◎神殿での戦い
晴明はピックアップ場所で陰陽の仮面ケモ耳姿で待っていた。
「おい、あれがお弟子さんか。変な格好のやつだな」
助手席に座る貴具が軽足に言った。車が止まり、開かれた後部座席から御堂が乗車を促した。
後部座席に素早く乗り込んだ晴明、晴海は久遠の運転する車に舎利弗と乗っていた。
「今日はよろしく最強の陰陽師のお弟子さんとやら」
御堂がそう言ったが晴明は無言で肯くのみであった。ヤーシャにも軽く会釈をしただけであった。どうやらフーはお留守番のようだった。
「無口なやつだな。まだ若そうだがちゃんと働いてくれよ。おまえさんが頼みの作戦だからな」
御堂はそれとなく力量を探っているようだった。新しい仲間を警戒していた。
「無駄話はやめて、お前はお前の仕事のことを考えろ」
ヤーシャの一言に黙り込んだ御堂、前回の神殿探査でミスって異次元爆弾を起動させてしまった責任があった。
現場についた二台の車からメンバーが降りてきた。
「舎利弗さんよ。彼はなんと呼べばいいんだ」
貴具がアゴで晴明を指した。
「とりあえず、キツネと呼んでおこうか」
「キツネさん、よろしくね」
晴海はウインクをした。
「くれぐれも注意を怠らず、全員無事を願う」
舎利弗の一言で作戦が開始された。
「まずはキツネさんよ。結界を頼むぜ」
晴明は天叢雲剣を取り出し霞に構えた。
むくつけいしむつかるのろい
解呪
剣を一閃すると目の前に神殿が現れた。
「立派な神殿だな。こりゃたまげた」
軽足は目の前の光景に驚いていた。
「さあ私も行くわよ。塗壁君」
晴明のうしろに塗壁が現れ、晴海が壁ドンをした」
小さな声で
「キツネさん、見てて」
錫杖を抜き出して三回地面を叩き、遊環を揺り鳴らした。
フリルのあるゴスロリの法衣へ厚底の編み込みブーツ姿へとキラキラと晴海が輝きだす。錫杖は小さな黒い日傘へ、遊環ゆかんの四つが離れ手足に巻き付き、変化した。
「水無瀬晴海!教団め!覚悟!」
晴明は手を叩いていた。
神殿の中に突入した。続き晴明、宝蔵院、それを守るようにヤーシャが入っていった。
「久遠リーダーさん、本当に俺たちはここでいいのか」
「宝蔵院君の指示です。御堂さんと貴具さんは外で待機です」
「キツネさん、どっちに行けばいいのかしら」
「もう晴明でいいよ、変な名前つけられて何か考えて置けばよかったよ。入った時にこの建物の構造は解析したよ。僕についてきて」
「さっき剣をはじいたときですね」
「天鼓君どうしてそんなことでわかっちゃうわけ」
晴海はあきれていた。
「前にここの神殿の警備システムをハッキングしたときにある程度の構造はわかっていたんで晴明君に伝えておいたんです。それをソナーのような能力で調べたんでしょう」
「そうだよ天鼓君、通気口のような空間があるけどこのままこの通路を進もうこっちの方が早い」
通路の向こうに広間が見えた。
「敵がいるよ。注意して」
晴明が最初に入った。そこにはメダルで強化されたゴブリンたちが待ち構えていた。
「ネロ!ゴー!」
ヤーシャが鞭打つとヘルハウンドが影から飛び出してゴブリンを襲う。
「晴海、あれは」
「ヤーシャさんのペットよ、普段は影に潜んでいるの」
「ビーストテイマーか、それに体捌きもすごいね」
床運動のように飛び跳ねながらナイフでゴブリンたちの首を落としていった。
「私たちの出番なしね」
「上を見てよ。ガーゴイルが起動するよ」
剣を持ったガーゴイルが動き出そうとしていた。
「私の出番ね。ノウマク サンマンダ バザラ ダン センダ マカシャダ ソウワカ ウンタラタカマク」
不動明王の真言を唱えると左腕のバングルが弓へと変化した。立て続けに弓を放つ晴海
晴明も火球ボイデで撃墜していった。
「あとは晴明に任せた。弓矢がチャージ待ちなの」
「いいよ。じゃあまとめて、標的」
残り10体のガーゴイルたちの額に魔法陣が浮かぶ。
「水球弾」
小さな水滴が高速で眉間を連続で貫くケルベロスの頭を吹き飛ばしていた。
「すごい、どうやってやるの」
「標的を覚えれば、色んな術に応用が利くよ」
敵は殲滅され、あたりにはメダルが散乱していた。
「このまま置いていくにはもったいないな」
「天鼓君集めようか」
晴明は呪符を何枚も取り出して式神を召還した。
「モグちゃん、メダルの回収お願い」
モグラの式神が一斉に床に落ちたメダルを集めだした。
「晴明、これも教えてよ。とってもかわいい」
「君はあの外に入る陰陽師たちとは少し違うようだな。実戦慣れしている」
「そんな褒められてもヤーシャさん、まだまだですよ」
「晴明君、謙遜しなくていいよ。でもこんな沢山のメダルどうやって運ぼう」
「それは塗壁君に任せてね。塗壁くんお願い」
塗壁はメダルを収納していった。
「ちょっと休憩してから進みましょう」
晴明はアイテムボックスからサンドウィッチと水筒を取り出した。
「準備いいわね」
「美味しいよ。うちの元さん特製の卵サンド」
こんな時でも食べることを忘れていない晴明だった。




