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〇変身ベルト

「ただいまドーマさん、ゲットできたよ見て」

 鎧を着たままのハルアキだった。

「遅かったな。しかし、よくやった。似合っているぞ」

「ちょっと福原に寄り道して帰ったんで遅くなっちゃった。それより変な番人がいること教えておいてよ。面倒くさかったんだから」

「簡単に手に入ってしまっては大事にしないだろう」

「そんなことしなくても大事にするよ。かっこいいもん。これで最期のピースがそろったね」

「なんのことじゃ。明日は最後の修業に行ってもらうぞ」

「修行に行くって?これが最後のピースじゃないの、なーんだ」

「あら、ハルちゃん、なんかゴージャスな姿じゃない」

 ハルアキの声を聴いてタマモがやってきた。

「いいだろ、えーとドーマさんこれなんて名前の鎧なの」

「好きに名付ければいいだろう。なんとかクロスとか」

 また、ドーマが変なことを知っている。

「龍王の鎧でもしておこうかな。龍の模様も入っているし、タマモさんこれお土産だよ。みんなで食べようね」

「豚まんね。フーちゃんもお気に入りよ。福原行ってたの?」

「もうちょっと先までだよ」

「あら新しい場所ね。一緒に行けばよかった」

 タマモが付いてきていたら大変だった。

「また今度ね」

「ぜったいよ。それじゃ明日修行に行く場所についていこうかな」

「遊びではないぞ。タマモ、だめだぞ」

 ドーマがタマモを注意しくれた。

「ちぇ、つまんない、食堂でお土産食ーべよ」


 食堂で鎧を脱いだ。着ているだけで結構魔法力を使うようでこれぞというときに装着することにしよう。真ん中に龍の顔のある鉢金をはずすと元の(かぶと)へと戻った。

「あら、便利ね。私にも貸して」

 タマモも被って見るが何も起こらたない。

「壊れてるんじゃない」

「正当な持ち主しか反応しないだよ。でもベルトみたいだったらよかったのに」

 甲を持ちいじくっていると、その言葉に呼応したのか、変形して龍の顔がバックルとなった。

「これってもしかして」

 龍のバックルをへそのあたりにあてると。ベルトが伸び腰に装着された。

 したり顔のハルアキ。何やらポーズをするとバックルに手を当て

「装着!」

 そう叫ぶと鎧化(アームド)した。

「キャーかっこいい!ハルちゃん」

 パチパチと手を叩くタマモ。

「霊験あらたかな武具なんだろ。オモチャにしちゃだめだよ」

 茜が豚まんをかじりながらハルアキに言う。

「もう少し変身ポーズは華麗にした方がいいのでは」

 葵は豚まんをちぎりながらアドバイスした。

「でものその龍の顔、サミエルちゃんに似てるにゃ、彼の加護が付いているんじゃにゃい」

 サミエルは敵の手に落ちた青龍の名だ。フースーがベルトを見つめていった。

「やったー敵の力で戦うなんてますます萌える設定じゃん」

「設定?何のことにゃ」

「坊ちゃんもみんなももうすぐ晩御飯だであんまり食べ過ぎないでくろ」

 タウロがのぞき込んでいた。

「おやつとご飯は別腹ピコ」

 見るとピコーナが一番食べていた。


 夕食はハルアキが買ってきた宋人街で仕入れた素材を使い中華料理になった。

 一番最初に冬瓜(とうがん)のスープが出された。冬の瓜と書くがれっきとした夏の料理だ。その日のハルアキのお気に入りはゆで豚の香味ソース掛けも捨てがたかったが、棒棒鶏のトッピング冷やし中華だった。

「そうそう、ヨダルのじっちゃんのところにも立ち寄ってサテュロスの様子を聞いたら、清盛さんの部下として佐助さんみたいに働いているそうだよ。名前も清盛さんから授かって盛俊(もりとし)って名乗っているみたい」

「そうか、幸せに暮らせているようじゃな」

 ドーマはハルアキが助けたサテュロスが立派に更生したことを喜んだ。

「ハルアキ、明日はタウロの道案内で鞍馬まで行け、それとピコーナはこちらにおいて行け、何かあった時にお前を呼びに行けるようにしておきたい」

「ピコーナ父と一緒にいたいピコピ~」

「ピコーナ、少しの間だからドーマさんの言うことを聞いてね」

「ピッコ」頷いた。


 翌朝、雲行きが怪しい空、タウロと鞍馬に向かうハルアキであった。

 天気を卦で調べると台風が二、三日後やってくるようだった。

「坊ちゃま、車は本当にいいのだすか」

「いいよ、こうしてタウロと料理の話をしながら歩くのも楽しいよ」

「あれはどうしましょうだ」

「仕方ないよ、言っても聞く人じゃないから」

「奥様、隠れてないでいいだすよ」

 タマモが舌を出して背後の木陰から現れた。

「だって何日も導魔坊を空けるんでしょ。さみしいじゃん」

「お願いだから大人しくしてよね」

「はーい」

 ちょっと不安なハルアキだがタマモと一緒にいると安心するのも事実だ。


「このあたりでお昼ごはんにするだか、坊ちゃん」

「タウちゃん、早くお腹ペコペコ」

「奥様、焦らなくてもたくさんあるだで落ち着くだ」

 重箱を次々取り出すタウロ、それをきれいに並べてお茶を出した。

「いつもながら美味しいねタウロのおにぎり」

「私は卵焼きが大好き」

 外での食事はまたこれで格別だ。

 ハルアキが気配を感じ、すっと左手を伸ばしておにぎりをつかんでいる何者かの手をつかんだ。

「誰だ、弁当泥棒!!」

 みすぼらしい老人がいた。

「すまんすまん、美味しそうだったので」

「おじいちゃん、言ってくれたらいくらでもおすそ分けしてあげたのに」

「こら爺、あんたちょっとヨダルに似てるわね。人のもの勝手に取ったらだめじゃない」

 タマモが怒っている。

「まあまあ、タマモさん、分けてあげようよ。大勢のほうが楽しいし」

「すまんの、ハルアキ君」

「えっ!おじいちゃん誰?」

 ドロンと煙が出ると老人は大天狗へと姿を変えた。

「あれま、大御堂のじいさんでないだか」

 タウロは知っていた。

「坊ちゃま、この大御堂のじいさんが今回の修行の師匠だで」

「えー!天狗の師匠って僕は牛若丸」

「オオミドウ?あんた親戚」

 タマモの驚いている。

「まあ、食事を終わらせてからゆっくり話をしよう」

 美味い美味いとパクパクと僕らの弁当を食べている。


「フ~腹が一杯じゃ、で何から話そうかの」


 大天狗との修行の始まりであった。

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