○金甲山 中編
ドーマたちは京を北東に鞍馬の山中にいた。
「タウロこの辺でよい」
ドーマは牛車から降りた。
深い深い森、生い茂った木々の中、太陽の光もまばらにしか届かない。
ぐるっとあたりを見渡したドーマ
「ここにいるな。オオガミ、やってくれ」
ドーマの命令にオオガミはすっくと立ち、うつむき加減に目を閉じた。
髪の毛は逆立ち始め筋肉が盛り上がっていく。
「ぅおおぉぉーん!!!」
突然吠えた。その昔、狼の遠吠えは邪を払ったという。
どっさっと木の上から落ちてきたものがあった。
タウロは金棒を構えた。
「よい、タウロしまえ」
ドーマが静かにタウロを諭した。
「ピコーナ、大丈夫かい。結構長く飛んでるけど」
「父、このくらい、こないだの海水浴より楽勝だピコ」
日本海の久美浜ではタウロも含め四人を乗せて飛行していた。京都から岡山までなら問題なかった。
金甲山は岡山県の児島半島にある。その昔、それほど高くはないが国生み神話の舞台となった山である。
その頂上付近にハルアキは着陸した。
「ピコーナ、何かわかる?」
「にゃー」
ミケーレが駆け出した。
「ミケちゃん」
手を伸ばし追いかけるハルアキ
そこにタウロの友達タエと同じくらいの女の子が立っていた。
「かわいい、猫ちゃんどうしたの」
ミケーレを抱きかかえた。
「ごめんね、捕まえてくれて、えーとお嬢ちゃんは一人?」
低いといっても標高400メートルはあるこんな山の頂上である。
「うん、毘沙門天をお参りに上ってきたのよ」
「お兄ちゃんたちも一緒に行っていいかな」
ハルアキは不振がっているが何か探しものヒントを感じた。
「こっちへおいで」
ミケーレを抱いて手招きをしている。
にわかに霧が立ち込めあたりを白く染めた。少女を追いかけるハルアキとピコーナの少女態。
洞窟に誘い込まれたハルアキ
「こんなところに洞窟?ちょっと待ってよ」
少女はどんどん奥へとハルアキをいざなう。
大きく広がった空間にハルアキは出た。少女がいない。
「おーい、どこ行っちゃたの?」
ミケーレがハルアキの足にじゃれ付いた。
「父、あそこピッピコ」
ピコーナが指差すとことの祠があった。ハルアキは近づき祠の扉を開けると金色の甲があった。
甲といっても鎧のことであるが神々しく光り輝いていた。
「ドーマさんの言っていたよろいはこれだったんだ」
ハルアキが手を伸ばし甲を取ろうとすると飛び去った。
「あー逃げちゃったよ」
金色の甲はさらに光り輝き人の姿へとなった。
「おぬしを試そう」
というと金色に輝く髪型の一部、鬢の部分がハルアキを襲い始めた。
「こんなこと聞いてないよ」
なぞの人物との戦いが始まった。