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◎形見の指輪

 晴海に軽足やヤーシャの話を聞きながらしばらく車が来るのを待っていた。

「お待たせ、晴海ちゃん、その子が噂の彼氏かい」

 もうどうでもいいや

「はい、八雲晴明といいます」

「軽足だよ。サーカス団の団長をしていたんだ。縁あって今は天ちゃんのところに居候しているんだ」

「もしかしてポートアイランドで公演してたあのサーカスですか。母さんと行こうと思ったら突然解散してしまって残念でした」

「それは悪いことをしたな。晴海ちゃんには義理あって協力することになったんだよ。まあ話は研究所でゆっくりしようや」


「わお、お城じゃないですか」

「天鼓君がヨーロッパから移築したのよ」

「すごいな、天鼓君」

 研究所に感心しながら中へと入っていった。

「晴明君、ようこそ、コーヒー飲んでいってよ」

「すごい設備だね。まさか晴海と妖怪を退治していたとは驚いたよ」

 ヤーシャとフーがやってきた。

「お客さんにゃ、晴海の彼氏なんだにゃ」

「フー・スー久しぶり」

「会ったことあったにゃ?」

「僕だよ。ハルアキ!」

 じっと見て匂いをかいでいたが

「ほんとにゃ!魂がハルアキにゃにゃにゃ」

「ケモ耳やめちゃったの」

「こっちのほうが生活しやすいにゃ。ドーマの計画成功してたんだにゃ、よかったにゃ。でもハルアキ、タマモっちは残念だったにゃ」

「それが驚かないでよ。石化が解けて僕のお母さんになったんだよ」

「にゃにゃにゃ!タマモ生きてるのかにゃ」

「今度一緒に遊びに来るね」

「たのしみにゃ、積もる話がいっぱいあるにゃ」

「君が天の大親友か、なかなかの手練れのようだな」

「娘のヤーシャだ。こいつが言うくらいなら晴明君はかなり凄腕だな」

「ヤーシャさんこそ凄いオーラを感じますよ。サーカスのポスターで見たけど実物はもっときれいですね」

 宝蔵院はコーヒーを運んできた。晴明は一口飲むと、

「凄く美味しいよ」

「豆から厳選して焙煎時間、水や温度まですべて実験して検証したからね」

「こだわりが半端ないね。確かに絶品だよ」

 宝蔵院は喜んでいた。晴明にほめられたことに

「晴明君、非常に興味深い話なんだけどフーさんと知り合いとはどういうことですか」

 晴明は晴海に語ったことを宝蔵院にも話した。

「うーん」

 宝蔵院は唸りこんで何か考え事をしだした。優秀な頭脳で事を整理しているようだ。

「つまり、多次元宇宙連鎖生命体ということですか。興味深い」

「僕ってそんな難しい言葉の人間なの」

「よくわからないけど、異世界へも簡単に行けちゃうって事なの天鼓君」

「どうでしょう。晴明君何か手段を持っているんじゃない」

「ゲートポイントさえ見つかれば、異次元転送の技は使えるけど」

「やはりこれが必要というわけですか」

 宝蔵院はタブレットを持ってきた。

「ああ!それ、父さんが使っていた空間のゆがみ発見器だ」

「やはりこれが必要なんですね」

「あとはどこにあるかだね。そうだもう一人紹介したい仲間がいるんだけど」

 錫杖(しゃくじょう)を取り出して遊環(ゆかん)から戦闘鬼を呼び出した。ツキノワを紹介するつもりだ。

「ちょっと待って、その指輪!」

 晴明は日輪と月光のはめた指輪に食いついた。

「何、晴明、この指輪がどうしたというの」

「僕の大切な人の形見なんだ」

 友情の指輪、平安時代晴明に美味しい料理を作ってくれた料理人のタウロの物だった。

「大切な人の指輪って女の人」

「違うよ。料理人のタウロだよ。いつも一緒にいてくれて僕の心の支えになってくれた人だよ」

 胃袋の支えだが、月光の手をつかんでいた。

 女の人でなく晴海はほっとして晴明に渡してあげようと思った。

「ちょっと今の持ち主に聞いてみる」

 晴海は二体に手のひらを向け

「オン ア・ラ・ハ・シャ ノウ!」

 パシリと手を閉じた。二体が重なったと思うと一本の角をはやした少年のような鬼が現れた。

「やあ、晴海どうしたの」

「ツキノワ君よ。私の晴明」

 ツキノワに晴明を紹介した。

「ハルアキ?オオガミが鍛えた子供?」

「どうしてオオガミさんを知ってるの」

「僕を育ててくれた第二のお父さんだよ」

 晴明はツキノワを見て

「そういえば、ツキノワ、いや槌熊(つちぐま)さんに似てるな」

「父さんのことまで知ってるところを見るとやっぱりあのハルアキなんだな」

「ツキノワ君まで知ってるとはやっぱりなんとかって言う難しい名前の存在なんだ。ねえ、月光がつけている指輪を晴明君にあげちゃダメかな。大切なものなんだって」

「いいけど僕と勝負して勝ったらいいよ」

「勝負だなんて」

「いいよ僕は、ツキノワ君」


 晴明もツキノワに興味があるようだった。トレーニングルームへ向かっていった。

「一本勝負だからね」

「望むところだ」

「ちょっと危ないからから、この竹刀でやってよね」

 晴海は二人に竹刀をよこした。

「わしが審判を勤めるとするか」

 軽足が審判となって「始め!」

 晴明は(かすみ)の構えを取った。中段から剣先を向かって左側に開いた。

 ツキノワも同じ構えを取った。

 じりじりと間合いをつめる両者、先に動いたのはツキノワだ。

 打ち込む竹刀をさばき再び霞の構えを取る晴明、そこから激しい打ち合いが始まった。

 しばらくの打ち合いのあと両者はいったん互いに後ろに戻る。

 晴明の額に汗が流れた。その一適が床に落ちた瞬間互いに突撃、一撃を放ちあった。


 ツキノワの竹刀が宙を待った。

「一本、勝者、晴明!」

「やったー晴明すごい!」

 晴海は手をたたいて喜んだ。

「もう一歩の踏み込みが浅かったか。さすが父さんたちが褒めるだけのことはあるね」

「さすがオオガミさんたちに鍛えられただけあるよ。ぎりぎりだったよ」

「約束だね」

 友情の指輪、タウロリングを受け取った。

「また一緒に稽古しようね。まだ体が技についてこないんだ」

「うん、今度は負けないよ」

 晴明とツキノワは握手をした。

「いいわね男同士はこんなことですぐに仲良しになれるんだから」

「お前たち真の力を隠して戦ったな」

「ヤーシャさんにはお見通しか、まいったな」

「本気で打ち合ったら竹刀が砕けちちやうよ」

 といってツキノワが竹刀を振ると燃え尽きてしまった。

「二人とも化け物みたいな強さだなあ。晴海、引け目を感じちゃうわ」

「晴海ちゃんはまだまだ伸び代があるからあせらずゆっくり進めばいいよ」

「ありがとう団長さん、晴明、そろそろ帰る」

「そうだね。父さんたちにも報告しないと」

「天鼓君、またね。団長さんお願いします」

 動き始めた同級生の運命であった。

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