◆難儀鳥
「みんなナイトに乗ってついてきて」
晴明は砲撃の終わりとともに土壁パレーテを解いて加速でダッシュした。
しゃべる車、ナイトも猛スピードで追従した。
丘の裏に晴明が回り込むと大きな鳥がナマズ型の爆弾を足に引っ掛ける作業をしていた。
天叢雲剣が一閃した。怪鳥の首をたやすく切り落としと、すぐ近くにいた魔族の男に剣の切っ先を向け
「どうして僕たちを襲ったんだ!答えてもらおう」
ナイトも追いついてきて晴海たちが降りてきた。
「これは難儀鳥ね。晴明、妖怪よ」
「口を割らせるなら私に任せなさい」
ヤーシャが前に出た。
「早くしゃべったほうがいいよ。このお姉さんは怖いよ」
脅えている男は口を開いた。
「裏ギルドで賞金首になっているんだお前たちは」
「裏ギルド?なんだよそれ」
「冒険者ギルドを介さない裏の仕事を紹介してくれるんだ。西へ向かう人間族の四人の足止めを頼まれたんだ。その妖怪を渡されて」
「どんな奴がこの鳥を渡されたんだよ」
「ネズミ化け物のようなやつだった」
「根角じゃない。やっぱりこっちへ来ていたんだ」
「まったくこの世界にもそんなシステムがあるとはな。ハッキリ言っておくけど二度と僕たちに手を出さないでね。次はないよ」
晴明の魔族の男を解き放った。
「いいの晴明逃がしちゃって」
「どうせこれ以上何も情報を持ってないよ。使い捨てにされるだけだったんだろ」
「さあ先に進みましょう。旧エンドワースの首都オワリまで夜までにたどり着きたいですね」
宝蔵院が地図を広げながらそう言った。それを覗き込み晴明が
「シロクマさんが言っていたけどそれなりに今でも大きな街らしいから情報が集まるはずだよ」
難儀鳥からメダルを取り出してナイトにチャージした。
「オナカイッパイデス。ハリキッテイキマショウ」
オート走行でオワリまで突っ走ていった。妨害工作はなかった。
日が暮れ前に城下町にたどり着きたかったのだが、夜営することになってしまった。
「道がもっと舗装されていればもっとスピードが出せるのにな。仕方がないや。ここで朝を待とう」
水場と見晴らしよさそうな場所が確保できた。夕食の準備を始めながら
「天鼓君、冒険者ギルドってどんなとこだろうね。僕らでも登録できるのかな」
「僕も興味深いですよ。職業安定所のような所だとすると門戸は開かれているんじゃないですか。冒険者なんて僕たちの世界では山に登ったりヨットで航海をするくらいですもんね。タスクをこなせば対価が得られるようなシステムはありませんもんね」
「晴明、登録してみようよ」
「やってみようか冒険者、ファンタジーの世界だね」
「対価を得て仕事をこなすことはそんなに簡単なことじゃないぞ。危険も伴うんだぞ」
ヤーシャはぽつりとつぶやいた。
「あなたが言うとなんだか怖いわね。明るい仕事だけ受けるようにしましょうね」
「ヤーシャがとってきた肉がいっぱいあるからタウロ呼んで美味しいもの食べようか」
「賛成!」
晴海は大喜びだ。
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク!ダッシュスリー、タウロの化身」
「呼ばれて飛び出てうほっうぼっ!」
「タウロ、お肉がいっぱいあるんだ。なんか作ってよ」
アイテムボックスから鶏肉を取り出した。
「煮込んでシチューでも作るだか」
さっそく調理を始めるタウロだった。
「ニンニクのいい匂いだね。何のシチュー」
「シュクメルリだ。ぼっちゃん」
「ジョージア料理だね」
「あとはいろいろ詰めて丸焼きにするからしばらく待ってくれだ。ところでまだミノには着かないだか」
かつて異次元牢獄からこちらに来た時のことを話し出した。
「あそこの牛肉は絶品だっただ。もう一度調理してみたいだ」
「まだミノまではたどり着けないよ。オワリという街の近くだよココは」
「そうだか。オワリはどんな料理があるだかな。楽しみだすな」
「そうだね。どんなものが食べれるかな」
「晴明は美食の冒険家ね。私も楽しみだけど」
タウロの自慢の料理で晴明たちは満足してその日は夜営をした。