89話 久方ぶり
「『フレンマ・バーリャ』」
メイが唱えた先で炎が燃え上がる。
スタスタとメイが中に入っていくのでそれに続いた。
中に入るとメイが目をつぶってぶつぶつと何か呟いている。
「……よし」
メイの目が開く。
「追加で強度も上げておいたからもう大丈夫よ。正直めんどくさいからあんまりしたくなかったんだけどね」
そう言うとメイは地面に座る。
「とりあえず明日からはどうするか」
俺は話題を振る。
「とりあえずまた街を探さないとかしら」
「私は柔らかいお布団で寝たい」
ハルはそう言いながらゴロンと寝転がる。
「そうだな、街を見つけたら宿で一泊するのもありだな」
「お金はどうするの?」
「あー、ハルさん」
「別に出してもいいけど足りるかどうかは知らない」
「金銭面は解決したわね」
「じゃああとは街を見つけるだけだな。メイ、任せた」
「それは任せてちょうだい」
ふと思ったが、俺は何もできないな。
「はぁ」
思わずため息が漏れる。
「どうしたの?」
「いや、気にすんな」
なんだかんだしゃべっているうちに、少し瞼が重くなってきた。
「俺はそろそろ寝ようかな」
俺は欠伸を噛み殺しながら言う。
「そうね、じゃあ暗くするわ」
そう言った瞬間、じわじわと暗くなってきた。
「ありがとう。じゃあ俺は先に寝るよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
俺は横になった途端、深い眠りへと落ちていった。
「……」
皆が寝静まる。
私は久方ぶりにこれを取り出した。
「こちらメイ、応答願う」
少し間が開いて、これから声が聞こえる。
『随分久しぶりだね』
「ちょっと忙しかったのよ。なに、寂しかったの?」
『寂しかったー』
感情の籠ってない返事が返ってくる。
『そんなことより、周りは大丈夫? 聞かれてたら面倒なことになるけど』
「それは大丈夫、ちゃんと結界を張って……あ」
そこで私は気づく。
『どうした?』
「『ミュー・バーリャ』」
私の周りを淡い光が覆う。
『頼むからしっかりしてくれよ。信頼を失うと面倒なことになる。君がしている行動はは今後の行動を決める重要なことなんだ』
「悪いわね、反省してる」
『まあグチグチ説教しても仕方ない。報告任せた』
「ええと、まず……」
それから私はこれまでに起きていたことを簡潔に伝えた。
『うん、概ね僕が知っていることと大差ないや』
「本当に報告っているの?」
『会話までは聞こえないからね。そこらへんはその場にいる人間の協力が必要なんだよ。わかってくれ』
「はいはい」
少ししゃべりすぎたかもしれない。
「じゃあそろそろ終わる」
『くれぐれも気を付けて』
「言われなくてもわかってる、じゃ」
そう言って私はこれを片付ける。
結界を貼り忘れるとは少し疲れているのかもしれない。
次は同じミスをしないようにと反省しながら、いつの間にか意識は遠のいていった。
可愛らしい寝息を立てるメイの横で私は起き上がる。
「……もうちょっと気を付けないと、ね? メイ」
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