〇水と火
「凍らせて渡ろうか」
ハルアキはそう言って門を隔てる水面に手を当て
しろたえのゆきをあるじす
あながちなり
せめてものこおりもてなす
氷結
瞬く間にスケートリンクのようになる池、ハルアキは滑って門まで向かい門の手前でジャンプして三回転した。
「門番がいなかったけど?まあいいか」
「なんか声がしたような気がするにゃ」
「わしも気配を感じておったが罠かもしれん気をつけて次の門に進もう」
次の門では門番が待ち受けていた。
「水鬼をも倒したか。なかなかやるなおぬしら。千方の四鬼の火鬼が相手だ」
「あのう水鬼さんというんですか。いなかったんですけど」
「なに、水鬼め、なにをしておるじゃ」
そしていきなり短剣を突き刺してからくり火鬼へと変化した。
口から火炎弾をハルアキたちに向け吐き出した。
加速状態のハルアキがことごとくはじき返した。しかし周りは火の海へとなった。
「きさまたちいきなり氷漬けにしおって」
後ろから声がしてからくりが現れた。
「名乗る間も与えずに無視しやがって」
今度は口からすごい勢いの水を吐き出した。
「馬鹿か、水鬼、火が消えてしまたではないか。おとなしく俺の戦いを見ていろ」
からくり火鬼が怒っている。
「わしの順番だ。おまえこそ大人しくしてろ」
つかみ合いのケンカを始めてしまった。
ジンとインが笛を吹き始め、ドーマが鼓を打った。
幽玄ただよう笛の音色と澄み切った鼓の音が響き渡る。
標的ターゲット
あしびきの
みねにつもりしそのここら
空間
連発
二人の鬼のリセット孔を目がけて収束した小さな範囲の空間断裂を打った。
からくりの装甲を貫き停止させた。
からくり化が解けてなおケンカを続ける水鬼と火鬼を倒したハルアキ
「からくり兵の装甲が破れることが証明できたね。しかし敵のやつらは仲が悪いね」
「それがやつらのの弱点じゃ。お互いを信じられなく疑心暗鬼に陥り結束力を失って力が出せぬのじゃ。からくりの弱点にしてもそうだ。奠胡が部下を信じられなくて抑制のためにリセット孔をつけたからだ」
「お互いを信じていればなくていいものをつけちゃうなんてかわいそうだね。千方の四鬼も最初に全員で襲ってこられたら、オオガミさんやタマモさんがいない状態だと危なかったよね」
「チームの結束力でわれらは戦っておる。安心してハルアキ挑むのじゃぞ」
「はい、ドーマさん」
最後の門を抜けると空が広がっていたが暗雲が立ち込めていた。そこに屋敷があった。
「ここがアジトだな。すごい邪気を感じるよ」
「ハルアキ、屋敷を吹き飛ぶすのじゃ」
「えっいきなりそんなのでいいの」
「かまわん、やりなさい、どうせ姑息な罠を仕掛けておるじゃろう」
「それじゃ出力を絞って範囲も屋敷を狙って」
ひさかたのあまにつどえし
かげほしくずの
とがかぎりあるみちふりそぶれ
流星
暗雲を突き抜け隕石が屋敷を襲った。
空は澄み渡り日の光が差し込んできた。
粉塵が止むと無残な姿の屋敷の残骸が見えた。
「誰一人いないようです」
茜と葵は偵察にすでに向かっていた。
「さすがこれだけのことやれば、倒しちゃったかな」
「あそこを見ろハルアキ」
封印の結界を施された真っ黒な暗闇がぽっかりと空いていた。
「この奥に逃げたのかな」
「な、なんだす」
空を見上げるタウロ、轟音とともに愛宕山の隕石が落ちるところを見ていた。
「坊ちゃまたちは大丈夫だか。っわわっわ、こっちに落ちてくるだ」
火を噴き回転しながら導魔坊に飛来する物体があった。
それは回転を緩めながら庭に静かに着陸した。
「なんだお前はサテュロスでねえだか」
フラフラになりながらこちらにやってくる。その後ろには亀から老人の姿へと戻ったヨダルが歩いてくる。
「ヨダルのじっちゃんまで」
「やはり決戦じゃな」
「んだ」
「タウちゃん!なにごとなの、あれ流星よね」
「奥様、なんだかわかんないだ。突然空から愛宕山に振り落ちただ」
さすがのタマモも異変に気が付き導魔坊へ戻ってきた。
「この門をくぐっていけばハルちゃんとこ行けるのタウちゃん」
「タマモよ。今はここで待つのじゃ。いずれ出番が来るぞ」
ヨダルはそ言って座り込んでしまった。
「タウロ、お茶じゃ」