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○金甲山 前編

「迦樓夜叉、わしのマイコニドの魔石、どこへ行ったか知らぬか」

 奠胡はあちらこちらをごそごそと探しまわっていた。

「キノコだけにどこかでカビにまみれてるんじゃないかい」

 まったく相手にしてくれない迦樓夜叉であった。

 その魔石を持ち去ったのは槌熊であった。なぞの行動を続ける彼の目的は何であろう。


 勝手口からハルアキは

「タウロ、買ってきたよ」

 収納から山ほどの魚介類を取り出した。

「坊ちゃまの目利きもなかなかだすな。どれもええ素材だ」

「ドーマさんに報告へ行ってくるから。今日も美味しいものよろしく」

 何か歌声が聞こえる。食堂を見るとタマモが琵琶をギターの如く弾き歌っている。

 そのまま聞き入るハルアキであった。演奏が終わると拍手をして

「すごい、タマモさんなんて曲なの?なんか聞いた覚えがあるんだけど」

「父さんとご飯よ」

「もしかしてタマモさんのオリジナル」

「作詞も作曲も私なんだ」

「すっごくいいね。驚いたよ」

「ハルちゃんにも気に入ってもらえてうれしい」

「そーだ、ドーマさんにところへ行かなくちゃ」


 あわてて練金部屋のドーマの元へと向かい。

「わかったよ、奠胡は龍の玉という青龍のパワーアップアイテムを運んでたんだ。鬼若の正体もただのおとなしい青年だって」

「そうか厄介なものを手に入れられてしまったの、こちらもそろそろ打って出ないといかんの」

「とうとう決戦なんですか」

 武者震いをするハルアキ

「あとワンピースじゃ、手に入れておきたいものがある」

「それは」

 ごくりとつばを飲むハルアキ

金甲山(きんこうざん)へ行け」

「金甲山?」


「坊ちゃん、晩御飯だ」

 タウロが呼んでいる。晩御飯の時間となっていた。

 イサキをメインとした刺身の盛り合わせに、酢牡蠣が並んでいた。イサキはたたきにしたものもあった。

「ハルちゃんが買ってきたお魚美味しいね」

 タマモはよく冷えた日本酒を呑みながら刺身をつまんでいる。

 少し磯の香りを感じる白身のイサキは美味しく。たたきもいい感じだ。

 さらにタウロは蒸し焼きしたイサキに白髪ねぎを載せ、その上から熱したごま油を流しかけた。じゅっと音を立て香ばしい匂いが漂った。

「この生牡蠣も美味しいよ。軽く湯に通して酢だちとしょうゆがちょっとかかっているね」

「こんなもんも作っただ」

 たこ焼き器のような容器が目の前に置かれた。薄くスライスしたフランスパンが添えてある。

「夏牡蠣のブルゴーニュ風だ」

 タウロが説明した。エスカルゴの代わりに牡蠣を使っている。

「火の加減が絶妙、牡蠣のうまみが広がるよ」

 ご満悦なハルアキだ。

「そういえば茜、ドメルの山猫軒にも同じようなメニューがあったね。カタツムリだったけど」

「オオミドウのお気に入りの、懐かしいね」

 茜と葵は昔のことを思い出したようだ。

 思い出を呼び起こすのも料理のいいところだ。悲しい記憶も心を揺るがす。

「オオミドウさんってどんな人、向こうにいたときの仲間だったの」

 ハルアキの問いにオオガミが答えた。

「鞍馬一刀神流の使い手で仲間思いのいいやつだった」

 オオガミの表情と過去形で答えたことで、ハルアキも気がつきそれ以上の詮索はやめた。

「ハルちゃん、オオミドッチとキグちゃんが作った私のフィギュアがあるから後で見せてあげるね」

「ええ、タマモさんのフィギュア?どういうこと」

「私アイドルだったのよウフッ」

 部屋に飛んで帰りフィギュアを持って戻ってきた。

「ほら」

「うあーすごい、そっくりだ。エレキギター持っている」

 手に取りしげしげと見ている。裏返してみると隠れた部分のディテールがしっかり作ってあった。

「ハルちゃん!エッチ」

 すばやく取り戻された。勝手に風呂に入ってくるのによく言うよ。

「明日は遠出になるから、しっかり食べてね。ピコーナ」

「父、ハイ、タウロお替りピコ」

「いいこだで、お坊ちゃまと一緒にがんばるんだど」

 山盛りのご飯を返した。

 導魔坊の団欒は続いた。


 清八と喜六は夕餉の支度を終えると非番になる。厨房で作った残りものを持って酒場ホヘトへ寄ることが常であった。

「こんばんは、清やん、喜ぃ公、今日もうまそうなもの食ってるな」

「ツキノワのだんな久しぶりで」

「ほんと持込ばかりでこっちは商売上がったりどすわ」

 ホヘトの女将(おかみ)が言う。

「いろいろ献立教えてやってるじゃないか。それで儲けてるだろ。おあいこだ」

 喜六が女将に口答えしている。女将はツキノワにきのこの和え物の突き出しを出した。

「すまない、別のものを頼む」

「あら、きのこお嫌い?清八さんに教えてもらったゴマ風味の白和え、美味しいどすよ」

「きのこを見飽きているんだよ最近」

「そういえばツキノワのだんな、うちのオオガミ様が会いたがってるみたいで、お知り合いで」

「まあ、あんまり会いたくないだがな。うまく言って置いてくれ」

「そういうもんでげすか。まっ事情がおありで、これでげすか」

 喜六は小指を立てた。

「ま、そんなとこだ。ところで坊主は元気にしてるか。この間、海水浴を楽しんでたようだが」

「お会いになったんですか。わしらは盆休みでしたが。なにやら明日も遠出をするようで」

「どこにだ?」

「吉備の方だとか」

「そうかそれはそれは」

 こちらはこちらでそこそこの団欒が続いた。


 あくる日、タウロに作ってもらった弁当を持って

「いってきまーす」

 ミケーレもつれて金甲山へと向かっていった。

「さて、われらも出かけるか。タウロ頼んだぞ」

 ドーマはオオガミとともにいずこかへと出かけていってしまった。

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