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〇巻き寿司

「イロハでございます。ご注文の品お届けに来ました」

 勝手口から声がする。オオガミが立ち上がり厨房へ向かった。

「あゝハチか、ご苦労さん」

「厨房の皆さんはお休みですか」

「そうなんだ来客があったものでな」

「空いた器は後で取りにまいりますのでこの辺においておいてください。それでは」

 ハチは店に戻っていた。

「崇徳院殿、このようなもはいかがでしょうか」

 ドーマは鰻重を進めた。

「旨いぞ。わしが出資して店を開いておる」

 清盛が得意げに崇徳に言った。

 崇徳は一口食べて

「美味しゅうござる。今度は店に忍んでいこう」

 満足そうにあっというまに平らげてしまった。

「なぜかここでおぬしらと語らい食事をしていると懐かしい気になるのじゃが、はて」

 不思議な感覚を覚える崇徳であった。

「崇徳殿、私が少し占って進ぜましょうか」

 ドーマの申し出に崇徳は喜んで

「かの功名な陰陽道の導魔法師に、願ってもないことです」

 ドーマは崇徳の情報を探りながら卦を行った。

「まもなく譲位されることになりましょうがそのお力は影響を与え続けるでしょう。何事も人を恨まず優しきお心でお過ごし成され」

 占いというよりも知っていた歴史を語った。

「法師様、ありがとうござる。心が晴れたような気がする。また、歌会を開きますおりはどうぞお越しください」

 そして崇徳は帰っていった。

「オオガミ、やはりあれはミシェルであった。輪廻転生しこの平安時代へといつの世のミシェルであるかわからんがその魂は彼のものだ」

「この度のマサカドとは関係がないということか」

「そうだな。とりあえずは安心だ。青龍に宿したマサカドを討てば何かわかるやもしれん」

 導魔坊にまた静寂が訪れた。


「ただいま」

 導魔防は賑やかな日常がやってきた。

「おかえり、ハルアキ楽しかったか」

 ドーマが変だ。ハルアキは戸惑ってしまった。

「ええ、とっても。ドーマさんどうしたんですか」

「どうもせんが」

「何かおかしいんだよな。調子くるちゃうよ」

「いいじゃない。ハルちゃん、何かいいことがあったのよ」

 タマモがそう言った。

「まっいいか。オオガミさんちょっと稽古してみてくれる」

「どういう風の吹き回しだ。いいぞ」

 オオガミと庭に出た。

 ツキノワとの稽古でつかんだものを試してみたかったからだ。

 剣を交えるハルアキとオオガミ、オオガミが戸惑っている。

「どうしたんだ、ハルアキ?」

 少し押されるオオガミ、見違えるほど剣の動きが滑らかだ。

 そしてハルアキの剣がオオガミの脇腹を貫いてしまった。

「ごめんなさい」

 てっきりよけられてしまうと思っていたハルアキはあわててしまった。

「だいじょうぶだ気にするな。すぐに治る。しかし一本取られたな」

 脇腹を押さえるオオガミ、みるみる傷が小さくなっていく。

「しかしまいったな。ユートでやられたことを思い出したぞ。海水浴に行っただけでこんな技を覚えてくるなんて」

「久美浜でツキノワのおじさんと稽古してたからじゃない」

 タマモが言うとオオガミが驚いた顔で

「ツキノワだって、どういうことだ。何者なんだ」

「よく知らないんだけど。瑠璃温泉で友達になったんだ。すごく強そうだったんで久美浜であったときに稽古をつけてもらったんだけど。オオガミさんのこともよく知ってたみたいだけど」

 難しい顔をするオオガミであった。

「ホヘトにもよく来てるみたいだから、オオガミも行ってみれば。でもまだ間人(たいざ)にいるかな」


「しかしそのツキノワという男、少し調べて見なければならんかもな」

 ドーマは槌熊(つちぐま)と何か関係があるのではと思っていた。ハルアキに稽古までつけてくれた槌熊の息子の名を騙る男に興味を示していた。

「ハルアキ、よくそこまで剣技を極めたな。褒めてやる。オオガミに礼を言って風呂に入り飯にしなさい」

 ドーマからお褒めの言葉をもらい気分をよくするハルアキ

「はい、オオガミさんありがとうございました」


 風呂に浸かるハルアキはにやにやとしていた。浴室の扉が開いた。

「もう、タマモさん!女湯に入ってよ」

 と振り返るハルアキが驚いた。オオガミと何と人化したドーマが入ってきた。

「男同士お風呂タイムだな」

 ドーマが言ったがお風呂タイムなんてよく言うな。

 ドーマやオオガミの背中を流していると父さんのことを思い出してしまった。

「父さんとね、お風呂入ると一日の楽しかったこと話すんだよ」

 といい、浜辺であった面白いことをしゃべった。

 ドーマの笑顔を見てなぜか涙が流れるハルアキだった。

「どうしたハルアキなんで泣いているんだ」

「なんか久しぶりに父さんに会えた気がしたんで、おかしいよね」

 ドーマはそんな不意打ちに泣きそうになったがこらえて、手で顔にお湯をかけた。

「もすぐ会えるさ。頑張るんだぞハルアキ」

 やっぱり変だドーマさんと思うハルアキだった。


「今夜は手巻き寿司で海の幸を食べてもらうだ」

 タウロは寿司桶をテーブルに置いた。

「ねえ、ドーマさん。茜と葵も呼んで、海水浴の話したいから」

「あゝいいぞ。大勢が楽しいからな手巻き寿司パーティーは」

 呪符を取りだして印を結んだ。

「何が始まるのお刺身の盛り合わせにご飯が置いてて」

 茜が尋ねると

「こうやって、自分で巻き寿司を作るんだよ」

 手際よくハルアキは寿司を巻いて茜に渡す。

「ねえハルちゃん、私にも巻いて頂戴」

「タマモさん、自分で巻くから楽しいんだよ。はい」

 海苔をタマモに渡した。葵もさっそく巻いている。

「はっははっタマモ、そんなにネタを乗せたら巻けないよ」

 茜に笑われていた。

「鼻がつんとするにゃ」

 涙を流すフースー

「ワサビ入れすぎ」

 海水浴に続いて楽しい晩御飯を楽しむハルアキだった。

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