◆湖畔のご飯
晴明たちはトルクメニストに向かう山道を歩いていた。
「この峠を越えれば湖が見えてくる。そこからがトルクメニストだ」
先頭をいくヨシュアが振りむき言った。
峠の頂上から静かな湖面がきらめき広がった。湖の中心には大きな島があり城のようなものが見える。その島の周りにいくつかの島があり船が行き交う姿が見える。
「魔物はまったく現れなかったな。あそこは昔マナーコと呼ばれた海上都市だ。海産物がうまいぞ」
「船が動いているよ人がいるんだね。早く下って美味しいもの食べようよ」
父の言葉に晴明の食いしん坊テンションも上がっていった。
湖畔にたどり着くころにはお昼も過ぎていた。
湖を渡るにもあたりを見渡すが何も見当たらなかった。
「父さん、どうするの、昔はどうやって向こう側からこっちへ来ていたの」
「船で行き来をしてたものだが船着き場もないみたいだな。ここはカルデラ湖のようなものだ、周りは山で囲まれている。さてどうしたものか」
「ご飯を食べながら考えない」
「そうだな。釣でもするか晴明」
「オーケイ」
アイテムボックスからルアーフィッシング道具を二つ取り出した。
「父さんどっちがたくさん釣るか競争だよ」
親子は釣りを始めた。
「天鼓君、のんきな二人は放っておいて向こう岸に渡る方法考えましょう」
「確か車のトランクにゴムボートを積んできていたと思うけど」
「結構距離あるわよあの城までそれにあのゴムゴート四人乗りよ」
「それは問題ないともいますよ。リリは小さいからお父さんにオーディンの馬に戻ってもらえれば乗れますが、問題は推進方法だけです」
「それなら晴明が魔法で何とかしちゃうんじゃない。お腹が空いたわね。魚釣れたのかしら」
二人が戻ってきた。
「いっぱい釣れたよ。マスだと思うんだけど」
大小八匹を釣り上げて戻ってきた。
「じゃあ、父さんしばらくさようなら」
メダルに戻すとヨシュアが驚いた。
「晴人はどうしたんだ!」
「このメダルに戻ったんだよ」
父のメダルをヨシュアに見せた。
「晴明もメダルになるのか」
「違うよ。これはオーディンの馬というマジックアイテムで特別なメダルでその人に変身できるんだ。ほら、こんな感じ、ノウマク サンマンダ ボダナン バク!ダッシュスリー、タウロの化身」
「呼ばれて飛び出てうほっうぼっ!」
「また、変な掛け声、紹介するよ龍族のヨシュア、タウロだよ」
ヨシュアは唖然とタウロを見た。
「今からすっごく美味しい料理を作るから見てて」
「坊ちゃん見事なイワナだべな。あれを作るだか」
タウロは晴明に調理具と香辛料を伝えた。
晴明は言われたものを取り出して
「パンがいいね」
と言ってバケットを取り出した。
手際よく魚を捌いて調理を始めたタウロ、いい匂いが立ち込めてきた。
「いい匂いね。でも晴明、どれだけ料理用具詰め込んできたの」
「タウロが作りそうなもの考えてたらあれもこれもという感じで全部いっぱい持ってきちゃった」
「あきれちゃうわ、そのあたりは全然妥協しないのね」
「出来ただ。イワナのブゼレだ」
フランス料理の蒸し煮だった。大きな鍋から晴明が取り分けて渡していった。
「いただきまーす」
「美味しいわ、魚のエキスがスープに溶けだして」
ヨシュアが最後に恐る恐る口をつけた。
「こんな食べ物が外の世界にはあるのか・・・」
無言でがつがつと食べきって
「お代りをもらえるか」
「どんどん食べてよ。パンも」
「坊ちゃん、これも食べるだ。イワナのポワレだ」
焼き魚だがフレンチ風だ。
「皮はパリパリで身はほろほろだ。さすがタウロ」
八匹の魚はあっという間にみんなの胃袋におさめられた。
「ふー生き返った。ありがとうタウロ、またね」
「ぼっちゃーん美味しかっただか」
と言ってメダルに戻って行った。
「さて、どうやって向こう岸に渡るかだな」
「それはおそらくなんとかなるわ。塗壁君車の後部を少し出して」
塗壁から車の後部が飛び出してきた。
「あ、説明しとくねヨシュア、あれは晴海のおつき妖怪の塗影君、アイテムボックスみたいなものなんだ」
ヨシュアは肯いているがどこまで理解できたかはわからない。
「晴明、このゴムボートのエンジンになってくれる」
少し考えて
「わかったよ、やって見るよ。ヤーシャさんは舵を担当ね」
湖に浮かべたボートの先頭にオールを持って立つヤーシャ、最後尾に晴明が座った。
リリを抱きかかえる宝蔵院
「お船に乗るの楽しい」
「あんまり動いちゃだめだよ船から落ちると大変だ」
「じゃあ、行くよ」
片手を水の中に入れた晴明は
「水球」
術を放つと前にボートが進んでいった。
「ヤーシャ、あの一番大きな島に向かってくれる。興味深そうだ」
「天、リリをしっかり抱いておくんだぞ」
ボートは進路を湖の中心の島へ取った。