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◎ひょんなことから妖怪退治

「母さん、前を見てちゃんと運転してよ」

「何言ってるのよ。今まで普通に乗ってたじゃない」

 自分の母親があのタマモであるとわかってから晴明は母との関係が微妙に変わってきていた。今までの母のイメージが大きく方向転換していた。

 母もまた、自分を抑制するものが取れ本来の気質が顕著に表れ始めていた。夫、晴人に対する接し方も度を越して激しくなっていた。晴人はそれも新しいプレイとして喜んでいるように見えたが息子としてはたまったものではない。他人がいるときは今までの陽子として振る舞っていることがせめてもの救いだった。

 春休みの息子を連れ出してショッピングモールへとお買い物に出かけていたのだった。

 今の旅館の家計を考えているのか昔、そう平安時代ほど無茶な買いもはしないがショッピング好きは相変わらずだった。楽しそうにしていた。

 晴明はショッピングカートを押して後ろについていっていた。

「八雲君、こんにちは、またお母さんと一緒なの」

「瀬戸さん、こんにちは、またはないだろ。仕方なくだよ」

 小学校からの同級生瀬戸静香にはよくマザコンねとからかわれていた。

「あら静香ちゃん、あっ静ちゃんのお母さん、こんにちは」

「晴ちゃんのお母さん、お久しぶり、いつも息子さんと仲良しね」

 母親同士世間話が始まった。こうなると長くなる。

「ねえねえ、晴海とはどうなの」

「別にどうでもないよ。ただの友達だよ」

「あら冷たいのね。晴海はぞっこんよ。デートに誘ってあげなさいよ」

「デートって、そんな関係じゃないよ」

 晴明は静香の援護射撃にたじたじであった。

「応援してるからね。ママ、早くいきましょうよ。バイバイ、八雲君」

 静香は母を急かして世間話を中断させて去っていった。

「晴ちゃん、晴海ちゃんとまだデートしてなかったの」

 こっちの話も聞いていたのかよ。

「もう、母さんまで焚きつけないでよ。まったく」

 あまり人から言われるとよけいに意識するようになるものである。


 突如、母親の眼つきが鋭くなって小さな声で

「晴ちゃん、妖怪メダルを持ったやつが近くにいるわ」

 鼻をひくつかせてそう言った。晴明も気配を探った。あのキャンプ場での事件後、晴明の能力は日増しに覚醒していたのだった。

「あのサングラスの男だ」

「母さんはお会計を済ませてすぐに追いかけるから晴ちゃんつけてて」

「ええっ」

「グズグズ言わない!そのままにしておくと大変よ」

 昔妖怪退治をしていた経験であろうかハッキリと言った。


 男はカートに食料を満載して駐車場に向かっていた。晴明は気配を消して追跡する。

「お待たせ、さあどう料理しようかしら」

 母は会計を済ませ晴明の匂いをたどってやってきた。

「だめだよ母さんこんな目立つところで騒動を起こせないよ。車のナンバー控えて警察に連絡しようよ」

「だめよ。警察の手に負える相手じゃないわ」

 しばし考える晴明「母さん口紅貸して」

「なによ」

 バッグから口紅を取り出してハルアキに渡す。

「何か書くものは・・・そのレシート」

 先ほどの買い物レシートを奪い取り、口紅で呪符を作り、男が荷物を積み終わりカートを置きに行った隙を狙ってその呪符を車のドアに挟み込んだ。

「もう、晴ちゃん家計簿つけるのにレシートいるのに」

「問題ないよ戻ってくるから」


 駐車場に停めた車の中で晴明とタマモは式神が戻るのを待っていた。

「父さんに相談しなくていいのかな」

「だめよ。反対するに決まっているから。それよりあの陰陽の仮面持っている」

 家にそのまま置いておくのも変だし晴明は自分のアイテムボックスに収納していた。

「これどうするの」

「変装するのよ。私は元の姿でいいけど、晴ちゃんはばれちゃ困るでしょ」

「僕もあのドロンってやつできるからそれで化けるよ。でもこの面はつけようかな」

「二人でキツネ姿いいわね」

「手ぶらじゃ心細いな。そうだ母さん、天叢雲(あめのむらくもの)(つるぎ)どうしたの?あの時持ったまま石化しちゃったよね」

「そう、陽子さん、あっ私を石化から解いてくれた陽子さんね。この剣のおかげで私は守られて復活できたそうで、神器だから朱雀様に奉納してくるって言って持って行っちゃった」

「朱雀様、もしかしてピコーナのことかな」

「さあ、わからないわ」

「期末試験の時、僕の近くにいたみたいなんだ。今もつながっているのかな」

 心の中で呼んでみた。

<父、やっと思い出してくれた>

「母さん、ピコーナいたよ」

 晴明はうれしそうな声でタマモに言った。

「ピコちゃん、長生き、さすが神獣ね」

「ピコーナ、剣って持っているの」

 学校で見た小さな鳳凰が車の所へ飛んできた。

「あら、ちっちゃくなっちゃって」

「父の母、これは分身だよ。大きくなりすぎて目立つのでこの姿でお供する」

「天叢雲剣はどこにあるの」

 ピコーナが口を開けると剣が吐き出された。

「これさえあれば、準備万端だ」

 アイテムボックスに収納すると満足そうな顔をした。

「ぴっぴっ」

 放った雀の式神が戻ってきた。

「あら、葵ちゃんが使ってた式神、チュン太だっけ」

「よく覚えてたね。ところで母さん、気づいてた?」

「なによ」

「茜ちゃんと葵ちゃん、生まれ変わってきてるよ」

「本当、どこに」

「板長の(げん)さんとタエさんの子供」

「そうだったんだ。生まれたらうんと可愛がってあげましょ」

 式神を元のレシートに戻して額に当てた。そして母に返した。

「わかったよ。すぐ近くだよ。ナビゲートするから車出して」

 二人を乗せた車は勢いよく発進していった。

「母さん、安全運転」


「ここで止めて、あとは歩いて向かうから」

 車を路上に停めて山の中に伸びる道へと歩みを進めた。

 男の乗っていた車だぼろぼろの小屋の前に止まっていた。

「母さん、三人いるそうだから手分けして捕まえよう」

 二人はドロンと変身した。晴明もケモ耳に狩衣姿となり、母もタマモへと戦闘態勢になった。

「母さん、いきなり飛び込んじゃだめだよ。僕が様子を見てからだよ」

 いつもの調子で飛び込まれてはいけないと思い釘を刺した。

「久しぶりね、腕が鳴るわ」

 ぐるぐると腕を振り回していた。

 晴明はゆっくりと歩いて行って扉をノックした。

 小屋の中に緊張が走った。ドアの隙間から外を除く目があった。

「なんだ、小僧、変な面をかぶりやがって、その耳はなんだ」

 男はそういいながら扉を開けた。

「おじさん、妖怪メダルを渡してくれる」

(さい)、どうしたんだ」

「中から女が二人出てきた」

「この小僧がメダルをよこせとかぬかしやがるんだ」

 三人の顔見て晴明は気が付いた。

「指名手配されてる人たちだね。おとなしく自首したほうがいいよ」

 崔は晴明を捕まえようと手を伸ばした。ひらりと後ろに飛び退く晴明

「まずいな始末するか」

「仕方ないね。坊や相手が悪かったね」

 崔はメダルを取り込むと一つ目入道へと変化した。棍棒を思い切り晴明に叩きつけた。

「荒っぽい人たちだな」

 叩きつけた棍棒の上に晴明が立っていた。

「妙な技を使う小僧だな」

 棍棒を振り回して晴明を襲うが空振りの連続だ。

 見かねた二人の女、百目(どうめ)羽田(はだ)も妖怪へと変化した。

 そこに割って入ってきたのはタマモであった。

「あなたたちは私、女同士語り合いましょう」

「なんだこのキツネ女は」

 タマモは念動力で百々目鬼(どどめき)毛羽毛現(けうけげん)を宙に舞いあげた。

 晴明は一つ目入道の懐に飛び込んで思いっきりジャンプしながらアッパーカットパンチを放った。仰向けに倒れる一つ目入道の上に乗り電撃の衝撃波を放った。

 一つ目入道は思わぬ攻撃にノックダウンした。

 タマモは何度も二体の妖怪をぶつけあって気絶させた。

「母さん、たいして強くなかったねこいつら」

「私たちが強いの」

「それでこの人たちをどうしたらいいの」

 タマモは落ちている木の葉を拾い上げ印を結んで三体に張り付けた。

「オンキリキリバザラウンバッタ」と唱えるとメダルが転げ落ち木の葉燃え尽きた。

「よかった覚えてたわ。これでお祓い完了よ」

「ふーん、そうやってお祓いするんだ」

 三人をロープで縛り上げて小屋の中に押し込んだ。

「このメダルはもらって行きましょ、戦利品よ」

 晴明とタマモは車まで戻って行った。

 家まで帰る途中の公衆電話で警察に通報した。

「どうする、母さん、父さんに話しする」

「二人だけの秘密にしておきましょう」

 にっこり笑うタマモであった。

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