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◆クエスト開始

「ここが宿屋街かちょっとした昔の日本の街道筋のような風情だな」

 大小と様々な宿が並んでいた。さすが大都市である。銭湯まであった。

「父さん、ここじゃないかな、看板に大きくシャチホコが描かれているよ」

 和風の出汁の匂いが香ってきた。

「いい匂いがしてるよ、この食堂」

「異世界来た感じがない匂いなんですけど」

 晴海は笑っていた。

 晴明たちはシャチホコ亭の暖簾をくぐった。

「へい、いらっしゃい!六名様だね。こちらへどうぞ」

 一段上にある板の間の長机に案内された。

「居酒屋にでも来たような気分だな」

「父さんお昼から呑んじゃだめだよ。見たところ麺類の店みたいだね」

 店員の女性が注文を取りに来た。

「どちらにしますか」

「どちら?二つしかないのメニューは」

「ええ、お昼はうどんと親子丼だけですよ。うちは」

 昼時は夜のために仕込みでもしているのか簡単に調理しようとしてるようだ。

「じゃあ、僕は両方」

「よく食べるのね。私はおうどんを」

 各自どちらかを選んでいたがヨシュアとリリはどんなものかわからないで晴明と同じく両方頼んでいた。

 晴人は無理を言って出汁巻きに日本酒を頼んでいた。

「父さん昼間からやっぱり呑んじゃって、母さん言いつけるよ」

「固いことを言うなよ。向こうじゃダイエット中なんだぞ。せっかく母さんの目の届かないところに来てるんだからちょっとは大目に見てくれよ」

「じゃあ、ヒポグリフの情報教えてよ」

「獰猛で素早いが飛んでしまえば動きが単調になるんでそこが狙いめかな。おっと酒が来たな」

 出汁巻き卵と徳利に入った日本酒が届けられた続いて親子丼が運ばれてきた。

 晴明が丼のふたを開けると湯気の立つ中にふわふわの卵が目に飛び込んだ。

「美味しそうだ。お先にいただくね」

 どんぶりを持ち上げるとハルアキは食べ始めた。

「絶妙な火加減で卵がいい感じだよ。この地鶏もジューシーで程よい弾力で美味しいよ」

「私も親子丼にすればよかったかな。少しもらっていい」

 晴明はどんぶりの蓋に少し取り分けて晴海に渡した。

「ありがとう。やさしいのね」

 そうしているうちに土鍋に入ったうどんも運ばれてきた。

 晴明はどんぶりを置きさっそく蓋を開いた。

「味噌煮込みうどんだ。まだぐつぐつ煮たっているよ」

 どんぶりと同じ地鶏と油揚げに半熟卵が煮たった出汁に浮かんでいた。

「おっと麺の腰がすごい。八丁味噌が麺にうっすらしみ込んでいる」

「こんなおうどん初めてよ。麺がすごく固いのね」

「名古屋風の味噌煮込みだよ。このしっかりした麺が特徴なんだ」

「なんでもよく知ってるのね晴明は」

「俺があちこち食べ歩きで連れまわしているからな。美味しそうに食べるのを見るのも楽しみなんだ」

 日本酒をちびちびとやりながら晴人が言った。

 晴明がリリに目をやるとうどんが熱すぎて食べるのに苦労していた。

「リリ、その蓋を取り皿にして食べるんだよ」

 晴明は自分の鍋の蓋でやって見ながら教えていた。

「どうだいリリ美味しいかい」

「晴明、美味しいよ。タウちゃんの料理と同じくらいすごいよ」

 不安なく過ごせそうな宿屋で晴明たちは満足した。

「ここは宿屋も兼ねているんだろ。部屋は開いているかい」

「この人数でしたら部屋が一つだけ空いてますがよろしいですか」

「大部屋か、まあ雨露がしのげればいいだろう。お願いするよ。八雲だ」

「ありがとうございます。ヤクモ様、何泊ですか」

「とりあえず一週間お願いするよ」

「銀貨70枚になりますのでご用意ください」

「先に払うのか。飯付きの値段か」

「朝だけはご用意いたしますが、おにぎりとうどんになります」

「いいだろう。晴明払いなさい」

 晴明はお昼のご飯代と共に代金を支払った。

「よし、そろそろ行くかクエストへ」

 晴人が立ち上がった。

「みんな行くよ!」

 

晴明たちはヒポグリフ討伐へとオワリトリアの街を出ていった。

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