◆意外な領主
「晴明スピードを落とせ、岸に着くぞ」
船着き場にゆっくりとボートは近づいていく、人混みが晴明たちを見ている。
よく見ると魔族のようだが人族の様相も見せている。ハイブリットだろうか。
近衛兵のようなものも駆けつけてきたようだ。不審な旅人を警戒していた。
「皆さーん!怪しいものじゃありません。人探しをしているんです」
大きく手を振りながら晴明は突然の来訪を弁解している。
武器はすべてアイテムボックスに収納して丸腰の状態であったが、上陸すると近衛兵に拘束されてしまった。
「やっぱりこうなるよね。なんとかなるわよね晴明」
「何事も話し合いからだよ」
「無駄口を言わず、黙ってついて来い」
見物人の群衆の中、兵に促され城内へと連れていかれた。
尋問は各自バラバラにおこなわれた。一時間ほどあれこれと質問を受け五人は一つの牢屋に閉じ込められた。
「結構対応が丁寧だったよね。みんなはどうだった」
晴明が言うと
「私が写真を見せると父さんと母さんのことを聞かれたわ」
「どこから来たのかの問いにはドラゴニアと答えたら不思議そうな顔をしていたよ」
「私もだ。ドラゴニアに興味があるようだった」
「ヨシュアは」
「ドラゴニアの龍族が国境を越えたこと尋問された。君たちの案内役だと言ったが信用したかどうかはわからないが」
「リリは怖くなかったか」
「テンテン、お菓子くれたよ」
聞かれた内容もあまり理解できなかったようだが、どうやらリリのおかげであまり怪しまれなかったようだ。
兵士が一人牢屋にやって来た。
「領主さまがお前たちを見たいと言っておられる。粗相の無いように」
さらに何人かの兵を引き連れてその領主が現れた。
かなり歳を取って杖はついてはいるが頑丈そうな体に真っ白な髪の男であった。
「お前たちがエイセイとモモカを探している者どもか」
牢屋ごしに問いてきた。
「はい、この晴海の両親なんです。知っているなら手掛かりを教えてもらえませんか」
「なかなか肝の座った小僧だな。彼らは確かにこの城にいたが今はいない」
「どこにいるのパパたちは」
「彼らの目的を知っているのか娘よ。それでも追うというのか」
「どんな理由があっても会いたいの」
晴海は涙を流して行方を知りたい思いでいっぱいであった。
「領主さま、その目的を教えてもらえませんか」
「蠅の王を知っているか小僧、そこの龍族はよく知っているはずだが」
「ユートガルト城の地下深く封印されてる魔王でしょ」
「ほう、そのことを知っているのか。彼らはその魔王を完全に滅するためにそこへ向かっているのだ。どんなに困難なことかわかっているのか」
「どんな困難があろうとも僕は晴海のためにやり抜くつもりでここまで来たんです。今更引き返すつもりはありません」
「はっはっは、いい返事だ小僧、なぜか親しみを覚えるな。牢を出して向こう岸まで送ってやろう」
「ありがとうございます。領主さま」
「シロクマだ。頑張るんだぞ」
「シロクマ?髪の毛が白くなったから」
何気なく晴明の口から言葉がこぼれ出た。
「おお、よくわかったな。昔はツチグマと呼ばれていたんだがな」
晴明は驚き鉄格子にしがみついて
「ツキノワのおじさん!」
「おい!なぜその名を、晴明・・・ハルアキなのか」
「そうだよ!おじさん、また会えるなんて・・・」
晴明の目に涙が浮かんでいた。
「どうしてまた、こんなところに来たんだ。無事に元の時代に戻れたはずなのに」
「それがいろんな事情があって、そうだ父さんと母さんにも会ってノウマク サンマンダ ボダナン バク!ダッシュワン、父さんの化身」
オーディンの馬を取り出して父を召還した。
「どういう術だハルアキ!」
驚くシロクマ
「父さん、ツチグマさんだよ」
「歳を取ったな」
「ドーマか・・」
「戻れ父さん、ノウマク サンマンダ ボダナン バク!ダッシュワン、タマモの化身」
「母さん、ツキノワのおじさんだよ」
「まっ髪の毛真っ白ね」
「タマモ!おぬし生きておったか」
「母さんは石化が解けて父さん結婚してて本当の僕の母さんだったんだよ」
「よくわからんがそれはよかったな」
「めでたしめでたしのはずだったんだけどベゼル教団のせいでこんなことになったんだ」
「おい、衛兵早くこの者たちを牢から出せ」
拘束を解かれた晴明たちであった。
「すまなかったな。場所を変えてゆっくり話をしよう」