85話 逸出
待っていたその声が聞こえて、俺は安堵する。
しかしまだ気は抜けない。
俺はメイの横に行き、事の詳細を聞いた。
「こっちの方向に約四百メートルほど。そこにおそらく『核』があるわ」
メイはそう言いながらその方向に杖を振る。
すると、空に赤い線が生まれた。
なるほど、これはわかりやすい。
「問題は、こいつらをどうやって搔い潜るかだな」
殺し合いをさせていることによりこちらには攻めてこないが、かといって俺たちの周りから退く気配もない。
「メイの魔術で空とか飛べない?」
俺はダメ元で聞いてみる。
「できるわよ」
「やっぱできない……あ、できるんだ」
「ちょっと面倒だけどね。まあ今回はそれの方がいいかも。時間も足りそうだし」
メイはそう言うと杖を高く掲げ、唱えた。
「『フラケリウス』」
杖の先端が輝きだした途端、メイの足元に魔法陣のような円状の模様が浮かび上がる。
メイは目を閉じ、杖を魔法陣の中心に突き刺した。
3人の体がじんわりと光り出す。
そして、体の中が暖かくなってきた。
なにか力が注がれているような。
その状態がしばらく続く。
思ったより長くかかっているため、殺し合いをしていたトロールの大半は死滅し、こちらに向かってきた。
応戦しようとしたが、ハルに止められる。
「行かない方がいい」
「なんで?」
「今この円から出たら飛べなくなって詰むよ。あと、あんまり動きすぎるとメイがやりにくくなる」
ハルはメイの様子を見る。
目をつぶり、杖に力を込めている。
物理的にも精神的にも。
メイの身体は俺たちの数倍強く光っている。
俺は結局、動かないことにした。
その間にもトロールがこちらに迫ってくる様子を見て落ち着いてはいられなかった。
やっぱり攻撃した方がいいんじゃないのか。
不安からハルの言葉を無視したくなる。
もう時間が無い。
自分には何も出来ないのに焦る。
トロールはもう既にすぐそこまで来ていた。
目の前のトロールが腕を振り上げる。
その瞬間、俺の周りを包んでいた光も魔法陣も消えた。
「飛んで!」
続いて、メイの声が聞こえた。
俺はその声に反応して、咄嗟に飛んだ。
いつもとは違う感覚。
体は垂直なのに下から支えられているような。
その時、真下で振り下ろされた腕が地面を叩く音が聞こえた。
あれをもろに食らったらさすがにやばかったな。
「イツキ、行くわよ。あんまり長くは飛べないの」
メイの声が聞こえた。
「わかった」
俺はその声に応える。
ハルとメイが体を前に倒し、重心を前にかけている。
すると、前に進み出した。
あー、セグウェイ的な。
そういえば一時期流行ってたな、一瞬で消えたけど。
俺も2人の真似をする。
体は前へと進んだ。
······ちょっと楽しい。
メイたちが赤い線に沿って進んでるのを見て、俺もその方向に進んで行った。
3人の人間を見失ったトロールたちは、再び行進を始めた。
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