◆龍族の宴会
女王になにやら報告をするヨシュア
「お前たちはエイセイとモモカを探しているらしいな。どうしてじゃ」
「僕のお友達のご両親なんです。その捜索が今回ドラゴニアにやってきた一番の理由です」
女王の許可が出たのかヨシュアは二人の話をしだした。
「彼らは私が狩りに出たときに出逢った人族だ。油断してギアーレに傷つけられた私を看病してくれた恩人だ」
「まだここにいるんですか」晴明は聞いたが
「いや、この街にしばらく留まっていたが、ある日、危険だと止めるのも聞かずそのままハルトの街へと旅立っていった」
「そんなに危険なんですか」
「峠を越えて一歩入ったとたん強力な魔物が襲い掛かってくるぞ」
「その魔物たちはどうしてこちら側にやってこないんですか」
「そ、それはアルテミス様のご加護のおかげであろう」
どうも実際に調べたことがないようだ。
「すまぬ、わしが禁じておるのじゃ」
女王は語り始めた。
「禁則地として様々な言い訳を子供たちを向かわせないようにしているのだが、おぬしらの来訪が契機かもしれん。禁を解こう。ヨシュア、このものたちと帯同しハルトへ向かうがよい」
「エヴァ様、そのような恐ろしいことを私に命じるのですか」
「恐れる必要はない。わしの寿命もあとわずかじゃ、おぬしが使命を果たすのじゃ」
「使命とは何ですか」
「行けばわかる。ヨシュアよ頼んだぞ」
と女王は言うと目を閉じて眠り始めた。
「ああ、そんな」
「ヨシュア、どうしたんだ女王は」
「眠りに就かれた。こうなると数年は目を覚まさない」
「どうするのだ、俺たちと西へ向かうのか」
「しばらく考えさせてくれ、しかしエヴァ様の命に背くこともできない。どうすればいい晴人」
「何か重要な使命なんだろ。男なら腹を決めな。というか女王以外女はいないのか」
晴人は周りにいる龍族を見て疑問を感じていた。
「そうだここにいるアルテミスの民たちは男だけだ。エヴァ様が眠りに就きながら大地の精気をため、我らを生んだのだ」
「ここにいるみんなが兄弟なの」
「そうだ。俺が一番若い」
「女王様がヨシュアさんを指名したのきっと何か意味があることだよ。一緒に旅をしよう」
晴明もヨシュアの帯同を望んでいた。龍族が集まり話を始めていた。
「ヨシュア、エヴァ様のご命令だ。旅に出るのだ」
年長そうな龍族の一人がそう言い放った。
「わかりました。どんなことがあるかわかりませんが龍族のものとしてエヴァ様の願いをかなえてみます」
「そうと決まれば旅立ちの宴席だ。そちらの方々もどうぞ出席くだされ」
「父さん、宴席だって、おなかも空いてるしいいんじゃない」
「晴明、覚悟をして参加するんだぞ」
「覚悟?変な父さん」
晴明はしばらく宴席の準備が済むのを待っていた。次々にテーブルが運ばれ女王の間は宴会場へと姿を変えていった。
「ヨシュアさん、なん人くらい集まるの」
「50名ほどだ。為政者が皆集まるだろう。特別豪勢な料理が並ぶだろう」
「楽しみだな」
晴人はにやにやと晴明を見つめていた。
運ばれてくる料理の数々、普段なら晴明の興味はその料理の味を予想して楽しんでいるはずだが
「父さん、どうしよう。すごい料理だよ」
すごいの意味がいつもと違っていた。
「晴明は食えそうなものだけ食べればいい。あとは俺に任せておけ」
地底生活のせいか火を通したものは少なく生のキノコや根菜、そしてたんぱく質は昆虫食であった。まっ茶色の料理がテーブルに並んだ。
晴明は芋を擦ったとろろのようなものや硬い牛蒡のような根を食べていた。顔面蒼白の状態だった。父はオーディンの馬なので腹を壊すことがない。失礼がないように勧められた虫を食べている。
「晴明、この新鮮なガーグは美味しいぞ」
ヨシュアがにょろにょろとうねっているミミズなようなものを勧めてきた。
「あ、ごめんなさいあんまりお腹が減ってないもので」
やんわりと断ったが、代わりに父が食べる。
「食べれんことないぞ、晴明、白魚の踊り食い食べただろ」
「父さんはいいよ。僕はお腹壊しちゃうよ」
人生で一番苦痛な食事時間を晴明は体験した。それを見かねた父は助け船を出した。
「ヨシュア、宴席中悪いが実は仲間がまだいるんだ」
「ここに招きたいのか」
「いや、連絡だけで結構だ。晴明を離籍させてもいいか」
「それは仕方ないな。こんなに美味しい料理を目の前にしてかわいそうだな」
晴人は眼鏡を晴明に渡して
「行って来い!命令だ」
ウインクをして晴明に命令した。
「はい、お父さんいってきます」
顔に赤みが戻った。
洞窟が出るとさっそく通信をオンラインした。
「天鼓君、聞こえる」
「晴明君、大丈夫だった」
「晴明、よかった連絡ができるのね」
「いろいろあったけど交渉は成功したよ。また明日詳しく説明するから安心してて」
通信を切るとアイテムボックスからビスケットを出して食べ始めた。




