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◎旅立ち

「よくこんな時にピクニック気分なんて、余裕があるわね」

「お腹が減ると集中力も落ちる実験結果もあります。いい考えですね」

「さあ、早く食べてみてよ」

 ミルクティーとサンドウィッチを勧める晴明だった。

「フワフワの卵にトマトの酸味が絶妙ね。いつもこんなおいしいもの食べてるのいいな」

「ヤーシャさんはどう」

「うまいな。父が作っているものと比べ物にならない」

「よかった、いつもクールで表情を読み取れないんでどうなんだろうと思って。あのちょっと聞いてみたいことがあるんだけどいいですか」

「なんだ。このネロのことか」

 ヘルハウンドの頭を撫でていた。


「ううん、天鼓君と特別仲良さそうに見えるんだけど、まるでお姉さん、いや、お母さんぽくみえるんっですけどどうやって知り合ったんですか」

「お母さんだなんて、晴明君、ヤーシャさんとの出逢いはサーカスの一観客からの始まりだったんだ。最初、水無瀬さんがサーカスで曲芸する異世界生物のギアーレを報告してきたんだ。その画像に映るヤーシャさんに目が釘付けになって、サーカスに通い詰めたんだ。そのうち何か僕にできることはないかと思い始めて」

「天鼓君、情熱的な一面もあるんだ。それよりギアーレって」

「団長とヤーシャさんは水無瀬さんのお父さんともし知り合いでミシエルさんのとこから連れてきてテイムしていただけだったんだ。それに、恋とか愛なんて僕なんかとは縁遠いものだよ。なんせこの容姿だもん」

「なにを言っているんだ。天よ、容姿なんて男には必要はない。おまえの真摯な気持ちがどれだけ心地よかった、工作員として数多の人たちを殺めてきた私に恐れもせず尽くす気持ちがどんなに私の慰めになっているか。ありがとう出逢ってくれて」

 宝蔵院は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「晴明、こんなことを言わせてしまうとは、不思議な男だな」

 晴明は天鼓とヤーシャの二人の関係を好ましく思えた。平安の時代に戦った二人に安らぎの時が来たことを感謝した。

「なんだか大昔から家族のような関係みたいな感じね」

 晴海も二人の縁の深さを感じ取ったようだった。


「一息ついたし、そろそろ先へ進もうか」

 晴明は広間を抜けて通路を進みだした。

「この部屋が水無瀬さんのお母さんが捕らえられていたとこみたいですね」

 宝蔵院は扉を開けた。

 かび臭い匂いに晴海は悲しくなった。

「こんなところに閉じ込められてたのね。ママ」

 つながれていたであろう鎖を蹴った。

「どうして晴海のお母さんは教団に捕まえられてたんだろう」

「異世界へのカギだと言ってたわ」

「不可解だな。だって教団はこの場所にゲートがあって、それを開くことのできる人物もいたのに」

「何か裏にたくらみがあったと思われますね。僕らにゲート探査機を使わせようとしたのも」

「とにかく残りの二人を捕まえて白状してもらいましょう」


「父さんに教団について少しレクチャーを受けたんだけど、彼らは異世界人を転生で召喚できてたんだ。つまりそういった手段に精通していた」

「自在に行き来ができていた。ということですか晴明君」

「ちょっと怖い想像だけど何もかも仕組まれていたことなら私自身の存在も」

 晴海の顔が青ざめた。

「そんなことないさ、何があっても僕が守るから安心してくれよ」

「晴明」

「僕もヤーシャさんもいるから、すべての謎を解こう」

 四人は祭壇のある無人の場所へたどり着いた。

「ゲート発見器が反応しています。その祭壇のところからです」

「心の準備はできた晴海、ゲートを開くよ」

「僕たちも行きます」

「天鼓君、そんな無理をしないでいいのよ」

「何でですか仲間じゃないですか、それに異世界だなんて実に興味深い」

「父さんたちとの約束もあるし、春休み中には必ず一度帰るから、それだけはみんな約束してね」


 晴明は剣を構え


あまとぶや

かりのゆくさきしめしけれ

かのちめざしてとぶらう


空間斬(すぱっつお)


 光り輝く剣を振り下ろす。そして横になぎ斬る。

 白く光るゲートを開いた。


「さあ、出発だ」

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