そして君が賢者か。前の三人は正直に書かなくてもいいぞ。魔導士と戦士でいいぞ」
晴人が書き直してエルフに渡した。
「ハルアキ、ハルミ、ヤーシャ、ヨシュア、テンコさんですね。しばらくお待ちください」
奥へ入っていった。
「しばらく待たないといけないな。あそこの掲示板にクエストがある、今のクエストを見てみるか」
掲示板に向かって行った。
「昔と変わらないな。薬草の採取や害獣の駆除とか朝一番でこないといい依頼はないようだな」
「やっぱり早い者勝ちなんだね。父さんのおススメは」
「おそらくお前たちの登録ランクはEだろう。一番下のクラスだから大きな依頼は受けられないぞ。まずはこの水路の掃除くらいだな」
「ちぇつまらないな。ランクを上げるのが面倒くさいな。ランクアップの裏ワザなんてないの父さん」
「そうだなこの害獣駆除を職員が驚くほど倒せばいいかな」
かつてオオガミたちがこなしたランクアップの技を教えてやった。
「晴明さんたちパティ―こちらへ来てください」
ギルドカードが出来上がったようだ。晴明たちは受け取った。
「これはランクDだが間違えていないのか」
「最低ランクはDですが、問題でも」
「そうか、そうなってるんだ今は聞きたいことがあるんだがこのエイセイとモモカという人物はギルドに登録されているかい」
写真を見せながらエルフに晴人は聞いた。
「調べてみますからお待ちを」
タブレットのような魔道具を操作し始めた。
「Sランクでのご登録者がいますね。パティ―は二人で登録されています」
「最近のクエストの受注状況はどうなんだい」
金貨を一枚そっと渡す晴人
「半年ほど前に一つこなされてますね」
「このギルドでか?」
「ミノルトリアですね」
どうやらかつてのミノのようだ。
「よかったな晴海ちゃん、元気にしてるみたいだよ」
「冒険者ギルドでこんな情報が手に入るなんて晴海、よかったね」
「早くミノルトリアに行きましょうよ」
「いや、待てよもしかしたらあちらこちらを移動しながらいるのかもしれない。このオワリトリアを拠点として調べていったほうがいい。エルフの君、名前は」
「ウィーナといいますが今夜は予定がありますけど明日なら」
しまった今でもエルフ族は異文化交流が好きだったなんて・・ハルトは困ってしまったが
「いや、そんなことじゃないんだ許してくれ。この街で安い宿を探したいんだ。教えてくれないか」
「あらお食事の誘いかと思ったんですけど。このギルドの裏通りに宿屋街がありますけど、おすすめは一階で食堂をしているシャチホコ亭ですね。便利ですよ」
「いいね食堂もあるならそこにしようよお父さん」
「ウィーナ君、このヒポグリフ討伐は一体当たりの単価なのかい」
ヒポグリフは身体の前半身が鷲、後半身が馬の合成獣だ。
「ええ、一匹当たりの報酬ですけどDランクの方々には難敵ですよ」
「だいじょうぶだこの子たちなら受注させてやってくれ」
「自己責任でお願いしまよ。ランク以上のクエストは、カードをもう一度渡してもらえますか」
ハルアキ受注でほかの四人がパティ―として登録された。
「くれぐれも無理のないようにこれで受注完了です」
「ありがとう」
晴明たちは宿屋へと向かって行った。