84話 殺し合い
戦いにおける焦りほど、負ける要因になるものはない。
俺の少しの焦りが詰めの甘さを招き、それによってより状況は悪化する。
そこから更なる焦りが発生する。
完全に負のループであった。
しかも、これを脱却しようとすればするほど、また何かしらのミスをする。
ただ早く、メイがアックの場所さえ見つけ出してくれれば。
この状況を終えることができる。
先の見えないことがこんなに苦しいことだとは知らなかった。
ふと、あるトロールと目が合った。
それは一瞬の出来事であったが、俺の頭の中に何かが下りてきた。
俺はその目の合ったトロールに向かって直進し、
思いっきり目を潰した。
二本の指の先に嫌な感触。
目を潰されたトロールは手で目を抑え叫び続けている。
そして、周りのトロールを攻撃し始めた。
「……」
俺はその光景に呆気にとられていた。
トロールに攻撃された他の奴らは、目の潰れたトロールを集団で叩きのめすと、再び俺のほうを見て進んできた。
これは使えるのでは。
あいつらは視界でしか情報を得られていない。
「ハルっ、目を狙え!」
視界の端でハルが小さくうなずいたように見えた。
俺にはそれだけで十分だった。
俺は再び攻撃を始める。
彼らの目を狙って。
狂いだしたトロールはほかのトロールを狙う。
ハルも俺の言葉の通りにしているのだろう。
やがて、トロールはお互いに殺し合いを始めた。
もう俺たちのことなど眼中になかった。
いや、もう目は見えないのだが。
殺しあって数が減ったらまた目を攻撃し殺し合わせる。
それをただひたすらに繰り返す。
これによって、作業は圧倒的に楽になった。体力的にも、精神的にも。
醜く殺し合うトロールを横目にハルの方へと向かった。
ハルは俺に気が付くとこちらに体を向ける。
「これで、とりあえずは大丈夫そうだな」
「そうね、目を狙うなんてよく思いついたね」
「まあ、たまたまだよ。思いついたことをやってみるしかなかった」
そして俺はメイのほうを見る。
「まだ探すのにはかかりそうかな」
「このまま耐えきるのは簡単だし、あとちょっとの辛抱。頑張りましょ」
「そうだな」
こちらに抜けてきたトロールの目を切りながらハルは言った。
それにしても。
これだけ殺してもトロールの数が全然減ったように見えない。
もしこの方法を思いついていなかったら相当やばかったかもな。
そんなことを考えているうちに、俺たちの待ち望んでいた声が聞こえた。
「二人とも、核の場所が分かったわ」
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