◎神殿突入作戦
父は昨日からむくれたままだった。
「父さん、ダイエット真剣に取り組まないとまた母さんに怒られちゃうよ」
晴人はお腹をつかみながら口答えした。
「無理だよ。見てみろ晴明、このお腹が簡単にどうにかなると思うか」
「だめよ!この血液検査の数値、お医者さんが糖尿病予備軍だって言ってたわよ」
「あそこの医者は誰にでもそう言っているんだよ」
なかなか首を縦に振らない父親に
「白鳥さん、父さんと同い年だっていうのにあの体型だよ。それに晴海も含め若い女の子からファンレターが一杯でモテモテだよ」
「そうね。道真、出逢った時からあんまり変わらないわね。春奈がうらやましいわ」
親友と比べられ競争心に火がついたようだ。
「よし!やってやろうじゃないか。夏までに20キロ痩せてナイスバディになって海へ行くか」
「やったー約束よ。針千本用意しておくわよ」
「えらく昔のこと持ち出すな母さん、約束するよ」
下手に自分のメダルを改造して痩せた姿にしたのが仇になった。
「父さん、天鼓君にもらったUSBでパソコンに通信アプリインストールしてよ」
「警察との会議用だな」
PCに向かう晴人
「よしできた」
アプリを起動すると宝蔵院が現れた。
「30分後に神殿への再突入の作戦会議です。よろしくお願いします」
「わかったよ、天鼓君、会議には父さんが導魔法師として参加するから、皆さんにうまくいっておいてね」
オーディンの馬で父のメダルを使って参加するつもりだった。
回線をいったん切って
「晴明、もう一度言っておくがくれぐれも無茶をするんじゃないぞ。その体はオオガミの加護を受けてないから怪我だけはするんじゃないぞ」
昔の体はオオガミの血によって再生能力が高かったのだ。
「晴ちゃん、一日一回は母さんのメダルを使うのよ」
毎日晴明の様子を見ておかないと気が済まないようだ。
「任せておいて、春休みが終わるまでには一度必ず戻るから」
「そうよ学業も重要なんだから、来年は高校受験よ」
そうなんだよな頭が痛いな。
「だいじょうぶだよ。先生も今のままの成績なら志望校へは行けるって言ってたよ」
「がんばれよ晴明、質素剛健、自重自治だ」
「父さんそろそろ時間だから」
晴明はオーディンの馬に父さんのメダルを投入した。
「ノウマク サンマンダ ボダナン バク!ダッシュワン、父さんの化身」
「晴明いいな。それ」
喜ぶ晴人であった。
「会議始まってるよ」
研究所には特務捜査課零係のメンバーが全員集っていた。
「宝蔵院君から教団の神殿に再捜査の提案があった」
「教団の目的の異世界転送のゲートはやはりあそこにあるという確かな情報を得ました」
「あそこは強力な結界があってなかなかたやすく潜入できるものではないぞ」
「御堂さん、その結界を敗れる人物が見つかったんです。導魔法師さんよろしく」
モニターにハルトの化身が映し出される。
「導魔法師って平安時代の陰陽師なんじゃないか。本物か」
「貴具さん、本物です」
「あっ!ドーマにゃ、久しぶりにゃ」
西の神獣、フーが叫んだ。
「うむ、フーが言うなら間違いなさそうだな。深くは聞いてはいけなさそうだな。それで導魔法師殿、我らに協力してくれるということでいいのですか」
「舎利弗本部長、わしの一番弟子を派遣しよう。必ずや結界を破り戦力としても役に立つであろう」
晴海は晴明との共同作戦に喜んでいた。
「法師様、これからもよろしくお願いします」
「晴海様、何かうれしそうですね。一番弟子さんともしかしてお知り合いですか」
「久太郎、いつになく鋭いわね。そうよ、あの指名手配犯を捕まえたのよ」
「そうなんですか。いつのまにお知り合いに、でも心強いですね」
「実は宝蔵院君から報告を受けていてわしは知っていたんだが、なにやら世間には秘密にしてくれということだな」
「ええ、それが協力の条件です」
「ということだ。妙な詮索はせんように頼むぞ」
「本部長それで決行はいつですか」
「明日、正午、法師様の八卦による吉日だ。移動は軽足さん頼んだぞ」
「残りの指名手配犯もいるといいですね」
「では、解散」
会議は終わった。
「父さん、かっこよかったね」
「母さん、こいつがだろ、わかりましたよ目指しますよ」
晴人は化身の自分の肩をもんだ。




