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〇伊勢参宮神乃賑

 伊勢の国、人も寝静まる頃神社の境内の神木に向かって張り手を打つ若者がいた。

「村の夏祭の相撲大会で優勝すれば、おっかあに米俵を渡せる」

 やせこけた男は一心不乱で相撲の稽古をしていた。

「そんなに強くなりたいかひっひっひ」

「ば、化け物!!」

 奠胡(テンコ)の姿を見て男は腰を抜かしてしまった。


 お盆休みが明けて清八、喜六が導魔坊へ戻ってきた。

 ハルアキは厨房でタエと話をしていた。

「お休みいただきありがとうござんした」

「たっぷり楽しんできました」

 タウロにお札を渡した。

「どこさ行ってたんだ。このお札ははなんだべ」

「へえ、伊勢に行って神宮さんをお参りしてきた、お土産です」

「東の旅へ行ってまいりました」

 清八、喜六で東の旅だって、ハルアキはぷっと笑ってしまった。

「面白い旅だったんだろうね今度ゆっくり話を聞かせてよ」

「へえ、大阪から奈良へ入るあたりからゆっくりとお聞かせしますぜ」

 清八が笑いながら言った。

「もう、あんまりばらさないでくれよ清やん」

「喜ぃ公、おめえの失態くらい面白れえものはないからな」

 やっぱり期待大

「ところで二人とも朝から(やぐら)太鼓が鳴り響いているんだけど何か知らない」

「坊ちゃん、相撲の巡業がやってくるんで、伊勢の国でも見学したけどそりゃもう馬鹿強い力士がいるんですわ」

「身の丈三尺はあろう大男で鬼の形相をしていて、みてるだけでブルっちゃいました」

「へぇー面白そうだね。タウロとどっちが強いかな」

「坊ちゃま、見くびってもらっては困るだ。おらはミーノ以外に負けたことはないだすぞ」

「鬼若という力士で力試しをしてくれるそうです。勝てばなんと米一俵もらえるんですよ。師匠、試してみてはいかがです」

「やろうよタウロ、応援するよ」

「よし稽古するだで庭に出るぞ。清やん、喜ぃ公」

「あっしらでは相手になりませんよ。坊ちゃんとどうぞ」

「よーし、タウロ負けないよ」

 裏庭に出て、式神のモグちゃんに土俵を作ってもらった。

「タウロ、がんばれー」

 タエちゃんも応援している。清八が行司を務める。

「見合って、はっけよーい、のっこった」

 タウロの左足をつかんで頭と肩で押した。あっさりと後ろに倒した。

「おっ坊ちゃまー」

 清八が勝ち名乗りを上げる。

「油断してただ。もう一番」

 タウロも結構負けず嫌いだ。

「見合って、見合って、はっけよーい、のっこった」

 今度は四つに組んだがタウロが投げようとする方へくるくると回った。何度もそうしているうちにタウロが目をまわして倒れてしまった。

「タウロ、全然ハルアキに勝てないじゃん」

 タエにがっかりされてタウロが落ち込んだ。

「おう、騒がしいと思ったら面白いことをしてるじゃないか。俺も混ぜろよ」

 オオガミが上着をはだけた。

「よーし、オオガミには負けないだで」

 タウロの鼻息が上がる。

「両者見合って、はっけよーい、のっこった」

 力はどっこいどっこいだ。少しタウロが押している。

「タウロ、もうちょっと!!」

 タエの応援でタウロに力がみなぎる。

 押し出した瞬間オオガミがうっちゃった。同体だった。

「わしの勝ちだす」

「いや俺のうっちゃり勝ちだ」

「わしだ」

「おれだ」

「坊ちゃん、どっちだすか」

「うーん、同体取り直しかな」

 それから二人は何番も相撲を取り合ったが勝ったり負けたりほぼ互角だ。

「タウロ、もうお昼だよ。ごはんの用意してよ」

 二人ともへとへとだ。そこへタマモとフースーがやってきていた。

「あら私たちもやってみようか」

「負けないにゃ」

 なんと二人までが相撲を取り出した。

「両者見合って、はっけよーい、のっこった」

 組み合うタマモとフースー、着物もはだけて目も当てられない姿だ。

 喜八と清六は鼻の下を伸ばして目を血ばらせている。

 タマモの上手出し投げで勝負がついた。

「今、念動力使ったにゃ」

「さあね、知らない」

「ずるにゃ」

 二人が言い合っているとドーマがやってきた。

「こら、二人とも仲良くするんじゃ。ところで何の騒ぎだ」

 ハルアキが相撲大会の説明をした。

「わしも見に行ってみるか。何か起こりそうな予感がする」

 と相撲の時間が終わり、お昼ごはんとなったところに佐助が来た。

「こんなところに土俵が」

「いや、いろいろ事情があっての。ところで何か変わったことがあったのか」

 ドーマが佐助に聞いた。

「まさにその相撲の巡業に来た。鬼若のことです」


 どうやらドーマの予感があったっているようだ。

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