◆竜神の湯
手持ちの食糧でお腹をある程度満たした晴明は宴席に戻って行った。
父は龍族と酒を酌み交わしていた。
「父さん、ありがとう。連絡はついたよ」
「晴明、喜べ、温泉があるぞ」
「父さん、本当、お風呂入りたかったんだ」
「ヨシュア、さっき言っていた温泉に晴明を連れて行ってやってくれ」
食事の時とは打って変わって浮かれているハルアキを連れて松明を持ちヨシュアは洞窟の奥へと入っていった。
「ヨシュアさん、少し暗いけど洞窟の中が明るいのはどうしてなの」
「天井部分にヒカリゴケが敷き詰められているんだよ。たまにこうして松明を使うと光が貯められて明るくなるんだよ」
などと話をしながら進んでいくと大きな空間が広がった。湯気が上がるそこには乳白色の温泉が湧いていた。
「大浴場だね。湯船がカルシュウムで真っ白だよ。泉質は弱酸性だね」
片手を湯につけて晴明は温泉を分析していた。
「われらは寒さに弱いのでこの暖かい湯には助けれている」
「そのまま入っていいの」
「どうぞどうぞ」
晴明は真っ裸になってかけ湯をすると飛び込んだ。
「あーいい湯だ。異世界で初風呂だ」
ヨシュアも入ってきた。
「ヨシュアさんて一番若いって言ってたけどいくつなの?」
「14年日がめぐっている」
「えっ同い年なの。もっと歳を取っていると思ったよ。なんか親近感がわいてきたよ。一緒に旅をしてる仲間も同級生だよ」
「同級生?なんだかわからんが何か風習があるのか14になると旅をするという」
「そんなのはないけど、これからよろしくね」
「こちらこそ外の世界を旅するなんて夢にも思っていなかった。いろいろ教えてくれ」
晴明は手を差し出した。
「これはなんだ」
「握手だよ。こうやって挨拶をするんだ」
ヨシュアに握手を教える晴明だった。
「父さん、いいお湯だったよ」
「それはよかったな」
「ヨシュア、僕と同い年だったんだよ」
「そんなに若かったのか。なかよくできそうか」
「任せておいてよ」
「寝床の準備ができたそうだ。今日はゆっくり休もう」
部屋に行くと晴明は父さんをメダルに戻した。
翌朝、父さんメダルを再び召還して洞窟を出た。
「ヨシュア、そのサングラス似合っているよ」
ヨシュアは外光を防ぐ濃いサングラスをかけていた。
「晴明~」
晴海たちがこちらにやって来た。ヨシュアに警戒しているようだ。
「一緒に旅をする龍族のヨシュア君だよ。晴海に天鼓にヤーシャにリリだよ」
「ヨシュアだ。よろしく頼む」
ヨシュアは握手をして回った。
「なんだか厳つそうな感じだけど、いい人みたいね」
派手な鎧とサングラスに晴海はそういった。
「興味深いですね。龍族ですか」
あちこちを見ながら宝蔵院は観察しているようだ。
ヤーシャは無言で握手をしていた。
リリは宝蔵院の影に隠れて見つめているだけだった
「晴明、今日のお昼は絶対にタウロちゃん召喚してよ。昨日はがっかりな晩御飯だったから」
「もちろん、僕もそのつもりだよ」
同じく貧そな晩御飯の晴明はそのつもりでいた。
「なんだか晴明、さっぱりしてるんじゃない」
「お風呂に入ったんだ」
「ずるーい、私も入りたい」
「ヨシュア、盛大なお見送りの後戻るのもなんだけど彼女たちを大浴場に案内してやってくれない」
晴明はシャンプーとボディソープを晴海に渡してヨシュアに頼んだ。
よろこび洞窟に入っていった四人であった。
しばらくしてさっぱりとした様子で晴海たちは戻ってきたが
「混浴なんて聞いてなかったし、でも広かったから端と端でわかれて入ったけど。ヨシュアって何なのじろじろ見ているのよ」
「仕方ないよ。女の人を見るの女王以外初めてなんだもん」
「えっどういうこと」
「龍族は女王以外みんな男なんだよ。それにヨシュアは同い年なんだ。興味があって仕方ないよ」
「もう、仕方ないことないよ。ヨシュア、これから気を付けてね」
「それはすまなかった。しかし二人ともきれいな体だった」
「褒めてくれてありがとう、晴明ならみられてもいいけど」
「ちょっと晴海・・・」
「さあ、気が済んだか出発するぞ。ヨシュア国境まで案内頼むぞ」
晴人の号令が響いた。