◎平成版変身と涙の再会
「父さん、返してもらってきたよ」
アイテムボックスから父のからくりの体を取り出した。
「お~懐かしいな」
タマモは抱きついている。
「この感触と匂いよ。いい抱きごごち」
「おいおい母さん、勘弁してくれよ生身のほうがいいだろう」
「この硬さがいいのよ」
晴人はタマモからからくりを取り上げた。
「晴明、父さん面白いこと思いついたんだ。母さんこれを握って」
銀の妖怪メダルを渡した。
「これが何なの」
晴人は釈迦如来の真言を唱え始めた。
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク」
「メダルが熱くなったわ」
晴人の手にもメダルがあった。
「ほら見てごらん」
二人のメダルにそれぞれの顔が宿った。
「なにメダルが父さんと母さんの顔だよ」
「晴明、真言を唱えながらオーディンの馬の口に入れてみなさい」
父のメダルを手始めに入れてみた。
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク」
からくりの体が光り輝いたかと思うと父の姿になった。そのからくりが
「どうだい、面白いだろう。メダルで変身だ」
「凄いよメダルを使うなんて平成版の変身だよ」
親子は興奮気味にそのアイディアを喜んでいた。
「いいわね。平成版はいい男がそろっているから」
息子とリアルタイムで見ていた母も平成版はよく知っている。
「この変身態は本人同様の能力を持つんだ。そしてここからが凄いんだぞ。元に戻ったときの行動は精神世界のクラウドを通じてもとの体が体験したことになるんだぞ」
「どうやって元に戻すの」
「あれだよカプセル怪獣と一緒だ」
「そうか、戻れ父さん!」
口からメダルが飛び出して晴明の元に戻った。
「次はこの母さんのメダル」
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク」
からくりの体が再び光りタマモの姿をとった。
「キャー私が二人」
同時に叫んで晴人に抱きついていった。
「いいなこれ、体持つかな」
陽子とタマモの抱擁に、にやけ顔の晴人
「戻れ母さん!もうへんなことに使おうとしてたでしょ」
「いやいや、晴明考えすぎだ。でもどうだこれで異世界に行っても二人が付いていることになるぞ」
「僕も思いついた!メダルもう一枚あるでしょ貸して」
父からメダルを受け取ると厨房へ走っていった。
「おい、晴明どうしたんだ」
「これを」板場の元太郎の顔のメダルにポケットからタウロのリングを取り出して重ね合わせて
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク!やった成功だ」
父にメダルを見せる。
「これはタウロのメダルじゃないか」
晴明はメダルをからくりの口に入れ
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク」
今度はタウロの姿に変身した。タウロはボーとした様子で周りを見回した。
「タウロ、お帰り!」
晴明は抱きついた。
「なんなんなんんだす!もしかして坊ちゃんだすか」
「そうだよタウロ、かりそめの姿だけど蘇ったんだよ」
「タウちゃん、タマモだよ。それでこっちがドーマ」
「おお!法師様だすか。えらく貫禄が出ているだすな。奥様は相変わらずお綺麗だ」
タウロは死んだことを覚えていた。しかし昔のご主人様たちに会え感動していた。
「こんな無理なお願いは聞いてもらえないだすか、タエも蘇らせないだか、坊ちゃん」
晴明はちょっと戸惑ったが
「ちょっとタウロついてきて」
タウロの手を引き厨房へ案内して入り口の隙間から覗かせた。
「あれが生まれ変わったタウロでその横にいるのが奥さんでタエさん、もうすぐ子供が生まれるんだよ」
仲良くおしゃべりをしている二人を見てタウロがボロボロと泣きはじめた。声をだして泣きそうだったので慌てて元の部屋に連れ戻した。
「坊ちゃん、ありがとうごぜいます。タエとタエと・・・・夫婦になれて子供まで」
おんおんと泣き出したので
「戻れ!タウロ!」
ふと見ると母さんまでもらい泣きしていた。
「面白いことを思いついたな晴明、よっぽどタウロの飯が忘れられなかったんだな」
「それもあるけど、教えてあげたかったんだ。生まれ変わっても僕たちと一緒だったこと」
「あの指輪はどうしたんだ」
晴海の変身能力を説明した。
「そうかサテュロスの末裔だったのか。これも不思議な縁だな。しかもあのオオガミたちに育てられた子供もいるとは」
父もその縁の深さに感心していた。
「私と晴人もその子の小さいころを知ってるのよ。オオガミかどうしてるかしら」
「異世界に行けばきっと会える気がするよ。千年たっても、なんせ歳取らないもんね」
異世界の旅のもうひとつの目的ができた。
「一週間後にあの青龍の鎧が手に入るんだよ。父さん、母さん一緒に受け取りに行こうよ」
「そうだな。久しぶりに家族で外食がてら街へ行くか」
「楽しみね、フーちゃんのところも行こうね」
母が一番喜んでいた。