◆謎の空爆
翌々日、昼前に二連の木造アーチ橋が完成した。リリの件もあって予定より一日多くかかったが、三日でこれだけの橋を作ってしまった。見物人も集まり工事現場はお祭りのようであった。
「天鼓君、立派な橋が出来上がったね。すごいやなんでも設計できちゃうんだね」
「僕より晴明君の力がなければこんなことはできないよ」
「なに言ってんのよ。夏休みの工作みたいに中学生二人でこんなもの作っちゃうなんて非常識よ」
「名前をつけようか」
「晴明君、天鼓橋だなんてやめてよ。二人の名前にしてくださいね」
リクエストを聞き欄干に晴明は漢字で剣を使って掘り込んだ。
「天晴橋?」
晴海はてんせいきょうと読んだ。
「あっぱれ橋だよ」晴明は訂正した。
「確かに三日で作った橋にしては天晴な出来栄えね。向こう側に渡ってお昼にしましょうよ」
晴明と宝蔵院が橋にかかりきりになる中、ヤーシャは狩りに出かけてギアーレなどたくさんのエモノを狩ってきていた。それを使ってバーベキューの昼ご飯だった。
「そうだ晴明、ヨシュアって火を吹けるってしってる。見せてやってよ」
ヨシュアはバーベキューコンロの燃料に口から吐いた炎で着火した。
「さすがドラゴンて能力だね」
「そんなにたいしたことはないよ。晴海だって火を操れるから」
「どんなことなの晴海」
聞いてきた晴明の目の前を狐火が横切っていった。
「こんな感じね」
「それって狐火じゃない!!晴海もできるの」
晴明もキツネの形の狐火を放った。
「えっ晴明もできるの!それにキツネの形なんて私よりすごいじゃない。ほんとにかなわないわね」
「もしかしてこんなこともできるかな」
晴明はサイコキネシスでバーベキューの串を持ち上げて晴海の皿に運んだ。
「そんなことできないわよ。どうして」
「狐火と念動力ってセットかなと思ったんだけど違うのか」
宝蔵院は興味深そうに二人の様子を観察していた。
「そろそろ出発しないか」
ヤーシャは晴明を急かしていた。
「かたずけが済んだらすぐに出かけよう」
ナイトに乗って一行は西へと進み始めた。
大きな木が所々生えている湿原地帯をひたすら走る旅であった。二時間が過ぎた頃、晴明が
「退屈だから食べ物しりとりでもしようか」
「もう、晴明の言う食べ物がおいしそうでおなか減っちゃうじゃない却下」
と言った途端、爆発が車の目の前で起こった。緊張が走る。
立て続けに爆弾のようなものが落とされているようで車の近くで爆発が続いた。
「明らかに僕たちを狙っているようですね。どこから砲撃しているんでしょう」
「ナイト、運転を私に任せろ」
ヤーシャがハンドルを握り蛇行運転を始めた。
「ヤーシャさん、あの大きな木の下で車を止めて」
晴明が言うとヤーシャが猛スピードで木の下まで走った。晴明は車を降りて
しきたへの
ころもまといし
土壁
大木ごとバリアを張った。
「どこから攻撃してきているかわからないな」
バリアに遮られはいるが爆発は続いていた。
「爆撃に法則性があるようですね」
「天鼓君どういうこと」
「六発連続で爆撃した後、3分ほどチャージしてさらに攻撃してきていますよ」
「晴明、鳥が飛んできている。足の指に引っ掛けた魚のようなものを落としている」
「ヨシュア、本当、見えるの」
「うん、この木の上に登ってじっくり見てみるよ」
木によじ登っていくヨシュアだった。
宝蔵院の言う法則性で次の爆撃が始まった。
砲撃が止むときから降りてきたヨシュアが言った。
「あそこの小高い丘のうしろから来ているみたいです」
500メートルほど向こうの丘を指さした。
「わかったよヨシュア、次の砲撃の後僕があそこまで一人で行って何とかするよ」
「一人で大丈夫なんて言わないわ、ガツンと一発かまして」
晴海が言うと
「任せておいて」
大きく息を吸ってクラウチングスタートのかまえを取った。
やがて次の砲撃が始まった。