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〇お盆休み

「行ってきまーす。お土産買って帰りまーす」

 ミケーレが三人乗りのシートに変形してピコーナの背中にハルアキ、タマモ、フースーが乗り、足にはタウロの角をつかんでなんとも奇怪なスタイルで四人は飛び去って行った。

「うほっうぼっ!行ってくるだで」

 タウロもはしゃいでいる。清八、喜六にも少し早いが盆休みを与えて導魔坊はドーマとオオガミのみとなった。


 ドーマは縁側に膝を立てくだけた座り方で

「オオガミ、何か言いたいことがあるんだろ」

「あゝ、ハルト、お前ちょっとハルアキに厳しすぎるんじゃないか。甘えさせろと入っていないがもう少し接し方ってものがあるだろ、見ていてはらはらする」

「そんなことを言うようになったのかオオガミも焼きが回ったな」

「冗談で言っているんじゃない。もっと普通に接したらどうだ」

「正直、贔屓目なしでハルアキはよくやっていると思うだが、まだ俺は目の前で死んでいった晴明の姿が消えないんだ」

 転生のきっかけとなった事故、車中での光景が忘れられない晴人であった。

「だいじょうぶさ、あの子は天才だ。もうすでにハルトを越えている。剣の技ももしかすると俺を上回る。心配するな」

「ありがとう、オオガミ、お前にそう言ってもらえると親としてうれしいよ。俺も前に進まないといけないな」

 少しうなだれるドーマに

「おゝ自慢の息子だな」

 オオガミはドーマの肩を抱いた。

 空を見上げるドーマ・ハルトであった。


 そこにこちらにやってくる清盛が見えた。ドーマは居住まいを正して迎え入れた。

 なんと崇徳院(すとくいん)を連れてきた。

「法師殿突然の来訪で済まぬ、ちょうど(みかど)がお忍びで参ったのでタウロ殿の食事をと思って参った次第だ」

「これは相すまぬ。タウロは休みを取らせてしまった。まゝせっかくじゃ、上がってたもれ」

 導魔坊へ案内した。

「静かでござるな」

「今日は二人だけございます」

 オオガミが答えた。

「ちと冷たいものでも用意するのでお待ちくだされ」

「法師様、私が」

「いや、厨房は私の方が明るいオオガミはしばらくお相手をしておくれ」

 ドーマは厨房へ向かった。

 厨房はきれいに整頓され何か作って持っていこうとしたがはばかられた。そこへタエが野菜を持ってきた。

「法師様おはようございます?あれタウロは」

「タエや、今日はお休みじゃそこに野菜は置いておいてよかろう」

「あっ、はい。法師様」

 丁寧にお辞儀をするタエ

「!ちょうどよかった。タエやちょっとお使いを頼まれてくれんか」

「はい法師様なんでしょう」

「イロハへいって鰻を四人前をお昼に届けてほしいのじゃ。タエのご両親の分も頼んで家で食べるがよいだろう」

「はい、わかりました」

 タエは元気よく返事をすると急いで駆けて行った。

 ドーマは冷蔵庫からよく冷えた麦茶をちらりと見たがビールとグラスを取り出し人化の法を施し客間へ戻った。



 久美浜は波静かな好天で絶好の海水浴日和であった。

 ハルアキは赤ふんどしでタマモとフースーは、はちきれんばかりのビキニ姿でピコーナは紺のワンピースで海ではしゃいでいた。タウロも赤ふんでバサバサとバタフライで激しく泳ぎ回っている。

 海から一人上がったハルアキはビーチパラソル下の(むしろ)に座りタウロの袋からよく冷えたレモネードを出してごくごくと飲み干した。

「ミケちゃんをイルカに変身させるなんて面白いこと考えるなタマモさんも」

「よっ!坊主、夏を楽しんでるな」

 声のする方向には大きな体のツキノワが(たたず)んでいた

「あっツキノワさんこんにちは、どうしてここへ?」

「ここは俺の第二の故郷だからな。夏はここと決めているんだよ。いいね美女の水着姿」

「いろいろもやもやとすることがあったからいい気分転換で楽しんでます」

「よーし、うさ晴らしでちょっと打ち込み稽古でもするか」

 浜辺の適当な木切れを拾いハルアキに渡した。

「本当ですか、面白そうですね。お願いします」

 かねがねツキノワの強さを見てみたいと思っていたのだった。


 二人は向き合い、まずハルアキが撃ち込んだ。くるっと軽くいなされおしりをたたかれた。

「よーし気合が入ってきたぞ」

 ハルアキの顔が真剣みを帯びて体から湯気が上がった。

 再び打ち込んでいくがうまく当たらない。オオガミの剣も自由で太刀筋が読みにくいが師匠の剣を業火とすればツキノワの剣は水、水流のように漂い時に跳ねが上がる。

「すごいすごい、楽しいです」

 ハルアキは夢中でツキノワに挑んでいく

「いいぞ坊主、もっと早くだ」

 ハルアキに一撃が胴を薙ぎ払ったかに見えた瞬間、ツキノワの木切れがハルアキの脇腹をかすめた。本気で突き入れられていたら脇腹をえぐられていた。

「参りました」

 へとへとになってもう限界だ。頭を下げて礼をした。

「面白坊主だな。いやハルアキ、たいしたもんだ。途中から俺の剣を真似してきたな。いい感性だ。師匠にないものがあるな」

「あれ、オオガミさん知ってるんですか?」

「まあな、俺が稽古つけたことは内緒にな。じゃあハルアキがんばれよ」

 ツキノワは去って行ってしまった。


「あれ、ツキノワのおじさん帰っちゃたの、タウロが海に潜ってお昼ごはん捕っているのに」

 タマモがタオルで頭を拭きながらタウロの袋をがさがさと物色してビールを取り出した。

「坊ちゃん、大漁だ」

 タウロとフースーが一杯の海の幸を取ってきた。

 浜辺でバーベキューが始まった。

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