〇導魔法師の休日
食堂でハルアキは黙ったままその光景を見つめていた。
ビールを呑み餃子を食べる自分の姿だ。タマモも同じくビールを呑んでいる。
そこにオオガミがやってきた。
「おい、ハルアキ」
ドーマがその声に反応した。
「何、オオガミさん」
ドーマが答える。
「だめじゃないか真昼間からビールなんて呑んじゃ!お酒は二十歳になってからといつも言ってたんじゃないか」
「まあ、硬いことを言うなオオガミ」
ハルアキが答える。
「ごめんね。オオガミ、入れ替わっちゃったの二人」
タマモが舌を出して笑いながら言った。
「なんだって!」
ことは少し前、三人で必殺技の名まえを考えている時にあまりにタマモのネーミングセンスのなさを二人で笑いやじったことにタマモがかんしゃくを起こして念動力で二人を吹き飛ばした。
その時ハルアキとドーマが頭を打ち合わせて倒れてしまい。起き上がると入れ替わっていたのである。
「そうなんだ困っちゃった」
ドーマのハルアキが答えた。
「まあ、しばらく間このままでもよかろう。あとで戻る方法は考える。せっかくだからしばらくぶりの食事と酒を楽しませてもらっている」
ハルアキのドーマがビールを呑み終えたゲップの後答えた。
「もう、早くなんとかしてよね。めちゃくちゃ動きにくいんだから」
操り人形のような動きでドーマのハルアキが地団駄を踏んでいる。
「はっはっは、これは面白い。ハルアキよたまには法師様のお休みだと思ってやってくれ、俺からも頼んだぞ」
「坊ちゃん、いや法師様、から揚げを揚げてきましただ」
「ありがとうタウロ、そこへ置いておいてくれ」
ハルアキのドーマはそういった。
「父の体早く戻すピコ」
ピコーナも怒っている。
ドーマのハルアキもただ、食べ終わるさまを眺めていた。
「さあ、次へいこうか梯子酒だ。タマモ行くぞ」
といい、二人で行ってしまった。
「オオガミさん」
「まっ、がまんしてくれ」
出向いた先はホヘトであった。
「タマモちゃんこんな子供に本当に呑ませてよろしどすか」
「ちょっと事情があって面倒かけないから出してあげて」
二人で呑み始めてしまった。
「タマモ、隣から白焼きを持ってきてくれ」
ホヘトの隣はイロハ、鰻屋であった。
「はいはい、わかりました」
タマモは出ていった。
そこへツキノワがやってきた。
「お、坊主いける口だな。どうした今日は」
と言ったがはっと飛び退いた。
「お前誰だ!」
「ツチグマか、俺の坊主が世話になっているな」
「なぜその名を・・おまえ、まさかドーマハルトか」
「わけあってな。休暇中だ。ツキノワは元気に学校へ通っているぞ安心しろ」
ツチグマの息子のツキノワのことである。
「そうか、世話になっているのか」
ツチグモの顔に笑顔が灯る。
そして二人は何事か喋るが小さな声なので聴きとれない。
タマモが白焼きを持って帰ってきた。
「あら、ツキノワのおじさん、話があるのよ」
「じゃあな。俺はここで失礼する。ごちそうになるよ。ハ・ル・ア・キ」
帰って行ってしまった。
「ドーマ」
「いいんだよ」
二人はユートガルトの思い出話を肴にしばらく話し込んでホヘトを後にした。
「ただいま、ハルちゃん」
ドーマのハルアキは飛び出してきた。
「早く、戻してよ」
「戻すピコ」
ピコーナは腕を組んでドーマのハルアキを睨んでいる。
「わかったわかった。そう睨むんじゃないよ。庭に出ろ」
ハルアキのドーマは魔法陣を描きそれを中心にドーマはハルアキを立たせた。
「タマモ、思いっきりさっきのようにやってくれ」
「えーけっこう痛かったよ」
「このやり方が簡単そうなんでな」
「いくわよ。せーの」
タマモの両腕がクロスする。
ガッチーン!
大きな音とともに二人は倒れた。
起き上がるハルアキ、両の手を見つめてそして頭を押さえた。
「戻った戻った。アー痛かったそれに酒臭い」
抗毒性の体のおかげでアルコールの害はないが匂いは別だ。
ドーマも起き上がる。
「ありがとう。ハルアキ、久しぶりに休暇を取らせてもらった」
「ドーマ楽しそうだったね。ハルちゃん私からもありがとうね」
おでこをぺろりとなめられた。
ツチグマと何を話したかは語らないドーマであった。