86話 上空にて
風を切り、赤い線に沿って俺たちは進んでいく。
時間がないと言っていたので結構なスピードを出していた。
風のひんやりとした感触を肌で感じる。
傍から見たらどんな感じで飛んでいるように見えるのだろうか。
直立して、少し前に体重をかけるように前傾姿勢になっている三人組がスーッと宙に浮いて進む姿を想像する。
すごいシュールな図だな。
それを想像すると、見られたら少し恥ずかしいように感じてきた。
が、そもそもここはトロールが大量発生中の森の上。
この状況を他人に見られる可能性など皆無だろう。
……そう考えてもなんか恥ずかしいな。
もう忘れよう。
というか、下にいるトロールの数がやばい。
木の葉が風になびくたびに下の様子が見えるが、ほとんどがトロールの毛である。
異臭も俺達がいる空の方まで登ってきていた。
これは落ちたらいろんな意味で死にそうだな。
結構進んだな、核の場所までもうすぐか。
俺は二人がスピードを上げたのに合わせて、重心をさらに前にして加速した。
少し気分が悪い。
これは下から匂うトロールの悪臭か、それとも別の原因か。
進むにつれて頭痛が酷くなる。
ふと、目線の先に森の中に穴が開いたような場所が見えた。
そこだけ木を円形に切り取ったような不自然な場所。
「止まって」
メイが急ブレーキをする。
「どうした?」
「結界が張られているわ。解除するわね」
メイは手のひらを前に突き出し、ぶつぶつと何かを呟く。
杖は使わないんだな。
「核の周りには結界が発生するとかそういう特徴もあるのか?」
俺はハルに問いかける。
「いや、ないと思う。少なくとも私は聞いたことがない」
じゃあこれは何の結界なんだろうか。
「ああ、言ってなかった。さっき魔物の中身が人間だったって話をしたでしょ」
「ああ」
俺は先ほどの話を思い出す。
「これって、二つの可能性が存在するの。一つは人間が魔物になっている、もしくはさせられていること。まあ人間の身体自体が魔物に変化しているってことね」
ハルの補足説明を俺は黙って聞いていた。
「もう一つの可能性は、人間が生み出していること。つまり、このアウトブレイクが誰かの手によって起こされたという可能性。でも、どちらもあんまり現実的じゃない」
「というと?」
「前者だとしたら、そもそもアウトブレイクではなく他の災害になる。人を大量に魔物にする『何か』が発生したということになって、核なんて端から存在しない。でも、メイは核の場所を見つけたから前者の可能性はなくなった」
ハルは落ち着いた様子で話し続ける。
「残るのは後者だけど、アウトブレイクなんて人の手でそうそう起こせるものではない。強力な魔力の塊であって人が容易く干渉できるものではないから、と思ってたんだけど」
ハルはそこで言葉を止める。
あの森の中の不自然な場所を見つめている。
「あの場所に多分核がある。あと、何人か人もいる」
「このアウトブレイクはそいつらによって起こされたってことか」
「そうね、あんなに核の近くにいたら本来なら魔力にあてられて即死よ」
「解除したわ」
メイの声が聞こえた。
「これからどうする?」
「多分もうあの人たちにはバレてるからね」
メイも今の状況を把握しているようだ。
「もう時間もないし、とりあえずどでかいのをぶち込むわ」
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